承前
明治のころから海軍駐留地区であり現在も海上自衛隊の駐屯地がある街の商業中心地にあるその店は古く創業120年という歴史を、持つ老舗の蕎麦屋
蕎麦屋でありながら料亭の機能、宴会場をもちなおかつ洋食を取り入れた食堂を経営。街の中の「総合食堂」としての役割を担っていた。ある時は働くお父さんのための一杯やりながらそばを食うといった憩いの場であり、ある時は忘年会の大人数で楽しむ場であり、商談に使うための料亭であったり、或る時は家族のお祝い、とあらゆるニーズに応えようとしていた店であった。
昔はよかった・・・店数が少なく需要が一律であったので十分な繁盛店として成立していて、かつ労働市場に関してもレベルはともかくも人数が足りなくなるという事はなかった。そんな時代を体験しているためなかなか「イノベーション」が起きにくく、当然時代からとり残されていくのである。
先代である4代目社長の引退、息子さんが5代目を継ぎ新しい体制に変革しようと考え、私が所属するコンサルファームにその問題を解決のためにコンサルティングの依頼がありました。
今ならまだ資金の調達も可能であり改装も視野に入れたいという事であったのです。手順は以下のごとく
まずは調査診断によって詳しく経営環境を明らかにするという作業があります
立地は市内中心部にあり老舗百貨店の近く商業の集積地であり商圏内の人の流れは十分であります。
建物、4階建ての自社ビル大きな看板在り。4階部分は先代社長家族の住居
3階部分は新社長夫婦の住居、営業スペースは2階部分の宴会場60名程度の収容数あり、一部個室あり。一階は食堂部分で60席程度と厨房スペース
別棟があり一階部分と廊下でつながっている料亭部門があり、これは街のお偉いさんたちの場所でかつては海軍の幹部連中のご用達だったという事です。
※海軍のお偉いさんは関東から赴任されていることが多いせいかこの店の味付けは濃い口しょうゆがベースだからかそばだしも江戸風でしたね・・・
後々これが味付けの面で問題になるかもしれない・・・・
店舗としては古臭く、現代の競合店舗群のファッション性から後れを取っていたのは周知の事実としてお客から認識されていたと考えられる。
メニューの構成に関してはそばを軸に和洋料理の定食を提供、そば、天麩羅、刺身、肉料理、さらに鮨までそろっておりそれぞれの部門に調理師を配置昔のデパート食堂の趣さながらの非効率な人件費構造となっていた。なおかつお客の要望にて色々なメニューを準備するためかかなりの在庫過多の状況となっていた。そうした中で売上は月800万程度、年間1憶を超える程度ですが何とか利益在り。家賃が発生していないのは大きいです。
競合状況をみると、宴会部門は近隣の農協会館、食堂部門はそもそも競合だらけファミリータイプの和食チェーンあり、料亭部門は老舗百貨店の飲食部などそれぞれの部門何れも激戦。唯一ブランド優位にあるのが「そば」という事になっている。
人員組織もマンネリ化、高齢化していて新しい考えについていけるかどうかは不安ではある。
こういった問題をいかに解決していくか・・店のトップである新社長とその奥様「女将」と先代「お女将」、現場のベテラン調理師らとコンセンサスを摂りながらの仕事になります。
キャッチフレーズ「新しい未来の創造」を掲げ新生○○(店名)再生プロジェクトと銘打ってスタートさせました。
古きよきものを残し変えるべきところをダイナミックに変える、特に商品政策は最大の課題であったのですが、調理師それぞれの得意を形にをモットーとして、道筋はリーダーが決めるからそれに沿って自分がチャレンジしたいことを、プレゼンしてくれと宿題を出しながらメニューを決めようという方針で進みました。
店舗に関しては旧来の老舗そばやのイメージはシンボリックされたモチーフお客に「老舗感」をどうアピールするかを設計士に依頼、ファサードの重要性を確認。コンセプトは「温故知新」デザインは「和モダン」という事にしてすべてのビジュアル、制服に至るまで徹底すること。
接客グリーティングは方言可。 但し丁寧語を使うこと、活舌トレーニングは日々職場にて実施する。平均年齢40歳を中ほど越えた接客スタッフの落ち着いた脱マニュアルの接客は差別化戦略の一つだという事をずっと伝えていきました。
営業シナリオはそもそも「ブランド」として定着しているそばをメインにしそれに付随して天麩羅、すし、茶わん蒸しなどを合わせたお膳料理を売ろうという事で、食器は漆の盆、竹籠、といった当時のモダンなイメージを提供。
一挙に料理が出来上がると配膳棚が狭いためその部分のスペース確保。
寿し、天麩羅があがるのを見計らってそばをゆでるといったコンビネーションプレイを習得することと配膳台でのアッセンブル作業の振り分け訓練を重ねる
当たり前のことですが同時同卓の原則を徹底させる。といった一連の流れを理解するためにかなりの時間を費やしたのです。
メニューは手作り感表現のために、筆文字、イラストを使ったアピールによって親しみやすさもありながら他店ではできないデザイン追求。
広報は定期的な街の歴史探訪を老舗ならではの視点から各界の著名人にお願いしチラシにして、お客様にもって帰っていただくという方法をとった。不特定多数のお客様に対してのチラシは採用せず。
明るくなった店舗とリニュアルされた人材とメニューにより集客力があがり
月額で2から2.5倍の売上を獲得、従来1000円未満の客単価が1.5倍の1500円客数も1.5倍となった。もともと調理師の力もあったことと「そば」ブランドの存在があり、後はいかに物事を整理し、チームを構築し一つの方向に向かう事で生じるエネルギーの強さを感じた成功事例でありました。
和モダン、ブランド化、チーム力、広報、バランス感覚がkeywordでした
今日の落書は、👇