子どものスマホ、制限していいのか|世界は規制へ動き、日本だけが「家庭任せ」です
「うちだけ厳しいんじゃないか」
スマホの時間を制限しようとすると、必ずこう言われます。「みんな持ってる」「友達と話せない」「なんでうちだけ」。
そして親のほうも、だんだん自信がなくなってきます。自分が古いのだろうか。子どもの自由を奪っているのだろうか。
先に結論を書きます。
制限してください。
この記事は、前半が「事実」、後半が「私の意見」です。分けて書きます。
【事実】いま、何が起きているか
① 子どもの利用時間は、過去最長
こども家庭庁の「青少年のインターネット利用環境実態調査」(2025年11〜12月実施)より。
1日あたりの平均利用時間小学生(10歳以上)約3時間54分中学生約5時間24分高校生約6時間44分青少年全体約5時間27分
前年度から約25分増加し、いずれも過去最長です。
高校生の6時間44分について、少し考えてみてください。
睡眠を7時間、学校を7時間とすると、残りは10時間ほど。そのうち6時間44分がスマホです。食事も入浴も宿題も、残りの3時間ほどに詰め込まれています。
これは「すきま時間に使っている」量ではありません。生活の中心がスマホになっているという状態です。
② 世界は、規制に動いています
オーストラリアで2025年12月10日、16歳未満のSNS利用を禁止する法律が施行されました。
TikTok、Instagramなどの事業者に、16歳未満の排除を義務づけ
違反すれば最大4,950万豪ドル(約51億円)の罰金
年齢確認には、自己申告に加えて顔認証や行動データによる年齢推定も認められる
ここまで踏み込んだ民主主義国は、オーストラリアが初めてです。
そしてEUでも、デジタル年齢の最低ラインを16歳とする議論が進んでいます。イギリスは規制すること決めました。
つまり、こういうことです。
「子どもにスマホを持たせすぎている」というのは、いまや一部の心配性な親の意見ではありません。国家が法律で止めにかかるレベルの問題だと、世界が認識し始めています。
③ 日本には、法律がありません
一方、日本はどうか。
子どものスマホ利用を制限する国の法律は、ありません。
唯一よく知られているのが、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」(2020年施行)です。ゲームは1日60分(休日90分)を目安とする、といった内容ですが——
県の条例であって、全国の法律ではありません
罰則はなく、家庭への努力義務にとどまります
この条例は、かなり批判されていますが、方向は間違っていないと思います。
つまり日本では、どれだけ使わせるかは、100%それぞれの家庭の判断です。
学校でもなく、国でもなく、家庭が決めるしかない。
ここから先は、私の意見です
スマホは、知育・徳育・体育を同時に削ります
教育は、知育・徳育・体育の3つで行うものです(教育基本法 第2条)。
スマホが厄介なのは、この3つを、同時に削っていくことです。
知育を削る
単純に、時間です。1日5時間をスマホに使えば、その5時間は勉強にも読書にも使われません。
それ以上に問題なのは、集中の持続力です。数十秒の動画に慣れた脳で、45分の授業を聞き続けるのは、率直に言ってきついはずです。
徳育を削る
ここがいちばん深刻だと思っています。
自制:「あと5分」で止められない。自分を律する練習の、真逆をやっている
約束:時間を守れなくなる。守れない約束を毎日重ねることになる
礼儀:食卓でも会話中でも画面を見る。人に向き合う習慣が失われる
誠実:親が見ていないところで、隠れて使う
誰も見ていないところで、どう振る舞うか。 徳育の核心は、まさにそこにあります。スマホは、その一番弱いところを毎日突いてきます。
体育を削る
夜更かし。睡眠時間が削られる
外で体を動かす時間が減る
姿勢が悪くなる。目を悪くする
実際、スポーツ庁の全国体力調査でも、体力低下の要因の一つとしてスクリーンタイムの増加が挙げられています。
知育も、徳育も、体育も削る。 3本の柱を同時に細らせるものは、そう多くありません。
ただし、私は「禁止しろ」とは言いません
ここは、はっきりさせておきたいところです。
私の立場は、こうです。
知育・徳育・体育がきちんと育っている子なら、スマホをいくら使ってもいい。
冗談ではなく、本気でそう思っています。
自分で生活を整えられて、決めた時間を守れて、やるべきことを終えていて、体も健康。そういう子が1日5時間スマホを使っていても、私は何も言いません。その子は、スマホを使いこなしています。
問題は、多くの子どもがまだそうではないということです。
自制がまだ育っていない子に、世界最高の技術者たちが「離せなくなる」ように設計した装置を、無制限に渡す。これは、公平な勝負ではありません。
家庭で、どうするか
とにかく、知育も徳育も体育の全てがきちんと育っていないなら、何かしらの規制はするべきです。
最後に
日本に法律はありません。だから、やるかやらないかは、それぞれの家庭が決めるしかありません。
世界は、法律で止めにかかり始めました。日本もいつか、そうなるかもしれません。
でも、それを待っている時間は、お子さんにはありません。
出典
こども家庭庁「青少年のインターネット利用環境実態調査」(2025年11〜12月実施/利用時間・過去最長)
オーストラリア:16歳未満のSNS利用禁止法(2025年12月10日施行)
Bratsberg B. & Rogeberg O. (2018), PNAS「Flynn effect and its reversal are both environmentally caused」
香川県「ネット・ゲーム依存症対策条例」(2020年施行/罰則なし)
スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」
教育基本法 第2条(教育の目標)