打つ画面を作ったあと、必ず一度立ち止まるところがあります。これをどうやって渡すか、です。
前に、ある自治体の業務で使われている積算シートを、打つ画面にしたことがあります。動くものができて、計算も元のシートと合っている。そこまでは良かったのですが、では実際にどうやって相手の手元に届けるのか、というところで手が止まりました。
渡し方は、大きく3つあります。
一つめは、ファイルをそのまま渡す方法です。ひとつのファイルにまとめて送る。相手はそれを開くだけで使えます。インターネットにつながっていなくても動きます。一番手軽で、一番早い。
ただしこれは、渡した瞬間にこちらの手を離れます。コピーされても分かりません。中を書き換えられても分かりません。合言葉をかけることはできますが、本気で中を見ようとする人には通用しません。抑止にはなる、という程度のものです。
二つめは、URLにする方法です。ネット上に置いて、リンクを送る。相手はそのリンクを開くだけです。
良いところは、こちらの手元に残ることです。直したいところが出てきたら、こちらで直せば、次に開いた人には直った版が出ます。配り直す必要がありません。
弱点は、リンクを知っている人なら誰でも開けることです。中の作りも、その気になればブラウザから覗けます。
三つめは、計算そのものを向こう側でやる方法です。打った数字だけを送って、答えだけが返ってくる。計算の中身は相手の手元に降りてきません。
ここまでやると、鍵をかけられます。この人にはこのコード、と決めて配って、ひとつのコードは1台でしか使えないようにする。外に漏れたら、そのコードだけ止められます。
意外に思われるかもしれませんが、費用はどれを選んでも、この規模ならほとんどかかりません。置き場所は無料の枠で足ります。増えるのはお金ではなく、手間のほうです。
では何で選ぶのか。
守りを固くするほど、渡された人は面倒になります。鍵をかければ、使う前に一手間が増える。向こう側で計算すれば、ネットにつながらない場所では使えない。守ることと使いやすさは、たいてい反対を向いています。
だから先に決めることがあります。何を守りたいのか、です。
中の作りを見られたくないのか。使う人数を絞りたいのか。それとも、売りものだから勝手に配られると困るのか。目的が違えば、選ぶ段も変わります。
そして、実際に困るのは、たいていそのどれでもありませんでした。
古い版が残ることです。
ファイルで配ると、相手の手元にその日の版が残ります。あとで計算を一か所直しても、配り直さないかぎり、古い版はそのまま使われ続けます。しかも困ったことに、古い版もちゃんと動きます。動いてしまうので、誰も気づきません。
二人が同じ表を開いて、違う答えが出る。どちらが正しいのか分からない。この状態が一番まずいと思っています。
前に、答えが変わらないことが信用の一番下の段だ、と書きました。渡し方の話も、結局そこにつながります。せっかく答えを合わせたのに、版が分かれてしまえば、答えはまた二つになります。
だから、迷ったらURLにする方をおすすめしています。手元に残るぶん直せる。直せるということは、全員がいつも同じものを見ているということです。
ネットにつながらない場所で使うなら、ファイルで渡すしかありません。それはそれで正しい選び方です。ただそのときは、版の番号を画面のどこかに出しておく。それだけで、これは古いかもしれない、と気づけるようになります。
渡し方は、作ったあとのおまけの話に見えます。でも実際には、そのものが何年使えるかを決めているのは、たいていこちらのほうです。