「今回の主担当は、別の方にお願いしようと思います」
会議でそう伝えられた。
これから始まるプロジェクトの予定を見れば、その判断が不自然ではないことも分かる。
夕方以降の打ち合わせが入るかもしれない。
急な対応が必要になることもある。
子どもの迎えがある今の自分より、時間に融通が利く人が担当した方が、仕事は進めやすい。
上司から責められたわけではない。
担当することになった人に不満があるわけでもない。
「分かりました」と答えた。
それでも、会議が終わったあと、少しだけ胸に引っかかるものが残った。
育休に入る前なら、自分が担当していたかもしれない仕事だった。
関係者の意見がまとまらないときには、論点を整理する。
作業が止まっている人がいたら、何につまずいているのかを一緒に確認する。
目立つ成果ではなくても、そうやって仕事を前に進めてきた経験があった。
今度は、その仕事をする人を横から支える側になる。
「分からないことがあったら教えてください」
そう言われれば、教えられることはいくつもある。
過去の資料がどこにあるのか。
誰に先に話した方が進みやすいのか。
数字だけでは分からない部署ごとの事情。
意見が割れたときに、どう整理すれば話が前に進むのか。
自分の中には、これまでの経験がちゃんと残っている。
けれど、それを伝えれば伝えるほど、自分はもう主担当ではないということも実感する。
夕方になり、周囲がまだパソコンに向かっている中で席を立つ。
「お先に失礼します」
子どもの迎えに向かいながら、頭の中ではこんな言葉が浮かぶ。
時短だから仕方がない。
今は、前と同じように任せてもらえなくても仕方がない。
何度もそう考えているうちに、いつの間にか別の意味まで加わってしまうことがある。
「今の私は、もう期待されていないのかもしれない」
以前より任される範囲が小さくなった。
表に名前が出る機会が減った。
支える側に回ることが増えた。
そうした変化を見ているうちに、自分自身の仕事の価値まで小さくなったように感じてしまう。
でも、
「任されている役割が変わったこと」と、
「自分が仕事の中で生み出せるものが小さくなったこと」は、
本当に同じなのでしょうか。
主担当という名前には表れなくても、自然にしていることがあります。
人の話を整理する。
困っている人に気づく。
周囲が動きやすいように準備する。
これまでの経験から、先に起こりそうなことを考える。
役割や働ける時間が変わると、以前は分かりやすかった自分の持ち味が見えにくくなることがあります。
だから、「前のように働けない」と感じたときほど、今の役割や肩書だけで自分を見るのではなく、これまでの具体的な経験を振り返ってみることが大切なのかもしれません。
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