趣味なのに、上達しなきゃいけませんか?

趣味なのに、上達しなきゃいけませんか?

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音声・音楽

上手くならなきゃダメですか?

趣味でギターを弾いている人に、ちょっと聞いてみたいことがあります。
「上手くならなきゃダメですか?」
もちろん、僕はギター講師なので、生徒さんには上達してほしいと思っています。昨日まで弾けなかったフレーズが弾けるようになったり、憧れていた曲を一曲通して演奏できるようになったり。そんな瞬間に立ち会えるのは、この仕事の大きな喜びの一つです。
でも、上達することだけがギターを弾く目的なのかと聞かれたら、ちょっと違う気もするんです。

初めてギターを持った日のこと

体験レッスンに、小学生のお子さんが来てくれることがあります。
初めて手にするギター。まだコードも知らないし、もちろん曲なんて弾けません。でも、そんなことはお構いなく、とにかく弦をジャーン!とかき鳴らして、出てきた音に目を輝かせるんです。
ドキドキとワクワクが入り混じった、あの何とも言えない表情。
僕は、あの瞬間を見るのが大好きです。
そこには「上手く弾こう」なんて気持ちはありません。ただ、ギターから音が出ることに驚き、自分の手で音楽を鳴らせることに喜ぶ、それだけなんです。
僕は、その気持ちをいつまでも忘れないでほしいなと思っています。

いつから「上手く弾かなきゃ」と思うんだろう

ところが、ある程度年齢を重ねると、少しずつ事情が変わってきます。
「下手だと思われたらカッコ悪いし」
「恥ずかしくない演奏をしなきゃ」
「こんな簡単な曲も弾けないなんて……」
そんな、ちょっとした「邪念」が入り込んでくるんです。
もちろん、向上心を持つことは素晴らしいことです。
「この道を極めたい」
「何がなんでもプロになりたい」
そんな目標があるなら、とことん追求するのもいいと思います。でも、趣味としてギターを楽しむのであれば、そこまで自分を追い込む必要があるのでしょうか?
上手くなりたいという気持ちが強くなりすぎて、肝心の「弾く楽しさ」が失われてしまう。それって、何だか本末転倒な気がするんです。

「上手く弾けなくてすみません」

レッスンをしていると、ときどき生徒さんからこんな言葉を聞くことがあります。
「先生、上手く弾けなくてすみません……」
僕は、この言葉を聞くたびに、ちょっと胸が痛くなります。だって、謝る必要なんてまったくないんですから。
弾けないところがあるからレッスンに来ているわけですし、最初から何でも弾けるなら、そもそもレッスンなんて必要ありません。
でも、それ以上に僕が考えてしまうのは、
「もしかして、僕がそう思わせてしまったのかも?」
ということです。
知らず知らずのうちに、できていないことばかりを指摘していなかっただろうか。生徒さんのペースを無視して、先へ進もうとしていなかっただろうか。何より、その人がギターを始めた理由や、目指していたゴールを見失っていなかっただろうか。
講師として、大いに反省すべき瞬間だと思っています。

レッスンは、訓練でもノルマでもない

もちろん、上達するためには練習が必要です。基礎練習のように、少し退屈なトレーニングをすることだってあります。でも、それはあくまでも、音楽を楽しむための手段です。
練習そのものが目的になってしまったり、決められた課題をクリアすることが義務になってしまったり。そんなレッスンにはしたくありません。
例えば、好きな曲のイントロだけを弾けるようになりたい人がいたっていい。難しいソロには挑戦せず、簡単なコードで弾き語りを楽しみたい人がいたっていい。毎日練習するわけではないけど、週末にギターを抱える時間が何より好き。
それだって、立派な音楽との付き合い方だと思います。
一人ひとり、ギターを弾く目的は違うんです。だったら、レッスンのゴールだって、一人ひとり違っていていいはずです。

上達は、楽しさの先にあってほしい

僕は、上達することと楽しむことは、決して対立するものではないと思っています。むしろ、少し弾けるようになると楽しくなって、もっと弾きたくなる。もっと弾きたくなるから、いつの間にか上達している。そんな関係が理想的だと思うんです。
「上手くなるために、楽しいことを我慢する」
のではなく、
「楽しいことをもっと楽しむために、少しずつ上手くなる」
この順番を大切にしたいんです。

生徒さんが教えてくれたこと

長くギターを教えていると、生徒さんの数だけ、音楽との付き合い方があることに気づかされます。
何時間も夢中になって練習する人。好きな曲を一曲弾けたら、それだけで満足そうな人。なかなか上達しなくても、毎週楽しそうにレッスンに来てくれる人。
どれが正解ということではありません。
大切なのは、その人がギターを弾いている時間を、心から楽しめているかどうか。そして講師である自分は、その楽しさを奪ってしまっていないか。いつもそれを自分に問いかけていたいと思っています。
思い出してみてください。
初めてギターを手にしたとき、きっと「上手くならなきゃ」なんて考えていなかったはずです。
ただ、音を鳴らしてみたかった。好きな曲を弾いてみたかった。ギターって、なんだかカッコいいなと思った。
そんな気持ちがあったんじゃないでしょうか。
上手くなるためにギターを弾くのもいいけど、ギターを弾くこと自体が楽しい。そんな気持ちを、いつまでも大切にしてほしいと思います。
そして自分自身も、初めてギターをかき鳴らした子どもたちの、あのキラキラした表情を忘れない講師でいたいと思っています。

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