4月。クラス発表の日。
担任の名前を見て、ほっとする親と、青ざめる親がいます。
「あの先生か……」
「今年は当たりだって」
口には出しませんが、みんな思っています。
先生ガチャ。
言葉としては乱暴です。でも、この感覚は間違っていません。 数字がそれを裏づけています。
この記事は、前半が「事実」、後半が「私の意見」です。
【事実】選抜が、効かなくなっています
① 教員採用試験の倍率は、過去最低
文部科学省「令和7年度 公立学校教員採用選考試験の実施状況」(2025年12月公表)より。
競争率全体2.9倍(過去最低。前年度3.2倍)小学校2.0倍(過去最低。7年連続で最低を更新)
小学校は、34,434人が受験して、17,078人が採用されています。
受験した人の、およそ半分が先生になっています。
1990年代には全体で10倍を超えていた時期もありました。それが、いま2.9倍です。
② 保育士は、さらに厳しい
こども家庭庁の資料に基づく数字では、2026年1月時点の保育士の有効求人倍率は、全国平均3.88倍。
同時期の全職種平均は1.27倍です。約3倍。
保育士1人に対して、約3.8件の求人がある。 完全な売り手市場です。
つまり——園も、選べる立場にありません。
③ 現職の先生は、倒れています
文部科学省「令和6年度 公立学校教職員の人事行政状況調査」より。
精神疾患による病気休職者:7,087人(全教育職員の0.77%)
前年度(7,119人・過去最多)から横ばいの高止まり
小学校が3,458人と、全体の約半数
年代別では30代が最多で2,118人
ここから先は、私の意見です
「変な先生が増えた」のではないと思います
先に、はっきり書いておきます。
私は「いまの先生の質が落ちた」とは思っていません。 そういう統計もありません。
倍率2.9倍でも、素晴らしい先生はたくさんいます。むしろ、この状況で踏みとどまっている先生は、相当に力のある人たちです。
起きているのは、「幅が広がった」ことです
選抜というのは、下を切る機能です。
10人から1人を選ぶ … かなり厳しく切れる
2人から1人を選ぶ … ほとんど切れない
上位層は、いつの時代も変わりません。変わるのは下限です。
選抜が効かなくなると、上と下の幅が広がる。
だから親は、こう感じます。
「すごくいい先生」と「厳しい先生」の差が、昔より大きい気がする。
これが「先生ガチャ」の正体だと思います。 変な人が増えたのではなく、当たり外れの振れ幅が大きくなった。
そして、担任は選べません
ここが決定的です。
塾なら、合わなければ変えられます。習い事も同じです。
でも学校の担任は、選べません。 1年間、固定です。しかも1日6時間、年間200日、その先生と過ごします。
子どもの1年が、くじで決まる。
親が不安になるのは、当然です。
でも、先生を責めても、何も変わりません
いま先生は、精神疾患で年間7,000人が休職する環境で働いています。小学校だけで3,458人。しかも30代がいちばん多い。
これから学校を支えるはずの世代が、いちばん倒れています。
そこへ「もっとちゃんとやってくれ」と言っても、何も起きません。 責めるべきは制度であって、目の前の担任ではありません。
そして、制度は来年には変わりません。
だから、親にできることは2つです
① 「どの先生でも崩れない土台」を、家庭で作る
先生は選べません。でも、土台は選べます。
当たりの先生でも、そうでない先生でも、子ども自身に基礎ができていれば、1年間は乗り切れます。
朝、自分から挨拶する
呼ばれたら返事をする
授業中、話を最後まで聞く
使ったものを元に戻す
約束を守る
地味です。でも、この5つができている子は、どの先生のクラスでも、大きくは崩れません。
逆にこれができていない子は、当たりの先生に当たっても、その1年を活かせません。
ガチャの結果は変えられませんが、ガチャの影響は小さくできます。
② 「合わない」と感じたときの、動き方を知っておく
これは実務の話です。感情で動くと、必ず失敗します。
1. まず、記録を取る
「なんとなく嫌だ」では、誰も動けません。
いつ、何があったか(日付と事実だけ)
子どもが何と言ったか(そのままの言葉で)
評価や感情は書かない。事実だけ。 これが後で効きます。
2. 順番を守って相談する
担任 → 学年主任 → 教頭 → 校長 → 教育委員会
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いきなり教育委員会に行くと、逆効果です。 「手順を飛ばす保護者」と認識され、その後の話が通らなくなります。
3. 「敵」として行かない
これがいちばん大事です。
「うちの子が困っています。どうすればいいでしょうか」
この形で入ると、たいていの先生は動きます。
「先生のせいだ」で入ると、防御されて終わります。
先生も人間で、しかも疲れています。味方として接するほうが、結果的に子どものためになります。
最後に
先生ガチャは、あります。 倍率2.0倍という数字が、それを示しています。
でも、引き直すことはできません。
できるのは、どの結果が出ても大丈夫な子に育てておくことだけです。
学校が抱えてくれる範囲は、これから狭くなります。
だから家庭でやる。 それ以外に、確実な方法はありません。
出典
文部科学省「令和7年度 公立学校教員採用選考試験の実施状況」(2025年12月公表)
文部科学省「令和6年度 公立学校教職員の人事行政状況調査」
保育士の有効求人倍率 3.88倍/全職種平均 1.27倍(2026年1月時点、こども家庭庁関連資料に基づく報道)