「どうして食べてくれないの?」と悩むあなたへ──高齢者の“食べない”に寄り添うということ
はじめに
食事の時間。
「食べてくれないな…」
「どうしてなんだろう?」
そんなふうに悩んだ経験はありませんか?
私も、介護の現場や関わりの中でたくさん悩みました。
そして少しずつ、「食べない”の奥にある気持ち」や、「関わる側の思い込み」に気づいていくことになりました。
ここでは、私の経験をもとに、高齢者が食事を“食べない”時に何が起きているのか、
そして、どう関わっていけばいいのかを、やさしく綴つづってみたいと思います。
「食べてくれない…」の背景にあるもの
目の前のごはんに、手を伸ばさない。
一口食べて、口から出してしまう。
何かを訴えるような表情をしている。
そんな姿を見て、「どうして?」「何が気に入らないの?」と戸惑うこともあるかもしれません。
けれど、そこには“理由”があることも多いのです。
たとえば──
・認知機能の変化により、食べ物として認識できなくなってしまっている
・食べ方を忘れてしまったり、スプーンや箸の使い方が分からず、戸惑っている
・視覚機能が低下して、白いご飯と白いお茶碗が見分けづらく、食べ物として認識しにくい
・味覚や嗅覚の変化により、今まで好きだった味が「なんだか違う」と感じられてしまう
どれも一見すると“拒否”に見えるかもしれませんが、
実は「わからない」「うまくできない」「見えない」といった、“困りごと”のサインかもしれないのです。
あるエピソードから見えてきたもの
ある方に、以前好きだったものをそっと差し出してみました。
最初は一口食べたものの、「あれ?」というような表情をして、口から出してしまいました。
きっと、その方の中で“これは何?”と
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