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「近代国民国家の言語」高知県立大学文化学部前期2024年

(1)問題①  話しことばに対応するものとして書きことばがある。話しことばが文字として表記されることはあるが,必ず書かれるわけではない。それに対し書きことばは,当然ながら書かれなければ意味をなさない。そして文字はその使用期間が長いほど,そのことばの歴史・伝統を証明するものとされ,その分だけ,歴史に規定された存在でもある。文字のもつ歴史性から,書きことばにはある種の特権性が付与されることになる。誰でもが生まれながらに書きことばを習得できるわけではない。②  近代・前近代にかかわらず,日本では文書によって統治が行なわれてきたのであるから,そうした文書を作成し,解説できる能力をもった人たちは特権的な位置にあった。そうした書きことばを習得するには訓練が必要であり,それを保証する地位が伴っていた。それは階層別の識字率を考えれば納得がいくだろう。③  そして,書きことばの標準化は案外容易なもので,中央がある標準を定めてそれを権力の裏づけのもとで強力に地方に広げればよいだけである。その意味では,江戸時代を通じて書きことばの統一性は確立されていた。書きことばを習得することは,幕藩体制の日本では文章語が担う特権的な役割によって保証される階層にその人が属することを意味した,それ相応の教育がうけられる特権的階層に属することが有利にはたらくことになる。明治政府は江戸幕府の版図をほほ継承して登場したが,幕藩体制を支えていた書きことばもほぼ同様に継承した。明治初期の知識人の教養の基礎は何といっても漢学であり,漢文訓読体の書きことばの習得は不可欠であった。もちろん,候文そうろうぶんや戯作げさくの文体などの種
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