【「自分がやれば売れるのに」から抜け出せない】
現役経営者のyamacと申します。
大手メーカーで法人営業を14年、独立後は幅広い業種の営業と経営を支援しています。
支援先で一番多い相談が、これです。
「自分が行けば決まるが、社員に任せると決まらない」
「教えているのに、同じようにできない」
「社員に任せるのは不安」
社長が営業のトッププレイヤーである会社ほど、この状態になります。
そして本人は「教え方が悪いのかもしれない」と考えます。
でも、原因は教え方ではありません。
教えられる形になっていないことが原因です。
私は前職で、複数の拠点をまたぐチームの取りまとめと、営業手法の標準化を担当していました。そのとき分かったのは、売れる人の頭の中には手順があるのに、本人がそれを手順だと認識していない、ということです。
【共通点1:判断の基準が言葉になっていない】
売れる人は商談中、無数の判断をしています。
この話はもう少し掘るべきか。今日は決めに行くべきか、次回に回すべきか。この担当者は社内で力があるか。この質問は本音か、断り文句か。
これらを瞬時に判断しています。
ただ本人にとっては当たり前すぎて、判断していること自体に気づいていません。だから「よく話を聞いて」「相手を見て」といった伝え方になります。
言われた側は困ります。
何をどう見ればいいのか分からないからです。
抜け出すには、自分の判断を分解して言葉にする必要があります。
たとえば「今日決めに行くかどうか」の判断なら、実際には次のような条件を見ているはずです。
・相手が予算の話を自分から出したか
・社内の他部署の名前が会話に出たか
・導入時期について具体的な期限が出たか
これを書き出すと、部下でも同じ判断ができるようになります。
感覚を手順に翻訳する作業です。
【共通点2:うまくいった商談しか共有されない】
社内での事例共有は、たいてい成功例です。受注できた案件の報告はしても、失注した案件を詳しく分解することは少ない。
ただ、学びが多いのは失注のほうです。
どこで負けたのか。相手が最後に何を言ったのか。振り返ると、多くの場合は最終盤ではなく、もっと前の段階に原因があります。最初の面談で聞くべきことを聞いていなかった、というのが典型です。
私は失注案件こそ、時間を取って一緒に振り返るようにしていました。責める場ではなく、どの工程が抜けたかを探す場として扱います。ここを責任追及の場にしてしまうと、次から失注が報告されなくなり、改善が止まります。
【共通点3:社長の商談に、誰も同席していない】
これがいちばん大きい共通点かもしれません。
社長が「自分が行けば決まる」と言うとき、その商談に部下が同席していないことがよくあります。忙しいから、あるいは一人のほうが話が早いから。
でも、それでは何も伝わりません。マニュアルを読んで営業ができるようになる人はいません。実際の場面を見て、あとで「なぜあそこでああ言ったのか」を聞くから身につきます。
同席してもらうときのコツがあります。商談後すぐ、10分でいいので振り返りの時間を取ることです。
「さっき相手が黙った場面があったけど、あれは何だと思う」
「なぜ値段の話をあの順番でしたか分かる」
こう聞くと、部下は自分の頭で考えます。
答えを先に言ってしまうと、覚えるだけで終わります。
【型ができると、社長の時間が空く】
判断基準を言葉にする。失注を分解する。同席させて振り返る。
この3つを回すと、少しずつ手順が共有されていきます。すぐには変わりません。私の経験では、変化が見えるまで数か月はかかります。
ただ、ここを飛ばしたまま人を増やしても、社長の負担は減りません。むしろ管理する対象が増えるぶん、忙しくなります。
営業を人に任せられるようになると、社長は本来やるべきことに時間を使えるようになります。新しい事業を考えるとか、大きな取引先と向き合うとか。
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まずは次の商談で、部下を一人同席させてみてください。そして終わったあと、10分だけ振り返る時間を取ってみてください。