甘辛い思い出

甘辛い思い出

記事
コラム
毎日コーヒーを朝昼晩何杯も飲む私ですが、レギュラー・コーヒーの香りを嗅ぐと、甘くて塩辛い出来事が思い出されます。
 砂糖からコーヒー用のシュガーになり、いつのまにかブラックで飲むようになりました。でも、子供の頃は砂糖をスプーン三杯ほど入れて飲んでいたのです。
 甘く塩辛い出来事がおきたのは、小学六年生だった日曜の朝のことでした。まだ寝ぼけながら、レギュラー・コーヒーを入れ、テーブルにあった砂糖だと思ったものをスプーンで二杯ほど入れて飲みましたが、まだ甘くありません。それからなんどか追加して入れたあと、ようやくおかしいと気づき、その白いものをなめてみたらやっぱり塩でした。私は舌をだして、
「塩だったー!」
 と叫びました。
 コーヒーカップの底を覗くと、溶けずにいた塩が白い山のようになっていました。
 そのようすをみていた父と母、そして兄と弟が突然吹き出し笑い出しました。私は呆然として言葉もでませんでした。
 両親にどうして笑うのか訊ねると、父も母もとくにだますつもりはなかったようですが、なんども首をかしげてぶつぶつ言っている私が可愛らしくて、そのままみていたいと思ったそうです。
 私はそれ以来、白いものを入れるときはなめて確認してから入れるようになりました。 見た目で判断してはいけない、なにごとも確認することはとても大切ですといった話になるときは、この甘く塩辛い思い出を話します。聞いているみんなも笑い転げながらも、うんうんと頷いて納得してくれるみたいです。
 兄弟たちも日本各地に住み、私自身も一人暮らしをしている今、コーヒーにまつわる思い出は、私たち家族がいちばん幸せだった日々の象徴です。                              

                 (了)



サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す