『やさしさ迷惑13/100』
第13話「優しい人ほど、相手を見ていない」前話:優作は、美月への負担を減らすつもりで、田辺案件の追加情報を一度自分たちだけで整理しようとした。しかしそれは、美月から見れば“助ける”ではなく“外す”行為だった。謝罪は受け取られたが、美月は「明日、もう一度話しましょう」とだけ言った。翌朝。優作は、いつもより早く会社に着いた。早く来たところで、何かが解決するわけではない。それでも、じっと家にいるよりはましだった。昨日の美月の声が、何度も頭の中で戻ってくる。「それは助けるじゃなくて、私を外しただけです」何度思い返しても、胸の奥が冷たくなる。言い返した自分の声も残っていた。「そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」あれは、完全に逃げだった。分かっている。でも、分かっているのと、受け止められるのは違う。優作はデスクに座り、PCを開いた。けれど、画面の文字がほとんど入ってこなかった。少しして、美月が出社してきた。「おはようございます」いつも通りの声。「……おはようございます」優作も返す。美月は自分の席にバッグを置き、PCを開いた。それだけだった。昨日までなら、少しだけ目が合ったかもしれない。今日は、合わなかった。その方が、よほどこたえた。午前十時。美月からチャットが来た。11時、会議室Bでお願いします。一行だけ。優作は画面を見つめる。承知しました。送信したあと、手のひらが少し湿っていることに気づいた。11時までの一時間が、やけに長かった。会議室B。美月はすでに座っていた。ノートPCは開いていない。資料もない。仕事の話ではある。でも、資料で片づける話ではない。優作は向かいに座った。「昨日は、
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