私がGoldman Sachsで働いていた頃のMD(Managing Director)には、リーダーとしてすごいなと思うところがたくさんありました。
以前の記事では、チームメンバーへの「正のフィードバック」や、「人をよく見る」ことについて書きました。
今回は、仕事でミスが起きたときの対応についてです。
私のMDは、チームで何か問題が起きると、まず最初に「誰の責任なのか」を確認していました。
でも、それは誰かをすぐに責めるためではありません。
まず事実関係を整理して、責任の所在を明確にする。
そのうえで、誰がどう対応するべきなのかを判断していました。
もし問題の原因が私たちのチームではなく、別のチームにあった場合。
MDは、そのチームのMDに対して、
> 「We didn't drop the ball, but we'll try our best to fix it.」
というスタンスを明確にしていました。
つまり、
「これは私たちのミスではありません。でも、できる限り解決には協力します」
ということです。
自分たちの責任ではないことを曖昧にして謝ってしまうのではなく、責任の所在はきちんと明確にする。でも、問題の解決には協力する。
この姿勢はとても印象的でした。
MDは何度も、
「自分のミスではないと明確に分かっているなら、すぐにI’m sorryと言わなくていい」
と教えてくれました。
特に女性は、職場で反射的に「Sorry」と言ってしまうことがあるけれど、それによって必要以上に自分が弱い立場に置かれてしまうこともある。
だからこそ、責任を負うことと、相手に協力することは別々に考える。
これは、仕事をするうえで大切な考え方だと思います。
そして、彼女は会社でも「自分のチームを守る人」として知られていました。
チームのメンバーにとって、それは大きな安心感につながっていたと思います。
## 自分たちのミスなら、逃げない
一方で、原因が私たちのチームにある場合、MDは責任から逃げることはありませんでした。
むしろ、対外的には自分やチームとして責任を引き受ける。
ただし、クライアントに対して「今回のミスはうちのアナリストの○○が原因でした」と、個人の名前を出して責任を押しつけることはありません。
「人は誰でもミスをする」
というのが彼女の考えでした。
そして、彼女自身がクライアントに謝ったほうが、相手にも納得してもらいやすい。
だから、チームのメンバーが犯したミスであっても、
「私の確認不足でした」
という形で、自分が前に出て謝ることがよくありました。
その代わり、問題が落ち着いた後には、本人と一対一で話します。
「今回の責任はあなたにある」「次回はどうすれば同じことを防げるか」
ということを、きちんと伝える。
つまり、
外に対してはチームを守る。
中では、本人に責任を理解させる。
この二つを両立していました。
私も一度、MDからかなり真剣に注意されたことがあります。
クライアントに送ったメールの冒頭で、日付を間違えてしまったのです。
正直、当時の私は、「まあ、typoだし、誰でも間違えることはあるよね」くらいに思っていました。
でも、MDの反応は違いました。
彼女はそのメールを見たとき、とても腹が立ったそうです。
理由は二つ。
一つは、そのメールが私たちにとって非常に重要なクライアントに送るものだったから。**
そしてもう一つは、
「あなたなら、こんな初歩的なミスはしないと思っていた」からでした。
彼女はまず自分でクライアントに電話をして謝り、そして自分の感情を整理してから私のところに来ました。
そこで初めて、落ち着いて、「今回のミスはどういう意味を持つのか」「なぜ問題なのか」「次からどうすれば防げるのか」を説明してくれました。
そのときはかなり反省しましたし、悔しくもありました。
でも、その後、私は同じ種類のミスを二度としませんでした。
## 「守る」と「甘やかす」は違う
この経験から私が学んだのは、良いリーダーは、部下のミスを隠す人ではないということです。
本当に良いリーダーは、
* 責任の所在を明確にする
* 自分たちの責任ではないことは、必要以上に背負わない
* 自分たちの責任なら、チームとして引き受ける
* 対外的にはメンバーを守る
* その一方で、本人にはきちんと責任を理解させる
* 次に同じミスをしないための学びにつなげる
ということを、同時にやっているのだと思います。
そして何より印象に残っているのは、「この人は何かあったときに自分を守ってくれる」という安心感があるからこそ、チームのメンバーも思い切って仕事ができるということです。
一方で、「守ってもらえるから大丈夫」では終わらせない。
ミスをした本人には、きちんと向き合わせる。
このバランスこそが、私が彼女から学んだリーダーシップの一つでした。
Goldman Sachsで働いていた頃は、こうした日々の出来事を「仕事の一部」としか考えていなかったこともあります。
でも振り返ってみると、こうした経験から学んだことは、今でも自分が誰かと仕事をするときの考え方にかなり影響しています。
今後も、国際的なビジネス環境で実際に経験したことや、そこで出会った人たちから学んだことを少しずつ紹介していきたいと思います。