「来年、転勤になるかもしれない」と言われた夜、また私の仕事が動くのかと思った

「来年、転勤になるかもしれない」と言われた夜、また私の仕事が動くのかと思った

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ビジネス・マーケティング
「来年、転勤になるかもしれない」

子どもが寝たあとのリビングで、夫からそう聞いた。

まだ決まったわけではない。

候補に名前が挙がっているだけで、正式に分かるのはもう少し先らしい。

「そっか」

そう答えながら、頭の中ではもう別のことを考え始めていた。

どこになるんだろう。

今の家から通える場所なのか。

引っ越すなら、保育園はどうするのか。

そして、自分の仕事はどうするのか。

まだ何も決まっていないのに、一つの話を聞いただけで、その先にある予定が一気に動き始める。

今の職場に入って、ようやく仕事の流れが分かってきたところだった。

誰に何を聞けばいいのか。

どんな順番で進めればうまくいくのか。

会議でも、以前より自然に発言できるようになった。

少しずつ仕事を任せてもらえるようになり、ようやく自分の居場所ができてきた気がしていた。

だからこそ、転勤の話を聞いたときに最初に浮かんだのは、

「またか」

という感覚だった。

もちろん、夫が悪いわけではない。

本人が転勤を望んでいるわけでもない。

会社員として働いていれば、そういう可能性があることも分かっている。

以前にも環境が変わった経験がある。

引っ越すこともできる。

新しい土地で仕事を探すこともできる。

知らない職場で、また一から人間関係をつくることも、おそらくできる。

むしろ、これまでもそうやってきた。

だからこそ、自分でも何にこれほど引っかかっているのか、うまく説明できなかった。

「まだ決まってないから」

夫にそう言われて、

「うん、大丈夫」

と答える。

でも、本当は少しも大丈夫ではなかった。

また仕事を変えることになるかもしれない。

また新しい環境に慣れるところから始めるかもしれない。

今ようやく築き始めたものを、また途中で置いていくことになるかもしれない。

そして何より苦しかったのは、

「自分の仕事なのに、自分だけでは決められない」

という感覚だった。

これまでも、その時々の状況に合わせて選んできた。

家族の予定を考えながら働ける場所を探し、新しい環境に入れば、できるだけ早く馴染もうとしてきた。

そのたびに、自分なりに頑張ってきたつもりだった。

それでも環境が変わる話が出るたびに、

「またゼロからなのかな」

という感覚が戻ってくる。

積み上げても、また場所が変わる。

せっかく慣れても、また一から始まる。

だったら、どこまで頑張ればいいんだろう。

そんなことまで考えてしまう。

けれど、

働く場所を自分だけで決められないことと、

その場所で「自分がどう働くか」まで決められないことは、

本当に同じなのでしょうか。

振り返ってみれば、環境が変わるたびに失ってきたものだけではなく、場所が変わってもなぜか繰り返してきたこともあるはずです。

新しい環境に入ったとき、自然にしていたこと。

周囲から何度も頼られてきたこと。

場所や仕事内容が変わっても、自分なりに大切にしてきたこと。

それらは職場が変わるたびにゼロになるものではないのかもしれません。

ただ、自分自身ではまだ、それをうまく言葉にできていない。

だから、環境が変わるたびに「これまでの自分まで失った」ように感じてしまうことがあります。

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