未来予測

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ビジネス書を1冊ご紹介します。「ZERO to ONE」ピーター・ティール著(NHK出版)。著者は、現在シリコンバレーで非常に注目されている起業家・投資家です。エッセンスは「小さな市場の独占から始めよ」というメッセージ。今回話題にしたいのは、この本の中の未来予測に関すること。「未来に何が起こるかは、誰にもわからない」→「でも人生は宝クジじゃない」→「大胆な『計画』が必要だ」と、こんな文脈です。その中の事例で「エネルギー」に関することが印象的でした。以前研修担当をしていたころ、あるケーススタディをやりました。テーマは「太陽光発電」。そのころ「21世紀はクリーンテクノロジーの時代だ」という予測で、多くの企業が再生可能エネルギー(≒太陽光発電)に取り組んでいました。海外は忘れましたが、日本ではシャープ、京セラ、パナソニック、ENEOSなど。

授業では「太陽光発電事業は苦戦しているが、あなたならどういう戦略を立てるか」を議論しました。「撤退」という意見はなかったと記憶しています。しかし現在その多く(海外)が経営不振か、破綻しています。なぜか? 国家支援の不足か? 技術的問題か? 経営戦略の脆弱性か? 違います。答えは「固い岩を砕くことができたから」です。は?なんのこっちゃ。具体的には水圧破砕法でシェールガス(天然ガス)を安く大量に獲得できるようになったからです。しかもシェールガスはCO2排出量が少なくクリーン。以前からその存在はわかっていましたが、岩盤が固くて掘削できませんでした。それを水圧破砕法という技術でブレイクした。

環境業界(太陽光発電を中心とした再生エネルギー事業)は、化石燃料の枯渇を「未来予測」していました。再生可能エネルギーが未来への唯一の道だと思い込んでいた。しかし起こった事実は、シェールガス登場によるガス価格の暴落です。太陽光発電はとても成り立たないビジネスになってしまった。この時儲けた日本の企業は三菱商事、三井物産などの商社で、シャープや京セラではありません。環境業界は、「世界をクリーンにする」というスローガンをかかげていました。しかし大きな理想は、小さな現実までたどり着けなかった。

結果を分析すれば後で何でも言えるわけで、それほど未来予測は難しい。でもいきなり予測が覆るのではなく、少しずつその予兆は見えてきます。少しでもチャンスやリスクの感度を上げられるよう、「気づく力」を磨いていきたいですね。

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