聖天様
ヒンドゥー教においてガネーシャ神は庶民に一番身近な神様で、何かを始める前に必ずご加護を願います。インドの街中でもよくガネーシャ神の聖画をみかけます。 聖天様はそのガネーシャ神が元となって、大乗仏教に帰依した形で取り入れられた天部の尊の御一方です。ガネーシャ神を仏教に帰依せしめて漢語で「大聖歓喜双身天」へと変化させたのは、日本伝来の密教(以下単に「密教」とします。)では十一面観世音菩薩とされ、その御化身である女天とガネーシャ神である男天が相抱く尊像が礼拝対象となっています。 この尊い御姿が大乗仏教に帰依した聖天様を表しています。ただ、知らない人が見ると、内に秘めたる尊い仏意を知らずに、外見だけで愚昧な想像をする危険性があるので、御尊像は鍵のついた御厨子の中に安置し、秘仏として通常行者以外が拝見することは致しません。 この御姿には欲望と悟りの一体無二という密教の真髄が表現されています。密教は世俗の欲望を肯定したうえで、それを「大いなる欲望」(大欲=悟り)へと転換させるというアプローチをとります。顕教が欲望の否定からアプローチするのとは真逆ですが、密教は仏道を歩む気持ちはあるものの実際にはなかなか難しい民衆一般にも、比較的実行しやすい形での救い(悟り)への道を提示している意味で、大きな役割を担っています。 この密教の真髄を体現されているのが聖天様。故に、熱心に信心すれば一般的に困難と思われるような願いも叶います。大日如来は様々な御仏の御姿となって世の救済に努められておられます。本来は悟り一筋で仏道に精進するのが一番ですが、世の中で生きていると難しい故に、大日如来は救いのための方便と
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