「『創造』と呼ばれる行為」熊本大学文学部2024年後期
(1)問題① 「見たことのないものを作る」というのは、「無から有を作る」ことに通じるように思います。しかし、それは可能なのでしょうか。② 仮にあなたが、小説を書くとします。「無から有」の形で、物語を書くことが可能でしょうか。著名な小説や戯曲のことを思い描いてください。それは既存の事件や筋書き,台詞せりふや言い回しの巧妙な組み合わせで、できているかもしれません。近松門左衛門は、実際に起きた事件をもとに《曽根崎心中》《心中天の網島》を書いたことはよく知られています。シェイクスピアは先行作品に依存したことはすでに書きました。そんなに古い例を持ち出さなくても、現代の作家も似た状況にあるのではないでしょうか。③ 音楽の場合はどうでしょうか。無から作ることができるでしょうか。言葉を理解する前から聞かされた子守歌は私たちの無意識に潜んでいるに違いありません。さらに音楽史や和声学,旋律論,作曲法を身につけるうちに先人が私たちに乗り移るかもしれません。ゼロから何かを作ることは不可能ではないかという考えに導かれそうです。④ もしかして「創造の秘密」とは私たちが過去に受け取れていない知識や情報の思いがけない組み合わせなのではないでしょうか。⑤ 実は、「創造的な仕事」と言うとき、それは、これまでにないものを作る「発明」の世界でも同様のことが起きています。身近な実例を iPhone などスマホに見ます。まず,機能面において、スマホは、電話機とカメラ、音楽再生装置,検索端末,辞書,メール、ゲーム機などが組み合わさっています。⑥ 次に、物体としてみると、スマホという機械を構成しているのは、気の遠
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