良三はホームレスになりたくなかった。
ホームレスは過酷だ。
季節の厳しさに加え、食料問題と安全性の確保だ。
寝ている時に不良などに石を投げつけられる総攻撃を受けて死に至る事件も多発している。
そして場所にはホームレスの親分のようなヤツが居て威張っている。
挨拶無しにその場所にテントを張れば攻撃される。
同じホームレスなのだから助け合って仲良くすれば良いものを何処に行っても、どの世界も親分が居て従わない者は攻撃される。
江戸時代の牢屋でも牢名主が居て畳を全部積み重ね10枚の畳の上に自分一人で座って威張っている。
他の連中は冷たい土間で寝る。
しかし、腕っぷしが強い新人の罪人が牢に入って来た時はケンカでやられ牢名主は入れ替わる。
人間は、何処に行ってもどんな時でも強く無ければ辛い目を見る。
良三は自力で収入を得る方法をずっと考えていたが良いアイディアが浮かばなかった。
何か良い情報は無いかとネット上を見ていたが、投資で稼ぐとかセドリ物品販売で稼ぐなどと色々とネット上には、お金を稼ぐ情報が溢れている。
確かに収益は多少得る事が出来るかもしれないが、良三はそんな僅少な稼ぎには興味が無かった。
もっと直截的に良い金額を得る方法が欲しかった。
胡散臭い内容でも良いと思って居た。
大体世の中の金持ちは、裏で胡散臭い事をしている。
金持ちに成り上がって来た輩は叩けばホコリが出るのだ。
だからこそ金持ちになっているのだ。
良三はネット通販を見ていた。
何かお金を稼ぐ事に有効な物は無いかとアイテムは無いかと。
膨大の数の通販の一つに目が留まった。
金属探知機だ。値段は45,000円だ。
良三の心の奥から直感として、これを買えと言う声が聞こえて来た。
しかし、45,000円は今の良三にとっては高額の出費だ。
人間は誰でも素晴らしい直観力を持っているが、直感に従わないから何時も裏目に事が出るのだ。
直感の後には必ず自我の呟きが始まる。
これは高いから、手が出ないから、金がもったいないから等の声は自我の声だ。
これに従うからいつも事は裏目逆目にでるのだ。
良三は躊躇したが注文のクリックをした。
45,000円と言う金額は最後の良三の虎の子だった。これが消えたら本物のホームレスになってしまうと言う危険を知りながらも注文してしまった。
良三の頭にはこの金属探知機を使ってシーズンが終わった海水浴場の砂浜でトレジャーハンターをしようと考えが起きた時に金属探知機の到着が待ち遠しかった。