理学療法士が解説する猫背になりやすい原因と環境の整え方について

はじめに

近年はスマートフォンの普及やPCを利用した仕事が増えており、長時間の座位姿勢を強いられることも増えてきています。その中で姿勢の悪さが目立つこともあり、結果的な体の歪みを引き起こすこともあります。

今回はそのような姿勢の悪さに着目し、引き起こす要因や、改善方法についてお伝えしていきます。

そもそも猫背とは？

猫背姿勢とは体が丸まっていることですが、その典型的な猫背の姿勢の項目があります。これから一つ一つを解説していきたいと思います。

①顎が突き出ており、頭と首が前に出ている状態（フォワードヘッド）

　最近ではスマホ首と一般的に呼ばれています。一般的に顎を引くと胸が開きやすい姿勢になります。

しかし、スマホ首のように顎が上がったり、前に突き出したりするような姿勢では自然と体が丸まりやすくなります。

②肩が前方に突出している

　顎が前方に突き出ていると、胸が開きにくくなるため、肩も前に入りやすくなります。

逆に顎を引くと、胸は開きやすくなるため、肩が後ろに動きやすくなります。

③背中で胸椎に相当する胸の部分の弯曲が大きい

　胸が開きにくく、肩が前に出たような姿勢では体は丸まりやすくなります。この丸まりは特に胸椎と呼ばれる胸の部分で最も大きくなります。これには理由があります。背骨は解剖学上S字カーブ上に構成されていることが知られており、この胸椎にあたる部分では後ろ弯曲している部分に相当するからなのです。

④骨盤が後ろに寝たような状態となっている

　猫背は骨盤にも影響を与えます。猫背姿勢では仙骨座りとも言われたりしますが、骨盤が後方に寝た状態を呈することが多いです。

⑤膝がやや曲がっており、外を向いている

　背骨が全体的に丸まると立った時に膝にも影響を与えます。足は自然とO脚のようになり、膝のお皿は外を向くようになります。猫背とは関係のない部位に思えるかもしれませんが、全身はつながっているため背骨で起きていることは股関節や膝関節・足関節にまで影響が及ぶのです。

このような①～⑤の項目はまさに長時間に及ぶデスクワークや自宅での自粛期間中の延長線上に完成しやすい姿勢ともいえるのです。

猫背を取りやすい環境と改善方法について

猫背になりやすい環境はいくつか考えられます。これからその中でも重要とされる項目に対する説明を行います。

①椅子の高さについて

まずは椅子が体に適していないことです。一般的な椅子の高さは40cm程度ですが、これより低い椅子の場合、座った際に腰の位置よりも膝のお皿の方が高い位置になりやすく、腰が曲がりやすく、先ほど説明した仙骨座りになりやすくなります。

そのため、椅子の高さは40cm以上がよいとされています。さらに微調整を行うことでより姿勢に良い環境を作ることができます。

②座面の傾斜

高さ以外にも傾斜の問題もあります。座面に対し、背中面にかけて下方に傾斜しているタイプの座面では座った際に自然と腰部や骨盤が背面によりかかりやすい姿勢となり、仙骨座りのような状態になります。

このようなタイプの椅子では自然と腰部に負担をかける姿勢をとるため、座面の後方にタオルを引いて傾斜を減らしたり、座面の前方に向かって傾斜をつけたりなどの調整することで、自然と良い姿勢を保ちやすくなります。

③クッションのタイプ

次に考えられることは椅子の座面に過度のクッション性があることです。ふわふわしている座面は座り心地がよく非常に便利な一方で健康に対するデメリットも持っています。

イメージがしやすい椅子はクッション性に富んだソファーでの作業です。腰の位置が安定しないため、非常に腰が曲がりやすく、腰痛の原因にもなりやすいです。

デスクワーク等の作業をする際に、部屋にフワフワのクッションしかない場合は、そのクッションの上に座布団や板などのやや固めな素材を置くとよいです。

④机の高さについて

机の高さも重要なポイントです。

机があまりに高いと肩と肘が上がった状態で作業を行うことになるため、不良姿勢になりやすいです。

一方で、低すぎる場合も目線を下に下げて作業を行う形になり、非常に猫背になりやすいといわれています。

一般的に机の高さは椅子に座った際の肘の高さが机の高さになることが推奨されています。これは、パソコン作業をしたときに肘を直角に曲げて作業が出来る高さに相当します。

おわりに

いかがでしたか？日常生活の中でも姿勢を悪くしてしまう要素は非常に多く存在し、些細な動作の積み重ねで、徐々に歪みを形成してしまいます。少しの工夫でこれらの問題は解決しやすいため明日から実際に取り入れてみてはいかがでしょうか？