デザインを知ると、毎日が少しだけ豊かになるーー第18回 繰り返すことで美しくなる「古代ギリシャの文様」

デザインを知ると、毎日が少しだけ豊かになるーー第18回 繰り返すことで美しくなる「古代ギリシャの文様」

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第18回 繰り返すことで美しくなる「古代ギリシャの文様」

前回ご紹介したメソポタミアでは、植物の姿が整理され、パルメットのような文様へと変化していきました。

古代の人々が生み出した文様は、一つの地域だけにとどまりません。人や物の交流とともに別の土地へ伝わり、形を変えながら新しい装飾へと発展していきます。

その長い歴史の中で、後世の装飾に大きな影響を与えたのが、古代ギリシャの文様です。

陶器と建築に広がった装飾

古代ギリシャ文明の背景には、それ以前にエーゲ海周辺で発展した青銅器時代の文化がありました。

やがてギリシャでは、神殿などの建築や陶器を中心に、独特の装飾文化が発達していきます。

古代ギリシャの壺を見てみると、人物や神話の場面だけでなく、その周囲にさまざまな模様が描かれていることに気づきます。

直線、渦巻、植物、組紐のような形。それらが規則正しく繰り返され、器の縁や帯状の部分を飾っています。

ここで重要になるのが「繰り返し」です。

同じ形を繰り返すと「リズム」が生まれる

一つの模様だけを見れば、とても単純な形かもしれません。

しかし、その形を一定の間隔で並べてみると、そこに視覚的なリズムが生まれます。

これは音楽にも少し似ています。同じ音やリズムが繰り返されることで、全体にまとまりや心地よさが生まれるように、装飾も形を繰り返すことで秩序のある美しさをつくることができます。

現在のテキスタイルや壁紙、包装紙などに使われるパターンデザインにも、その考え方はそのまま生きています。

どこまでも伸びていく「唐草文」

ギリシャの植物装飾で重要なのが、つる草が連続して伸びていくような文様です。

植物の茎やつるが曲線を描きながらつながり、そこから葉や花が広がっていく。途中で途切れることなく、理論上はどこまでも繰り返すことができます。

こうした連続する植物文様は、その後さまざまな文化圏へ伝わり、長い時間をかけて多様な「唐草文」へと発展していきます。

日本でも「唐草模様」という言葉はよく知られています。

遠く離れた日本で身近な文様の背景をたどっていくと、古代の地中海世界へとつながっていく。世界の装飾を見る面白さの一つです。

葉っぱが建築を飾る「アカンサス」

古代ギリシャを代表する植物文様の一つに「アカンサス」があります。

アカンサスは、日本では葉あざみなどと呼ばれる植物です。大きく広がる葉を特徴的な形に整理し、装飾として用いました。

特によく知られているのが、コリント式の柱頭です。

柱の一番上を見ると、何枚もの葉が重なりながら外側へ広がっています。石でできた建築物の中に植物の生命感を取り込むことで、華やかな装飾が生まれました。

アカンサス文様はその後、ローマ建築やルネサンス、バロックなどにも受け継がれ、西洋装飾を代表するモチーフの一つとなっていきます。

花のように開く「アンテミオン」

花や葉が扇状に広がる「アンテミオン」も、ギリシャ装飾に見られる代表的な植物文様です。

忍冬(スイカズラ)などの植物に由来するともいわれ、花や葉をそのまま描くのではなく、左右対称で整った形へとデザインされています。

前回のパルメットともよく似た姿を持ち、植物を単純化し、規則的に並べるという古代装飾の特徴を見ることができます。

自然は不規則ですが、人間はそこから特徴を取り出し、対称性や繰り返しを加えることで「文様」に変えていったのです。

紐を組んだような「ギローシュ」

二本以上の帯や線が、互いに交差しながら連続していく文様が「ギローシュ」です。

日本語では「組紐文」とも呼ばれます。

線が上になったり下になったりしながら絡み合って見えるため、平面に描かれていても立体的な動きを感じることができます。

こうした「線を絡ませる」という発想も、その後さまざまな地域の装飾に現れます。

永遠に続きそうな「メアンダー」

古代ギリシャらしい幾何学文様として、特に有名なのが「メアンダー」です。「グリークキー」と呼ばれることもあります。

一本の線が直角に折れ曲がりながら、同じ形を繰り返していきます。

非常に単純な構造ですが、連続させることで強いリズムが生まれます。そして始まりと終わりが分からないほど繰り返される姿から、永続性などを連想させる文様としても捉えられてきました。

現在でも、ファッション、インテリア、アクセサリー、建築装飾などで目にすることがあります。

数千年前の模様が、ほとんど同じ形で現在も使われているのです。

自然と幾何学、二つの美しさ

古代ギリシャの装飾を見ていくと、大きく二つの方向があることに気づきます。

アカンサスやアンテミオン、つる草のように、自然の植物から生まれた曲線的な文様。

そして、メアンダーやギローシュのように、線や規則性から生まれる幾何学的な文様です。

自然の美しさと、人間がつくり出す秩序の美しさ。

この二つを組み合わせながら、古代ギリシャの人々は建築や陶器の表面に豊かなリズムを生み出していきました。

おわりに

一つの形をつくり、それを並べる。反転させる。つなげる。繰り返す。

これは現在のパターンデザインでも、ごく基本的な方法です。

古代ギリシャの文様を見ていると、私たちが現在「パターン」と呼んでいるデザインの基本が、すでにそこにあることに驚かされます。

そして文様は、国境や時代を越えて旅をします。

植物や一本の線から生まれた小さな模様が、何千年もの時間をかけて世界各地へ伝わり、別の文化と出会い、新しい装飾へと姿を変えていく。

世界の文様は、人類が長い時間をかけてつくり続けてきた「形の言語」と考えることもできるのです。

【参考資料】
図案や作品画像を含む、より詳しい参考資料については、私が別途まとめている記事でもご紹介しています。
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