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晴れた日の影みたいにやわらかかった

土曜日の午後。湿り気を含んだ風が、校庭の端をゆっくり通り抜けていく。凪は部活後のプリント整理のために教室へ戻り、机の上の山を前に小さくため息をついた。ふと、廊下側の扉が開き、真帆が顔をのぞかせる。「凪……今日、時間ある?」その声は、どこか慎重だった。いつも勢いのある真帆が、こんな声を出すのは珍しい。「うん、あるよ」真帆は凪の机の前に立つと、しばらく指先をいじりながら言った。「この前さ、“全部ダメ”って言った時…… 凪、ほんとはイヤじゃなかった?」――ドキッ。(……気づいてたんだ)凪は言葉を探した。でも、正直に伝えようとすると、胸がざわつく。「イヤ、っていうか……   ちょっとだけ苦しくなったかな」凪がゆっくり言うと、真帆の表情が一瞬固まった。「そっか……ごめん」謝られると、凪の胸が反対に少し痛んだ。(謝ってほしいわけじゃなかったんだよ……)凪は慌てて続けた。「真帆が悪いんじゃないよ。   ただ、聞きながら自分が   いなくなっていくような感じがして…… それが怖かっただけ」真帆はしばらく黙った。その沈黙は、以前みたいに不安な沈黙じゃなく、“考えている沈黙”だった。「ねぇ凪。 私、いつも言いたいことを  一気に言っちゃうけど…… 凪がどんなふうに聞いてるかって、   あんまり考えてなかったかも」凪は驚いた。真帆がこんなふうに“自分の内側”を話すのは、初めてだったから。「ねぇ、これからさ…… お互い、しんどいときは言っていい?」「うん」「聞けない日は、聞けないって言ってほしい」「私も、そうする」二人は小さく笑った。その笑顔は、前よりも優しく、前よりも素直だった。(本音を言うって、壊
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