理系院生の研究概要が企業の面接官に伝わりにくくなる理由

記事
学び
理系院生の研究概要は、研究室の中では十分に伝わっていても、企業の技術面接では伝わりにくくなることがあります。
それは、研究内容が悪いからではありません。
多くの場合、研究室での説明と、企業の面接官が知りたいことの間に、少しズレがあります。
研究室では、専門性、新規性、実験条件、結果の妥当性などが重視されます。
一方、企業の技術面接では、それに加えて、
・なぜその課題に取り組んだのか
・本人がどこを考え、どこを担当したのか
・結果をどう解釈したのか
・うまくいかなかった時にどう対応したのか
・会社の仕事にどうつながる可能性があるのか
も見られます。
研究として価値があることと、企業の面接官に伝わることは、同じではありません。
この記事では、理系院生の研究概要が企業の面接官に伝わりにくくなる理由を見ていきます。


 1. 研究室では伝わる説明が、企業では伝わらないことがある


研究室の中では、前提知識を共有している人が多くいます。
同じ分野の先生、先輩、同期であれば、専門用語や研究背景をすべて説明しなくても、ある程度伝わります。
しかし、企業の面接では状況が違います。
まず、面接官が同じ専門分野とは限りません。
物理系の学生に対して、電気電子系や機械系の技術者が面接することもあります。
材料、半導体、光学、計測、デバイス、化学、情報など、隣接分野の面接官が聞く場合もあります。
研究室では自然に通じていた説明が、会社側には伝わりにくくなるのは、このためです。
大切なのは、研究のレベルを下げることではありません。
相手が最初に理解できる入口を作ることです。
最初に全体像を渡してから専門的な話に入るだけで、聞いている側の理解はかなり変わります。


 2. 専門用語が多く、全体像が見えない


研究概要でよくあるのが、専門用語が多くなりすぎて、全体像が見えにくくなることです。
専門用語を使うこと自体は問題ありません。
理系の研究概要である以上、必要な専門用語はあります。
ただし、最初から細かい材料名、測定条件、装置名、解析手法が続くと、面接官は、
「結局、何を明らかにした研究なのか」
「何の課題を解こうとしているのか」
をつかみにくくなります。
例えば、最初に細かい条件から入るよりも、
「この研究は、〇〇の性能向上を目的として、△△という方法を検討したものです」
のように、まず全体像を示した方が伝わります。
企業の技術者は、細部だけでなく、課題設定と考え方も見ています。
細かい技術の説明は、その後で十分です。


 3. 背景・目的よりも、手法や結果から話してしまう


研究をしている本人にとって、実験方法や解析結果は一番説明しやすい部分です。
そのため、研究概要がいきなり手法や結果から始まってしまうことがあります。
しかし、企業の面接官が最初に知りたいのは、
「なぜその研究が必要だったのか」
「どんな課題を解こうとしたのか」
「その課題に対して、なぜその方法を選んだのか」
です。
背景と目的が分からないまま手法や結果を聞いても、その研究の意味が伝わりにくくなります。
研究概要では、

背景
目的
方法
結果
考察
自分の貢献

という流れが見えると、専門が少し違う面接官でも話を追いやすくなります。
企業の研究開発でも、いきなり手段から入るのではなく、「何の課題を解くための技術なのか」が常に問われます。
就活用の研究概要でも、この順番はかなり大事です。


 4. 自分の貢献が見えにくい


企業の技術面接では、研究テーマそのものだけでなく、本人がどこまで関わったのかもかなり見られます。
大学院の研究は、指導教員、先輩、共同研究先、研究室の過去の蓄積の上に成り立っています。
そのため、すべてを自分一人で行ったように見せる必要はありません。
むしろ、担当範囲を正直に話した方が信頼されやすいです。
例えば、
・自分が担当した実験
・自分で工夫した条件
・自分で行った解析
・うまくいかなかった時に見直した点
・自分の工夫で結果が改善した経験
・指導を受けながら進めた部分
・チーム内での役割
を明確にすると、面接官は本人の実力を判断しやすくなります。
企業の開発現場でも、成果は一人だけで出るものではありません。
研究所、事業部、製造、品質、顧客対応など、多くの人が関わります。
だからこそ、面接では「全部自分でやりました」よりも、
「全体の中で自分はここを担当し、ここを考え、ここを改善しました」
と言える方が自然です。
「研究室としての成果」だけでなく、「自分が何を考え、何を動かしたのか」を説明できることが重要です。


 5. 良い結果だけを書いて、考え方や失敗時の対応が見えない


研究概要では、つい良い結果や成功した部分を中心に書きたくなります。
もちろん、成果を分かりやすく示すことは大切です。
しかし会社側は、成功結果だけを見ているわけではありません。
企業の研究開発や技術職では、最初からうまくいくことばかりではありません。
実験が再現しない、条件を変えると結果が変わる、想定と違うデータが出る、原因が分からない、ということはよくあります。
製品化に近づくほど、この傾向はさらに強くなります。
一度だけ良い性能が出ることと、安定して使える技術になることは別です。
そのため、面接官は、
・うまくいかなかった時に何を考えたか
・どのように原因を切り分けたか
・条件をどう見直したか
・次に何を試したか
・結果をどう解釈したか
も見ています。
研究概要に失敗談を長く書く必要はありません。
ただ、考え方や工夫が見えるようにしておくと、技術者としての伸びしろが伝わります。
「良い結果が出ました」だけでなく、「なぜそうなったと考えたのか」「再現しなかった時にどう見たのか」まで話せると、かなり印象が変わります。
企業の開発現場では、「一度できた」よりも、「なぜできたのかを説明できるか」「条件が変わった時にどこを疑うか」の方が重要になる場面があります。


 6. 会社の仕事との接続が弱い


企業の面接では、研究テーマと応募先の仕事がどうつながるかも見られます。
ただし、研究テーマと会社の事業が完全に一致している必要はありません。
むしろ、完全に同じテーマを扱っている学生の方が少ない場合も多々あります。
大切なのは、自分の研究経験をどう会社の仕事に接続して説明できるかです。
例えば、
・実験計画を立てた経験
・測定や解析を通して原因を切り分けた経験
・材料やデバイス、装置、シミュレーションを扱った経験
・専門外の人に技術内容を説明した経験
・長期テーマに粘り強く取り組んだ経験
は、分野が少し変わっても企業の研究開発や技術職で活きる可能性があります。
「私の研究は御社の事業と同じです」と無理に言う必要はありません。
それよりも、
「研究で培った〇〇の経験は、御社の□□の業務で活かせると考えています」
のように、自分の経験と会社の仕事を自然につなげる方が伝わります。
企業側は、研究テーマそのものだけでなく、課題に向き合う姿勢や考え方が、入社後の仕事に活きるかを見ています。


 7. 実用化・製品化を大げさに言いすぎる、または全く触れない


理系院生の研究概要では、実用化や製品化へ向けた扱いも難しいポイントです。
企業向けだからといって、研究成果を大げさに「すぐに実用化できる研究です」と言う必要はありません。
一方で、「基礎研究なので企業とは関係ありません」と切ってしまうのも、少しもったいないです。
基礎研究では、現象の理解、新規性、学術的な意味が重視されます。
一方、企業の研究開発や製品化では、それに加えて、
・再現性
・安定性
・コスト
・量産性
・使いやすさ
・顧客や現場での価値
・既存技術との差
・特許やノウハウとして守るべき点
なども重要になります。
大学や研究室では、成果を学会発表や論文として発表することが大きな目標になる場合が多いかと思います。
しかし企業では、業種や部署にもよりますが、特に事業部や製品開発に近い領域では、成果を論文として外部に公開することは多くありません。
電気電子、半導体、デバイス、計測、装置開発などの分野では、技術の中身をそのまま公開することが情報流出につながる場合があります。そのため、他社との差になる部分は、論文ではなく、特許やノウハウとして守ることが重視されます。
そのため、技術面接では「論文や学会発表につながったかどうか」だけでなく、
・どこに技術的な新しさがあるのか
・従来技術と何が違うのか
・他の条件でも使える考え方なのか
・実用化する場合にどこが課題になるのか
・守るべき技術要素がどこにありそうか
を説明できると、会社側には伝わりやすくなります。
就活用の研究概要では、自分の研究が今どの段階にあるのかを冷静に説明することが大切です。
「すぐ製品になります」と言い切る必要はありません。
むしろ、
「現段階では基礎的な検討ですが、将来的には〇〇の改善や△△の評価に関係する可能性があります」
のように、研究段階を正しく示した方が誠実に見えます。
企業側は、研究成果そのものだけでなく、実用化との距離感や、技術としてどこに価値があるのかを冷静に考えられるかも見ています。
研究として新しいことと、製品や技術として使えることは、重なる部分もありますが同じではありません。性能値だけでなく、再現性、ばらつき、使える条件、守るべき技術要素まで考えられると、企業側にはかなり伝わり方が変わります。


 8. まとめ


理系院生の研究概要が企業の面接官に伝わりにくくなる理由は、研究内容が悪いからとは限りません。
多くの場合、
・研究室内の前提で説明している
・専門用語が多く、全体像が見えにくい
・背景や目的よりも、手法や結果から話している
・自分の貢献が見えにくい
・成功結果だけで、考え方や工夫が見えない
・会社の仕事との接続が弱い
・実用化、製品化、特許やノウハウとの距離感が考慮されていない
ことが原因になります。
研究概要は、研究室の中で正しいだけでなく、企業の面接官に伝わる形に直す必要があります。
特に、物理・工学・電気電子・材料・半導体・光学・計測・デバイス・応用物理系の研究では、専門性が高い分、最初の説明設計がとても重要になります。

本サービスでは、企業研究開発に約20年携わり、基礎研究だけでなく、事業部での開発、製品化、顧客向けの技術説明にも関わってきた旧帝大博士号取得者が、専門監修者として研究概要・ES・技術面接用の説明文を確認します。
研究としての正確さだけでなく、会社側に伝わるか、技術職・開発職の面接で説明しやすいか、という点を重視しています。

研究概要・ES・技術面接用の説明文について、「会社側に伝わる形になっているか」を確認したい方は、サービスページからご相談ください。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら