【福本潤・元医師】片方の靴下から学ぶ戦略
朝の出勤前、急いで靴下を履こうとしたら片方が見つからない。洗濯機から出したはずなのに、なぜかいつもどこかへ旅立ってしまう。仕方なく色違いの靴下で一日を過ごしたことがある人は少なくないだろう。この小さな出来事は、実はビジネスの現場にも似た構図が潜んでいる。プロジェクトを進める際、完璧にそろった状態でスタートできることはほとんどない。必ずどこか一部が欠けていたり、不揃いのまま動き出すことがある。理想を求めすぎて止まってしまうよりも、とりあえず色違いでも履いて出かけてみるほうが前に進めることが多い。靴下が片方違っても案外気づかれないように、細部の不一致は周囲がそこまで気にしないこともある。ただし、不揃いをそのまま放置すると後で違和感が大きくなる。だからこそ途中で調整が必要になる。仕事でも初期段階では多少のズレを許容しながら進め、ある程度形が見えてきたところで統一感を整えていく。この柔軟さがあるチームは、意外な強さを発揮する。面白いのは、片方行方不明になった靴下が後日ひょっこり現れることだ。忘れた頃に家具の隙間や別の洗濯物の山から出てきて、「こんなところにいたのか」と驚かされる。これはプロジェクトの中で、過去に見送ったアイデアや資料が再び役立つ瞬間にも似ている。一度は見失ったものでも、状況が変わればぴったりはまることがあるのだ。片方だけの靴下を捨ててしまう人も多いが、私はしばらく残しておく派だ。なぜなら、後から相棒が戻ってくるかもしれないから。ビジネスでも同じで、今は意味をなさないと思うものでも、時間が経つと価値を持つケースがある。効率を重視するあまり即座に切り捨てるのではなく、余白を
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