9総合型・学校推薦型入試 評価される志望理由書のポイント②

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以下は、「受験受験ネット」というサイトに載っていた志望理由書の例文である。受験ネットは年間300万人が利用する大学・短大・専門学校の受験サイトである。それだけの評価を受けるだけのサイトの中に模範として示された記述である。満点の内容であるといっていい。


ご一読ください。さすがと思われるのではないでしょうか。


私が貴学を志望したのは、地域経済について学び、将来公務員として地域の課題解決に取り組みたいからです。
私は、静岡県の伊豆半島に生まれ育ちました。新型コロナウイルスの流行もあり、近年は特に観光客が減ってきました。また、地域の少子高齢化や過疎化も進んでいます。私は将来、地元の市町村で公務員を務め、多くの観光客が訪ね、若い人が出てゆかない伊豆を作りたいと考え、地域経済や、観光に強い学部に進むことを決意しました。貴学を選んだのは、他大より早い1年生の段階から、フィールドワークとして実際に関心のある町を調査することができるからです。私は、高校時代の「総合的な探究の時間」で、伊豆半島を訪れた外国人観光客が困っていることを、地元の人の協力を得て調べ、レポートにまとめ発表した経験があります。この取り組みを生かし、引き続き伊豆半島の観光や住むうえでの利便性について、調査を続けたいです。貴学には「地域経済論」「まちづくり論」「観光経済学」の講義があります。高校時代は、数値や統計を基にした調査や、観光学という専門的な知識を背景にした調査はできておらず、不十分な部分があったように思います。まず、基本的な知識や考え方を学び、統計に慣れることも、重要なのではないかと考えています。
以上が志望理由です。進学後は、地元の活性化や公務員という目標を実現するために、勉学に精一杯取り組みたいと考えています。
(字数のみカウントで614字)

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どうでしたか。記述内容のレベル。

◆リアルな背景状況の描写        ◆志望内容とその説得力ある理由とのつながり
◆自己の課題提示し学びの必要性アピール ◆高校→大学→社会人 自己の一
                                                              貫性提示

こういったことが、全体として大変上手くつながって記述されていますね。きっと、みなさんも、素晴らしいと思われたのではないでしょうか。
辻野もこの志望理由書は満点だと思う。


□辻野の記述指導
まず上手な志望理由書を読んでいただいた上で、私の記述指導について説明していく。先ほど私は、この志望理由書は満点だと言った。そう、知識もあり、かつ記述も論理的に構成されている。確かにいい志望理由書だと思う。

ただ、私は満点ではなく、満点の上にさらにもっと点数を上乗せしたい。そう思うのである。

どうやって?

この志望理由書の課題を敢えてあげてみると、それは読み手の感情を動かすという点が甘いということである。

人間が納得するという場合、論理で納得する部分と、感情で納得する部分がある。この志望理由書は、論理の部分では十分であるが、感情を動かすという点は弱い。

私はそう分析する。

だから、私の指導では、感情を動かすという点を重視して行っていく。これが、私の指導の大きな特徴である。

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以下、上の志望理由書をモチーフにして、伊藤風の志望理由書を書いてみた。お読みいただきたい。




衰退化していく〇〇市に、にぎやかな活気を取り戻したい。貴学を志望したのは、この願いを達成できる最適な環境だからだ。
私が育った〇〇は、観光業や林業が盛んで、中心部の商店街は人が溢れていた。近年は、高齢化や過疎化がすすみ、それにコロナウイルスが追い打ちをかけ、人は減った。シャッターが降りた店も増えた。祖母が営んだ洋服店も閉じた。悲しむ祖母の顔が私の心に焼き付いた。絶対に○○市を再び生き返らせる。そう誓った。
私は、高校時代、地元の協力を仰ぎ、○○市を訪れた外国人観光客の要望を調べ、レポート発表を行った。また、全国で地域活性化に成功している地域について研究した。実際に7つの自治体の方に電話やメールで取り組み概要や成功要因を伺った。さらに5つの自治体に足を運び、目で見、肌で感じた。役所の人の自信に満ちた表情が印象に残った。字数の関係で詳述できないが、とりわけ島根県海士町には本当に驚いた。多々参考にできる点があった。こんな活動してきた私なら、コミュニケーション能力や行動力がある人材を求めている貴学に十分ふさわしいと自負している。
〇〇市を再興する。その目標を達成するには良質の学びが必要だ。冒頭述べたように、その学び舎は貴学をおいて他はない。
貴学を選んだのは、私が欲している地域を活性化させる力を手にいれることができるからだ。まず何よりも地域創生に関しては第一人者の〇〇〇教授の存在だ。教授のゼミに入り、徹底的に地域創生についての力を蓄える。次に、「地域経済論」「まちづくり論」「観光経済学」など、地域に関する授業が豊富なのも魅力だ。加えて他大より早い1年生の段階から、関心のある街のフィールドワークができることも嬉しい。さらに、「環境経済学」などの数理モデルを使った理論分析やデータを使用し、大学の研究室で地域の魅力調査を行うことにも惹かれる。
これらの学びを掛け合わせ、〇〇市に進展に貢献できる有為な人材となることを固く決意している。私は、その目標実現のための第一歩を貴学で踏み出すことを切に希望する。



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□感情に訴える1

自分が面接官役をやっていて思うのだが、大学のカリキュラムの素晴らしさや環境の素晴らしさをいろいろ説明されても、私はまったく面白くない。その人間が、どんな人間なのかを知りたいのである。

きっと大学側も、「知ってるし―!」と思うのではと考えている。

だから、私は、受験生の想いを前面に出すべきと指導している。これは志望理由書や面接の指導においても同様である。

「衰退化していく〇〇市に、にぎやかな活気を取り戻したい。貴学を志望したのは、この願いを達成できる最適な環境だからだ。」

冒頭にこれをもっていくと、この受験生は真剣に街の活性化のことを考え、それを実現するための大学で学びたいという熱い想いを持った人間だということを端的に示すことができる。

この想い、こそが、面接官の心を揺らすのだと考える。


□感情に訴える2

 志望理由書はもちろん論理的である必要はある。しかし、人間の心が動く大きな要因は感情である。だから、感情に訴える表現を時折まぜるのが効果的だと考える。

「悲しむ祖母の顔が私の心に焼き付いた。」「そう誓った。」「自信に満ちた表情が印象に残った。」
「島根県海士町には本当に驚いた。」「関心のある街のフィールドワークができることも嬉しい。」

とこんな具合だ。

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□短文でリズム感をつくる

「・・・人は減った。シャッターが降りた店も増えた。祖母が営んだ洋服店も閉じた。悲しむ祖母の顔が私の心に焼き付いた。絶対に○○市を再び生き返らせる。そう誓った。」
短い文章だと、読み手はテンポよくよめる。そして、その場面へと臨場しやすい。リアリティーを感じさせることもできる。

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□仕掛を用意しておく
この志望理由書にどこに仕掛がおかれているか分かるだろうか?
そう、ここである。

「字数の関係で詳述できないが、とりわけ島根県海士町には本当に驚いた。多々参考にできる点があった。」
大学側の人間は思わず聞いてみたくなる。聞かれたら、待ってましたとばかりに、具体性に満ちた話を繰り出すのである。

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□圧倒的な行動力

説明するまでもないだろう。実際の行動を行った人間に、今はやっていませんが、将来はやるつもりですという人間は絶対に勝つことができない。抜群の説得力を発揮するのが行動だ。大学の側も、「すごい!」と高い評価をくだすことは間違いない。

「私は、高校時代、地元の協力を仰ぎ、○○市を訪れた外国人観光客の要望を調べ、レポート発表を行った。また、全国で地域活性化に成功している地域について研究した。実際に7つの自治体の方に電話やメールで取り組み概要や成功要因を伺った。さらに5つの自治体に足を運び、目で見、肌で感じた。役所の人の自信に満ちた表情が印象に残った。字数の関係で詳述できないが、とりわけ島根県海士町には本当に驚いた。参考にしたいと思った。」

そして、これは実際に行動していなくても書けるのである。
それじゃ、詐欺じゃないか。そんな、声が聞こえてくる。
でも詐欺ではない。

こう志望理由書を書いて、実際の面接があるまでの期間の間に実行すれば嘘にはならない。

「7つの自治体の方に電話やメール」どれだけ時間がかかる?大したことはないだろう。
「さらに5つの自治体に足を運び、目で見、肌で感じた。」3日あれば十分だろう。

受験勉強を、ずー-っと毎日5時間も、10時間もやることに比べれば微々たるものである。そして圧倒的な効果をもつだからやらない手はない。私はそう考えている。


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□辻野の方法

 前も書いたが、ただこういった志望理由書などの指導と面接の指導を変えてから、国公立推薦の合格率は、約3割から6割~7割に上がった。

そこからは、伊藤のこの方法は、大学側からも評価されているのではないかと考えている。


この度も最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

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