「フィードバック」というと、改善点を伝えることを思い浮かべる人が多いかもしれません。
もちろん、仕事をより良くするためには、いわゆるconstructive feedback(建設的なフィードバック)が欠かせません。
ただ、Goldman Sachsで働いていた頃、私が上司だったMD(Managing Director)を見ていて、「良いリーダーは、良かったことを伝えるのも上手なんだ」と強く感じたことがあります。
彼女は、私が仕事で良いアウトプットをすると、決して惜しまず、
「I love it!」
「That's so cool!」
と、かなりストレートに喜びを伝えてくれました。
しかも、ただ「Good job!」と言うだけではありません。
「昨日寝る前にこのデータをどう使おうかずっと考えていた」
「これを使ってこんなことができそうだから、あなたの意見を聞きたい」
と、自分がそのアウトプットをどう受け止めたのかまで具体的に伝えてくれました。
私はもともと人から直接的に褒められることにあまり慣れていなかったこともあり、最初の頃はこうしたストレートな褒め方に少し戸惑っていました。
でも、彼女の言葉は毎回とても自然で、本当にそう思っていることが伝わってきました。
そして、仕事をするうちに気づいたのが、「I like it.」と「I like it because...」では、受け取る情報量が全く違うということです。
例えば、
「この資料、いいね。」
だけでは、次に何をすればいいのかまでは分かりません。
一方で、
「この分析がいい。なぜなら、この数字を見ることで○○ということが分かるから。」
と具体的に理由を説明してもらえると、上司が何を重要だと考えているのかが分かります。
これは、実はpositive feedbackであると同時に、非常に有益なconstructive feedbackでもあります。
上司が求めているものを理解するにつれて、私も仕事を任されたときに、
1. この仕事で何を達成したいのか?
2. その目的を達成するには、どんな数字が必要なのか?
3. その数字を得るには、どんな分析をすればいいのか?
と、最初に考えるようになりました。
毎回のフィードバックを通じて、少しずつ上司の思考回路を学んでいったわけです。
そう考えると、私自身が機械学習のモデルみたいなものだったのかもしれません。
そして、彼女がもう一つ上手だったのが、チームメンバーの仕事を上司の前でもきちんと紹介することでした。
例えば、
「これはうちのチームのデータ分析が得意な○○さんが作ったものです。」
「○○さんがすぐにこの問題に気づいてくれました。」
というように、誰がどんな仕事をしたのかを具体的に伝えていました。
その結果、彼女の上司であるPartnerたちにも、チームの誰が何を得意としているのかが少しずつ伝わっていきました。
時には、私のところに直接「このデータについて教えてほしい」とメールが来ることもありました。
新人だった私にとっては、Partnerから直接メールが来るのは少し驚きでした。
怖さもありましたが、それ以上に、「これは成長するチャンスかもしれない」と感じていました。
良いフィードバックとは、単に相手を褒めたり、間違いを指摘したりすることではないありません。
「何が良かったのか」「なぜ良かったのか」を具体的に伝えることで、相手は自分が何を評価されているのかを理解できます。
そして、それが次の仕事の質を上げることにもつながります。
私自身、仕事をする中でこうした相手の意図を理解し、その意図に合わせてコミュニケーションすることの重要性を学びました。
海外のビジネス環境では、こうしたコミュニケーションの積み重ねが、仕事の進め方や人間関係にも大きく影響すると感じています。