研究概要で「自分の貢献」をどう書けばよいか
理系院生が研究概要を書くとき、意外と難しいのが「自分の貢献」の書き方です。
研究テーマそのものは説明できる。
研究の背景や実験方法も書ける。
結果もある程度は説明できる。
それでも、企業の技術面接で、
「その中で、あなた自身は何をしたのですか?」
と聞かれると、答えに詰まってしまうことがあります。
大学院の研究は、指導教員、先輩、共同研究先、研究室の過去の蓄積、既存装置、既存プログラムなど、いろいろな土台の上に成り立っています。
そのため、研究成果をそのまま書くだけでは、本人がどこを考え、どこを担当し、どこで工夫したのかが見えにくくなることがあります。
企業の技術面接では、研究テーマのすごさだけでなく、本人がどのように課題に向き合ったかも見られます。
この記事では、研究概要で「自分の貢献」をどう書けばよいかを考えてみます。
1. 「全部自分でやりました」と見せる必要はない
まず大切なのは、研究成果をすべて自分一人で出したように見せる必要はない、ということです。
大学院の研究では、研究室として長年続いているテーマを引き継ぐこともあります。
先輩が作った装置やプログラムを使うこともあります。
指導教員の方針や共同研究先の要望の中で研究が進むこともあります。
これは普通のことです。
企業側も、大学院生が完全にゼロから一人で研究を立ち上げているとは考えていません。
むしろ、無理に全部を自分の成果のように話すと、面接官から見ると少し不自然に見えることがあります。
大切なのは、
・研究全体はどのようなテーマだったのか
・その中で自分はどの部分を担当したのか
・自分で考えて変えた点はどこか
・結果に対して自分がどう解釈したのか
を正直に話せることです。
企業の開発現場でも、成果は一人だけで出るものではありません。
研究所、事業部、製造、品質、営業、顧客対応など、多くの人が関わります。
その中で、自分の役割を理解して動ける人は評価されやすいです。
2. 「担当した作業」だけでは弱いことがある
研究概要でよくあるのが、自分の貢献を「作業内容」だけで書いてしまうケースです。
例えば、
・試料作製を担当しました
・測定を行いました
・データ解析を行いました
・シミュレーションを担当しました
という書き方です。
もちろん、これは必要な情報です。
何を担当したのかは、はっきり書いた方がよいです。
ただし、これだけだと、面接官には「作業をした人」という印象で止まってしまうことがあります。
企業の技術面接で見られやすいのは、その作業の中で、
・なぜその条件にしたのか
・何を比較したのか
・どこに問題があったのか
・どう改善したのか
・結果をどう判断したのか
です。
例えば、
「試料作製を担当しました」
だけではなく、
「膜厚条件を変えた試料を作製し、測定結果から性能低下の原因を比較しました」
と書くと、本人が何を見ようとしていたのかが伝わります。
「データ解析を行いました」
だけではなく、
「測定データのばらつきを確認し、再現性の低い条件を除外したうえで、性能差が出る要因を検討しました」
と書くと、考え方が見えます。
作業内容に加えて、「何を考えてその作業をしたのか」まで書けると、研究概要の印象はかなり変わります。
3. 自分の貢献は「新しい発明」だけではない
「自分の貢献」と聞くと、大きな発明や新規提案がないと書けないと思う人もいます。
しかし、必ずしもそうではありません。
もちろん、自分で新しい手法を提案した、新しい構造を設計した、新しい測定系を立ち上げた、という場合は強い貢献になります。
ただ、企業の面接で評価される貢献は、それだけではありません。
例えば、次のようなものも十分に貢献です。
・実験条件を比較し、最適条件を見つけた
・再現しない原因を切り分けた
・測定方法を見直してデータの信頼性を上げた
・先行研究では不明だった点を確認した
・解析方法を変更して傾向を見えるようにした
・装置やプログラムの使い方を改善した
・研究結果を専門外の人にも説明できる形にした
・研究室内の既存テーマに対して、自分なりの仮説を立てた
企業の研究開発では、こうした地道な工夫がかなり重要です。
製品化や技術開発に近づくほど、「大きなアイデア」だけでなく、再現性、安定性、条件出し、評価方法、使える範囲の見極めが大切になります。
一度良い結果が出ることよりも、なぜその結果が出たのか、他の条件でも使えるのか、どこが限界なのかを考えられることが重要になる場面も多くあります。
その意味で、自分の貢献は「新しい発明」だけではありません。
研究を前に進めるために、自分が考え、試し、判断した部分が貢献になります。
4. 研究室の成果と自分の成果を分けて書
研究概要では、研究室全体の成果と、自分の担当範囲を分けて書くと伝わりやすくなります。
例えば、次のような書き方です。
「本研究室では、〇〇材料を用いた高感度センサの研究を行っています。私はその中で、△△条件が感度に与える影響を調べるため、試料作製と測定条件の比較を担当しました。」
この書き方なら、研究室全体のテーマと、自分の担当範囲が分かれています。
また、
「先行研究では〇〇までは確認されていましたが、△△条件での再現性には課題が残っていました。私は、測定条件と作製条件を見直し、結果のばらつきが小さくなる条件を検討しました。」
のように書くと、自分がどこに入ったのかが見えます。
企業側が知りたいのは、研究室の大きな看板だけではありません。
その研究の中で、本人がどの部分を理解し、どの部分を前に進めたのかです。
5. 「工夫した点」は具体的に書く
研究概要で「工夫しました」とだけ書いても、あまり伝わりません。
面接官が知りたいのは、どのように工夫したのかです。
例えば、
「測定条件を工夫しました」
ではなく、
「信号が不安定だったため、測定温度と積算回数を変えながら比較し、再現性の高い条件を選びました」
の方が具体的です。
「解析方法を工夫しました」
ではなく、
「単純な平均値だけでは傾向が見えにくかったため、条件ごとのばらつきも確認し、外れ値の影響を考慮して評価しました」
の方が、本人の考え方が伝わります。
「実験を改善しました」
ではなく、
「作製条件を一つずつ変え、性能が低下する条件を切り分けました」
の方が、開発現場に近い印象になります。
企業の技術者は、「何をしたか」だけでなく、「どう考えて手を打ったか」を見ています。
ここを具体的に書けると、自分の貢献が見えやすくなります。
6. 失敗やうまくいかなかった経験も、書き方次第で強みになる
研究概要では、良い結果だけを書きたくなるものです。
しかし、技術面接では、うまくいかなかった時にどう考えたかもよく見られます。
企業の開発では、最初からうまくいくことの方が少ないです。
測定が安定しない。
期待した性能が出ない。
条件を変えると結果が崩れる。
原因が一つに決まらない。
装置や試料の状態に左右される。
こうした状況で、何を疑い、どこから確認したのかは、技術者としてかなり大事です。
例えば、
「当初は期待した性能が得られませんでしたが、測定条件と試料作製条件を分けて確認し、ばらつきの主因が作製条件にあると考えました。そのため、〇〇条件を見直し、再現性の改善を試みました。」
のように書くと、失敗が単なる失敗ではなく、課題に向き合った経験になります。
もちろん、失敗談を長く書く必要はありません。
ただ、うまくいかなかった時に何を考えたかが少し見えるだけで、研究概要の説得力は上がります。
7. 「自分の貢献」は面接で聞かれる前提で書く
研究概要に書いた内容は、面接で質問される可能性があります。
そのため、自分の貢献として書いた部分は、必ず自分の言葉で説明できるようにしておく必要があります。
例えば、
・なぜその条件を選んだのか
・他の方法は考えなかったのか
・どこが一番難しかったのか
・自分で判断した部分はどこか
・指導教員や先輩の助言を受けた部分はどこか
・次にやるなら何を改善するか
といった質問はよくあります。
ここで答えられないと、「本当に本人が考えて進めたのか」が見えにくくなります。
逆に、完璧な成果でなくても、
「ここまでは自分で考えました」
「ここは指導を受けて進めました」
「この結果から、次はこういう条件を確認すべきだと考えました」
と言えると、かなり印象は良くなります。
企業側は、完成された研究者を採用しようとしているわけではありません。
入社後に技術課題に向き合い、学びながら前に進める人かどうかを見ています。
8. 書き方の例
自分の貢献を書くときは、次のような形にすると伝わりやすくなります。
例1:
「私は、〇〇の性能低下の原因を調べるため、△△条件を変えた試料を作製し、測定結果を比較しました。その結果、□□条件で性能が大きく変化することを確認し、改善に向けた条件検討を行いました。」
例2:
「研究室では〇〇材料の応用を目指した研究を行っています。私はその中で、測定データのばらつきに着目し、測定条件と試料作製条件を分けて確認しました。これにより、再現性を下げている要因の一部を明らかにしました。」
例3:
「先行研究では〇〇の効果が報告されていましたが、実用条件に近い△△条件での評価は十分ではありませんでした。私は、△△条件での測定系を構築し、結果の傾向と課題を確認しました。」
例4:
「私は、得られた結果をもとに、従来手法との差分を考察しました。特に、性能値だけでなく、再現性や測定条件への依存性も確認し、今後の改善点を検討しました。」
このように、
・目的
・自分の担当
・工夫した点
・結果
・考察
がつながると、自分の貢献が伝わりやすくなります。
9. まとめ
研究概要で「自分の貢献」を書くときに大切なのは、研究室全体の成果と、自分が考えて動いた部分を分けて伝えることです。
すべてを自分一人で行ったように見せる必要はありません。
むしろ、研究全体の中で自分がどこを担当し、どこで工夫し、何を考えたのかを正直に書く方が、企業の面接官には伝わります。
企業の技術面接では、
・担当した作業
・自分で考えた条件
・工夫した点
・うまくいかなかった時の対応
・結果の解釈
・次に改善すべき点
が見られます。
特に、物理・工学・電気電子・材料・半導体・光学・計測・デバイス・応用物理系の研究では、研究内容が専門的になりやすいため、自分の貢献が埋もれてしまうことがあります。
研究として正しいだけでなく、会社側に伝わる形で「自分は何を考え、何を前に進めたのか」を書けると、技術面接でも話しやすくなります。
本サービスでは、企業研究開発に約20年携わり、基礎研究だけでなく、事業部での開発、製品化、顧客向けの技術説明にも関わってきた旧帝大博士号取得者が、専門監修者として研究概要・ES・技術面接用の説明文を確認します。
研究室の成果と自分の貢献が分かれて見えるか、企業の技術職・開発職の面接で説明しやすい内容になっているか、という点も重視しています。
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