パワハラと人間臭さ
以前働いていた会社のことを思い返していた。
田舎の小さな会社で、当時私を含めた従業員は8人だった。そこの社長は当時もう70歳に近かったが、その鋭い眼光はいつもギラギラしていた。 社長はとにかく豪胆で押しが強かった。自身が社長であり年功序列の上の層にいることをいやおうなく周囲に了解させるような話し方をする。仮にも俺は社長だぞ、という姿勢を片時も崩さなかった。誰かと話せば、堂々とした張りのある声、圧倒的言葉数の多さ、些細な出来事でも誇張と歪曲を加えて必ず滑稽なオチに引きずり込む話術、嘲笑的な響きのする豪胆な高笑い、、、、それらを無遠慮に振りかざして、必ず会話の主導権を取りに行く。ワンマン社長という言葉を聞いた時に思い浮かべる、アクの強いイメージをそのまま体現したような人だった。
私がこの会社に入社した初日の夜、私のための新入社員歓迎会が開かれた。その頃は新型コロナの影響で、営業自粛をしている店が多かったので、出前を取って、会社で宅飲みをすることになった。
飲み会は事務所の隣にある狭い応接間で行われた。
出前の料理が来て、飲み会が始まった。 私は改めて自己紹介や、これから会社でやりたいことの所信表明などを求められ、たどたどしくもそれに答えた。 私は最初、周りを気にせず机の上に並べられた料理を食べていたが、ふと、一番歳の近い先輩を見ると、ほとんど料理に手を付けていなかった。彼は、社長から遠慮せず食べろと言われていたのに、やっぱり箸を動かそうとしない。ずっと、社長や他の先輩のお酒の入ったグラスや、ビール缶を、きょろきょろと見ていて、誰かのお酒が空きそうになると、すぐ立ち上が
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