退去が終わると、家主様のもとには原状回復の見積りや退去精算の内容が届きます。
「クロスを張り替えます」
「CFを張り替えます」
「クリーニングをします」
そんな項目を見て、
「これって、全部家主負担なの?」
と思ったことはありませんか?
私は不動産・建物管理の業界に24年携わり、現在も現役で賃貸管理の仕事をしています。
今回は、退去後の原状回復について、実際の現場ではどんなことを考えているのか、少しお話ししたいと思います。
■ 原状回復=「全部新品に戻す」ではありません
まず、原状回復と聞くと、
「入居前の新品の状態に戻すこと」
と思われる方もいるかもしれません。
でも、実際はそう単純なものではありません。
クロスやCFなどの退去精算については、国土交通省のガイドラインなどを参考にしながら、通常の使用による損耗なのか、入居者様の故意・過失などによるものなのかを確認していきます。
もちろん、賃貸借契約の内容や特約、実際の使用状況などによって判断は変わります。
そのため、
「クロスだから必ず入居者負担」
「汚れているから全部入居者負担」
というように、一概に決められるものではありません。
■ 例えば「タバコ」の場合
喫煙によってクロスにヤニ汚れや臭いが付いている場合があります。
このようなケースでは、入居者様にクロスの負担分をお願いすることもありますが、実際の退去精算では、状況に応じて「ヤニ落とし」という項目で計上することもあります。
もちろん、これも契約内容や汚れの程度などによって変わります。
大切なのは、単純に「タバコを吸っていたからクロス全部」という考え方ではなく、実際の状態を見て判断することだと思っています。
■ 入居者様から費用をいただいても、必ず全面張替えするとは限りません
ここは、家主様にはぜひ知っておいていただきたいところです。
例えばクロスやCFに傷があった場合。
傷の範囲が限定的であれば、全面的に張り替えるのではなく、リペアで対応できる場合があります。
クロスについては、状態によってクロス用の塗装・再生施工などを検討することもあります。
CFについても同じです。
「傷がある=新品に交換」ではありません
実際の傷の範囲や状態を見て、どの方法が適しているのかを考えます。
■ フローリングも「張替え」だけではありません
フローリングの場合、全面的な張替えとなると、工事費用が大きくなるケースがあります。
そのため、傷の範囲が限定的であればリペア。
状態によっては、CFを上貼りするという方法を検討することもあります。
もちろん、状態によっては張替えが必要なケースもあります。
ここでも大切なのは、
「何を交換するか」ではなく、「今の状態に対して、どんな方法が適切なのか」
ということです。
■ クロスやCFの交換時期は「見た目」だけでは判断しません
私が現場で見るときには、汚れや傷だけでなく、クロスやCFそのものの固さや劣化具合も判断材料にしています。
見た目だけでは分からない劣化もあります。
そのため、実際に状態を確認したうえで、
「リペアでいける」
「再生施工を検討できる」
「これは交換した方がいい」
と判断していきます。
■ ハウスクリーニング・エアコンクリーニングについて
ハウスクリーニングやエアコンクリーニングについては、賃貸借契約の特約として設定しているため、私が管理している物件では退去時に毎回実施しています。
こちらも、契約内容によって取り扱いは異なります。
「退去したから何となくクリーニングする」のではなく、契約時にどのような取り決めになっているのかを確認することが大切です。
■ 実は、原状回復は「工事」だけではありません
退去後の管理会社の仕事は、見積りを取って工事を発注するだけではありません。
入居者様の負担となる可能性がある費用については、保証会社との交渉を行うこともあります。
また、損傷の内容によっては、入居者様が加入している火災保険で補償の対象になる可能性がないかを確認・査定することもあります。
つまり、
「退去した → 見積りを取った → 工事した」
だけではなく、
契約内容や損傷状況を確認し、誰がどの部分を負担するのかを整理して、最終的な退去精算につなげていく。
これも原状回復の大切な仕事だと思っています。
■ 私が大切にしているのは「無駄な工事をしない」こと
家主様からすると、
「できるだけ費用を抑えてほしい」
と思われるのは当然だと思います。
私も無駄な工事はおすすめしません。
ただ、単純に「安くすること」だけを目的にしているわけではありません。
例えば、
リペアで対応できるならリペア。
再生施工で対応できるなら再生施工。
必要以上の交換はしない。
一方で、
次の入居者様に選ばれるために効果があるものについては、積極的にご提案します。
原状回復は、
「費用をかけるか、かけないか」ではなく、
「どこに費用をかけるべきか」
を考えることが大切だと思っています。
■ 家主様に一番お伝えしたいこと
退去したからといって、何でも新品にする必要があるわけではありません。
逆に、傷や汚れがあるからといって、何でも入居者様の負担になるわけでもありません。
契約内容、特約、ガイドライン、実際の損傷状況。
それらを一つ一つ確認したうえで、
「この部屋には、今どんな原状回復が必要なのか」
を考えることが大切です。
もし管理会社から退去後の原状回復見積りが届いて、
「この工事、本当に必要なの?」
「この金額って妥当なの?」
「入居者負担と家主負担、どう考えればいいの?」
と思われたら、ぜひお気軽にご相談ください。
私は現在も現役で賃貸管理の仕事をしています。
だからこそ分かる現場の事情も踏まえながら、家主様が納得して判断するための“第三者の目”として、一緒に見積りを確認できればと思っています。