薬剤師の業務では、いろんな種類の薬を扱います。その中には医療用医薬品でも特に取り扱いに注意が必要なものとして、「毒薬」「劇薬」などがあり、さらに「向精神薬」「麻薬」「覚醒剤」「覚醒剤原料」などがあります。最近は薬の解説をしている本が簡単に入手できますので、そういった薬が出ていることでびっくりする患者さんもよく見受けられます。薬の種類、取り扱いなどについて解説していきます。
「劇薬」
劇薬の定義としては、「劇性の強いもので、取り扱いに注意を要するもの」ということになりますが、これらの分類は時代とともに見直されることがあります。私が若かりし頃、非ステロイド性解熱鎮痛剤(通称:NSAIDs)は主に劇薬に区分されるものが多く、皆さんが聞き覚えのある「ロキソニン」も、かつては劇薬に区分され、通常の薬とは違う棚に配列する決まりがありました。同じ薬効成分でも、含有量が違うと異なることもあります。小児科でもよく処方されるアセトアミノフェン(商品名:カロナール)は錠剤は200mgと300mgでは通常の医薬品として、500mg錠や細粒などは劇薬として区分されています。名前を見ると怖そうですが、医療用医薬品の中ではそんなに怖がられるものではないです。白地に赤文字、赤枠で「劇薬」と表示されます。
「毒薬」
使用法を間違ってしまうと深刻な健康被害が発生しうる薬になります。素人判断での勝手な用量変更は命に関わります。薬の特性上、犯罪などへの使用が危険視されるため、黒地に白文字、黒枠で「毒薬」と表示された区画に鍵をかけての保存になります。現在、一般の薬局で消費者が任意に購入できるものに毒薬はありません。医療用医薬品のみになります。
「麻薬」
麻薬とは、鎮痛を目的として処方される薬物群のうち、常習性、中毒性のあるものを指します。これらは癌(がん)の鎮痛で用いられますが、これらも盗難事件が起こると犯罪への転用が社会問題となるため、鍵をかけて金庫などに保管してあります。毒薬よりもよりセキュリティの高い扱いで、麻薬取り扱い業者として認可を受けた薬局以外では取り扱っていません。
麻薬を服用している人は麻薬中毒にならないのか、というご質問をよくいただきますが、鎮痛を必要としている患者さんの体内での薬の効き方は異なってくるので(これは説明すると長くなるので割愛)、麻薬を連用したからといって、中毒に陥ることはまずありません。
「覚醒剤」
覚醒剤は麻酔薬の中毒で呼吸や心臓が停止する昏睡状態の回復、インスリンショック、ナルコレプシーなどに使用します。れっきとした医療用医薬品であり、正しい知識を持った資格者によって運用されます。こちらもセキュリティは高い医薬品で、一般の方が手にすることはまずありません。よくネット上で勘違いされているのが、「リタリン」は合法覚醒剤、というデマです。リタリンは覚醒剤ではなく、後述する第1種向精神薬になります。
第1種向精神薬
「塩酸メチルフェニデート」と呼称される薬物が日本では該当する薬です。ナルコレプシー治療薬の「リタリン」と、注意欠陥多動性障害の治療薬として使用される「コンサータ」があります。向精神薬の中では最も厳重に管理がなされる薬物です。
第2種向精神薬
「フルニトラゼパム」という睡眠薬として使用されているものが該当します。海外旅行に行くときは事前に調べておかないとトラブルになる薬物です。これを所有していると入国を拒否される、または没収されることがあります。アメリカなどでは所有・保持が禁止されている薬です。
第3種向精神薬
てんかんや睡眠導入剤など、一般の医療用医薬品よりもより管理を厳重に行う必要のある薬物群です。第2種と比較すると規制は緩やかですが、海外へ渡航する際は医師に「治療目的での所有、使用をする」旨の証明書が必要な場合があります。これらの薬を持って海外へ行く場合、必ず渡航先の日本大使館に確認をとって、あらかじめ必要な証明は取得しておく必要があります。
「覚醒剤原料」
覚醒剤そのものではないが、これを出発物質として化学的操作を施すことによって覚醒剤に変換することのできる薬物になります。日本ではパーキンソン病の治療薬の一部がこれに該当します。こちらも「覚醒剤原料取り扱い」の認可を受けている薬局でしか受け取ることはできません。
一般の方が感じるものとは、劇薬などはかなり印象が異なる、というのが薬剤師の感覚ですね。なお、「劇物」「毒物」は全く別の物質で、これらは「毒物および劇物取締法」で規制され、人体に治療目的で使用されることはまずありません。