悠真がいなくなるのは、嫌
放課後の空は、昼間より少しだけ低く感じた。校門を出てから、凪と悠真は、並んで歩いていた。言葉は、ない。気まずいわけでもない。ただ、お互いに、何かを考えているのがわかる沈黙。——この沈黙、前はなかった。凪は、ふと気づく。噂が広がっていた頃。誰かに見られていた頃。悠真は、いつも一歩前にいた。でも今は、隣にいる。同じ速さで。それが、少しだけ怖かった。(もし……)考えたくない想像が、胸の奥に浮かぶ。もし、これ以上巻き込んだら。もし、悠真が、疲れてしまったら。「……ねえ」凪は、立ち止まる。悠真も、足を止める。夕焼けの光が、二人の影を、同じ長さに伸ばしていた。「私のせいで」「大変なことになってない?」言葉にした瞬間、胸が、ぎゅっと締まる。悠真は、すぐには答えなかった。少しだけ、視線を落としてから、言う。「正直に言うと」凪の心臓が、跳ねる。「……ちょっと、怖かった」その一言で、凪の中の何かが、崩れた。「凪を守りたい気持ちと」「俺が前に出すぎたら、 凪が立てなくなるって気持ちと」「どっちも、本当で」悠真は、苦笑する。「うまくやれてるって、言えない」その表情が、あまりにも人間らしくて。凪は、思った。——この人を、失うかもしれない。初めて、はっきりと。それは、噂よりも、三條よりも、ずっと怖い感情だった。「……私」凪は、拳を握る。「悠真がいなくなるのは、嫌」声が震える。でも、止めない。「守られなくてもいい」「前に出てくれなくてもいい」「それでも」「一緒にいるのは、悠真がいい」言い切った瞬間、胸の奥が、熱くなる。——ああ。これは、不安でも、依存でもない。恋だ。悠真は、目を見開いてから、ゆっくり
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