【多機関協働】地域共生社会の実現を支える理論【コミュニティソーシャルワーク】

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皆さんこんにちは!

今日は、昨今話題になっている地域共生社会の実現などから「福祉コミュニティづくり」などが注目されているので、ちょっと改めて自分でも勉強しようと思い、まとめてみました。

あんまり興味がないかもしれませんが、これからの福祉施策に大きく影響する概念ですし、現任レベルのソーシャルワーカー、ケアマネジャー、相談支援専門員など相談援助業務に携わる方には、【地域の生活者としての本人や家族の課題を地域の関係の中で解決する】視点が必要となってくると思います。

そこで、改めてこれまでの施策の動向なども踏まえて、地域と個別支援の関係について考えていきたいと思います!

地域共生社会の実現に関するこれまでの施策の流れ

地域共生社会関係の動向で、最初の契機となっているのが平成27年9月の「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討PT」報告の中の、「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」として世代に分野に関わらない相談支援体制等「地域共生社会の実現」という具体的なイメージが出てきました。

以下、流れを羅列するとこんな感じです

H28.4.1 施行 地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律 

平成27年9月 に「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討PT」報告 「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」

 多機関の協働による包括的支援体制構築事業(平成28年度予算) 

平成28年6月 平成28年6月 「ニッポン一億総活躍プラン」(閣議決定)に地域共生社会の実現が盛り込まれる 

7月 「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部の設置 



10月




 地域力強化検討会(地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会)の設置 



12月





地域力強化検討会 中間とりまとめ






 「我が事・丸ごと」の地域づくりの強化に向けたモデル事業(平成29年度予算) 



H29.7.1 施行




 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律 

地域包括ケアシステムの深化・推進

「地域共生社会」は、高齢期のケアを地域で包括的に確保・提供するという「地域包括ケアシステム」の考え方を、障がい者、子どもなどへの支援や、複合的な課題にも広げたもの



 「「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)」を「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部で決定 

H29年5月 社会福祉法改正案の可決・成立 

地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律を受けての改正





H29年6月 改正社会福祉法の公布 

9月 地域力強化検討会 最終とりまとめ 

12月 「社会福祉法に基づく市町村における包括的な支援体制の整備に関する指針」の策定・公表及び関連通知の発出 

成30年4月 改正社会福祉法施行 

30.4月 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律 地域包括ケアシステムの深化・推進
令和元年5月 地域共生社会推進検討会(地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会)設置 

7月 地域共生社会推進検討会 中間とりまとめ 

12月 地域共生社会推進検討会 最終とりまとめ 本人・世帯が有する複合的な課題(※)を包括的に受け止め、継続的な伴走支援を行いつつ、適切に支援していくため、 市町村による包括的な支援体制において以下の3つの支援を一体的に行う。 Ⅰ 断らない相談支援 Ⅱ 参加支援 Ⅲ 地域づくりに向けた支援 (※)一つの世帯において複数の課題が存在している状態(8050世帯や、介護と育児のダブルケアなど) 世帯全体が地域から孤立している状態(ごみ屋敷など) 等


和2年3月







 社会福祉法等改正法案(地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案)を提出 

社会福祉法に基づく新たな事業(重層的支援体制整備事業)

市町村において、地域住民の複合・複雑化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を整備するため、

①相談支援(属性を問わない相談支援、多機関協働による支援、アウトリーチ等を通じた継続的支援事業)

②参加支援、

③地域づくりに向けた支援

を一体的に実施する事業(重層的支援体制整備事業)を創


6月 改正社会福祉法の可決・成立 

令和3年4月 市町村における包括的な支援体制の構築に関する改正規定 


全部、解説していると明日の朝までかかるので、ここでは超高齢化社会では担い手不足や社会保障費の増大が懸念されていて、社会的に孤立する個人あるいは世帯が増大することから、複合多問題と呼ばれる複雑に世代間や分野間にまたがった問題が増えていて、それに対応する必要性があり、社会福祉法に基づく新たな事業(重層的支援体制整備事業)として、世代、分野などの垣根なく支援する「相談支援体制」を構築することや、地域と個人の接点を結び直す「参加支援」、地域の中で必要な生活支援サービスの創設など互助による解決や体操やサロンへの参加なども含めたフレイル予防等の自助に働きかけていく「地域づくり」による解決を目指している。と理解していただければと思います。

また、このような体制(重層的支援体制整備事業)は市町村、あるいは日常生活圏域で地域性や市町村の既存の体制を活用して実現をすることになっています。

多機関多分野間での連携が求められている

このような、方向性の中でまず、間違いなく高齢障害児童等分野間での連携が課題となってくると思います。ただし、これは重層的支援体制整備事業の①相談支援(属性を問わない相談支援、多機関協働による支援、アウトリーチ等を通じた継続的支援事業)として、ハード面は各市町村などで整備されていくことになるので、ご自身の市町村の動きを注視していただければと思います。

※重層的支援体制整備事業は手上げ方式なので、実施されていない市町村のまだまだ多いと思います。

このような方向性の中で、一人一人の支援者にどう影響があるのか?

相談援助に関わる専門職であれば、これまでも多分野との連携などは取られてきたものであると思います。しかし、今後はより多くの機関や専門職との連携や今まで連携したことのない職種や福祉関係以外の専門職との連携も出てくることでしょう!

そこで、一つのアプローチ方法として多機関との連携での問題整理や支援体制の構築に役立つものとして、バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチをご紹介したいと思います。

バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチとは?

バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチとは、精神科医であるエンゲルが提唱し「生物・心理・社会モデル」とも呼ばれています。人間は生物的側面・心理的側面・社会的側面が相互に影響して成り立っているという考えに基づき、疾病や不適応などの問題においても、これら3つの側面の相互作用として現れていると捉えます。

そのため、クライエントの問題に対してひとつの側面だけでなく、生物的・心理的・社会的観点から多面的にアセスメントや介入を行おうとするモデルです。

生物的側面では細胞や遺伝、神経、細菌などが問題の要因となり医師や看護師、薬剤師などが、手術や薬物治療、リハビリなどのアプローチを行います。

心理的側面では認知や信念、感情、ストレスなどが問題の要因となり、臨床心理士や公認心理師などによって、心理療法や心理教育などのアプローチを行います。

社会的側面では社会的ネットワーク(家族、地域)や経済状況、人種や文化などが要因となり、社会福祉士や児童福祉司などが、家族のサポートや福祉サービスの提供など社会福祉的なアプローチを行います。

このように、バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチでは、生物・心理・社会のフレームで問題を整理していき、様々な要因が絡み合って生じる問題に対し、各側面の専門家が協力しながら問題を解決していこうとする多職種連携のモデルとされており、近年でも重要視されています。

複数の専門家がそれぞれの専門性を活かし、協働しながら問題解決にあたることで、相乗効果が生まれ、クライエントにより利益をもたらすことが期待される。バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチにおいて、有効と考えられる支援対象者は複雑に絡み合った問題を抱える個人あるいは世帯であり、高齢障害児童医療困窮など福祉分野が横断的に連携をとって支援体制を組む必要がある場合に有効であると考えられます。

個別支援における問題から「福祉コミュニティづくり」へ連動することが求められている

地域共生社会では、どのような方でも包摂する社会を目指します。つまり、個人が社会が合わせるのではなく、社会が個人に合わせて変容するということを意味します。

これを個別支援の観点から見ていくと、まずは「個を支えることができる地域づくり」として、何らかの生きづらさを抱える個人に対して、近隣のソーシャルサポートネットワークとして見守り、生活支援、居場所づくりなどについて、地域の中で、その地域に住む人と一緒に考えていくことになります。

これは、専門的な支援を地域で行うのではなく、先に書いた「多機関多分野間での連携」が、しっかり専門職が行いながらも、困りごとのある個人がどう地域と絆を結びつつ生活するかという、地域におけるソーシャルサポートと専門的支援の融合が必要であるということになります。

このような方向性の中で一人一人の支援者には何が求められているのか?

このような方向性の中で、一人一人の支援者にどう影響があるのか?

このような地域との連携をもとにしたケースワークは、おそらくこれまでも民生委員さんや地域ボランティアさんなどと、行ってこられた方も大勢いらっしゃると思います。

また、実践の中で地域住民さんと一緒にケースを解決し、成功体験を重ねていくことで、地域が一人の人のために代わっていき、またその地域の変容が更に多くの生きづらさを持つ人の発見やつながりになっていく様子を経験された方もいらっしゃると思います。

つまり、一人の人を支援するときに地域におけるソーシャルサポートとなる方を発見し、連携し、一緒に解決していくということが、ミクロの支援おける重要な視点となっていくのではないかと思います。

このような、考え方というか理念を「コミュニティソーシャルワーク」と言います。

コミュニティソーシャルワークとは

社会福祉学者、日本社会事業大学名誉教授の大橋兼策さんによると、

コミュニティソーシャルワークは地域に顕在的、あるいは潜在的に存在する生活ニーズを把握し、個人、環境のアセスメントからフォーマルインフォーマルに囚われない個別援助の展開を行う過程において、その支援方策遂行に必要なインフォーマルケア、ソーシャルサポートネットワークの開発とコーディネートであると述べている。また、個別援助の蓄積による地域課題把握から福祉コミュニティ作り、生活環境の改善等を個別援助と同時並行的に推進していく活動及び機能である

(大橋謙作2005)「コミュニティソーシャルワークの機能と必要性」より

と定義している。

つまり、地域において個別支援と地域組織化を統合化させる実践だと捉えることができます。

地域での生活において、何らか支援を必要としている人に対し、相談援助による具体的援助を提供する中で、その人が地域の中で培ってきた繋がりを把握したうえで、必要なソーシャルサポート・ネットワークづくりを行い、かつその人が抱える生活問題が同じように起きないよう、地域住民等へアプローチすることで変容を促し福祉コミュニティづくりへとつなげていく感じです。

もう一つ、社会福祉学者、大阪市立大学生活科学部人間福祉学科教授である岩間伸之さんの、コミュニティソーシャルワークの定義では、

ジェネラリストソーシャルワーク※を基礎理論とし、地域で展開する総合相談を実践概念とする、個を地域で支える援助と個を支える地域をつくる援助を一体的に推進することを基調とした実践理論の体系であ

「市民後見人とは何か 権利擁護の地域福祉の新たな担い手」(岩間伸之2011)より

ジェネラリストソーシャルワークとは滅茶苦茶はしょって説明するとケースワーク、グループワーク、コミュニティワークを統合した援助技術です!

すごく大雑把にまとめると、岩間さんも大橋さんもコミュニティソーシャルワークとは、専門的な個別支援と本人を支えるソーシャルサポート作りを地域の中で行うことで、地域が困りごとを抱えた本人を支えることのできる機能を持つ、つまり福祉コミュニティへと変容していくことになる。そして、結果的にこのプロセスを繰り返すことで、様々な困りごとを抱えた人を包摂できる地域へと成長する。と言った感じなのかと勝手に解釈しています。

最後に

いかがだったでしょうか?

今回は、地域共生社会の実現について私なりの考えてみたことを書いてみたので、本当に分かりにくかったと思います。それでも、ここまで読んでくださったあなたの忍耐強さには、感謝と称賛を謹んでお送りしたいと思います。

今回は、あまり役に立つ記事ではありませんでしたが、何かご意見ご感想等いただけるとスゴイうれしいです。
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