今回は、政府系金融機関の管理職(決裁者)としてまさに渦中に立ち、現場を指揮してきたからこそ語る、非常にデリケートなテーマに切り込みます。
テーマは、「コロナ融資制度の功罪」です。
最初に申し上げておきますが、立場上、公に「言える範囲」でのお話になります(言えない裏事情はたくさんあります)。しかし、今まさに返済に苦しんでいる経営者の方、そして中小企業を支える士業・コンサルタントの方にとって、今後の生き残りを左右する極めて重要な「本質」をまとめました。
1. コロナ融資の「功」:国と中小企業を救った絶対的な防波堤
まずは、この未曾有の制度がもたらした「功(功績)」の側面。
ネットやメディアでは批判ばかりが目立ちますが、現場にいた人間として、この制度が果たした役割は計り知れないほど大きいと断言できます。
国や国民の経済的破綻・パニックを未然に防いだ あの未曾有の事態において、もし国が動かず、金融機関が通常通りの審査を続けていたら、連鎖倒産による経済のパニックは免れませんでした。
中小事業者の倒産窮地を広く救った 売上が急に「ゼロ」になった事業者に対して、迅速に大量のキャッシュを流し込むことで、何万、何十万という企業の命を繋ぎ止めました。
災害対応として国が率先し最悪を逃れた これは経済の「災害」でした。国が超法規的なスピードでセーフティネットを構築し、最悪のシナリオ(大量倒産)を回避したことは、間違いなく正義でした。
2. コロナ融資の「罪」:市場の歪みと、目を背けられない4つの現実
しかし、光が強ければ影も深くなります。この未曾有の大量資金供給は、現在の経済に深刻な「罪(副作用)」を遺しました。現場で私が最も危機感を抱いていたのは、以下の4つの現実です。
中小事業者の「甘え」を生んでしまった 「困ったらまた国が助けてくれる」「融資は簡単におりるものだ」という経営者の経営感覚のマヒ(モラルハザード)を引き起こしました。
淘汰されるべき事業者の存続 コロナ禍前からビジネスモデルが破綻しており、本来であれば市場の原理で淘汰されるべきだった企業まで、無条件の融資によって生きながらえてしまいました。
大量の不良債権の発生 返済原資(本業の利益)を作る見込みがないまま膨らんだ負債は、案の定、国や金融機関の「巨大な不良債権」となって重くのしかかっています。
不良債権になっていない計り知れない「予備軍」の待機 「毎月数万円ずつの返済、または度重なるリスケ(条件変更)で、まだ倒産していないだけ」という、いつ破裂してもおかしくない実質破綻状態企業が、水面下に大量に潜んでいます。
3. 今後の予測:通常5年で始まる「検証と非難」の恒例行事
なぜ、私が今になってわざわざこの「功罪」を語るのか。それは、過去の歴史が証明する「サイクル」が関係しています。
一般的に、国の大規模な緊急経済対策や金融支援は、問題が沈静化しておおむね「5年」程度が経過したタイミングで、徹底的な検証と非難を浴びるのが恒例です。
「あの乱発された融資は正しかったのか」 「国民の税金を原資とした不良債権の山をどう責任とるのか」
世論やメディア、そして国会がこの不良債権問題に一斉にスポットライトを当てる時期が、ここ1〜2年で確実にやってきます。
4. 結論:だからこそ、あと2年で「出口戦略」が必要である
この「検証と非難」のフェーズに入ると、金融機関の現場の空気は一変します。
これまでは政策的な配慮から、半ば自動的に許容され続けてきた「繰り返しのリスケ(返済猶予・条件変更)」が、世間の目や監査の厳格化によって、実質的にできなくなる(認められなくなる)ことが容易に想定されます。
つまり、経営者が「これまで通り適当にリスケを繰り返して引き延ばせばいい」と考えているなら、それはあまりにも致命的な見通しの甘さです。
猶予は、想定で長くてここ2年。 このタイムリミットが来る前に、自社のビジネスモデルを根本から見直すか、あるいは傷口を広げない形で綺麗に幕を引くかという【出口戦略】を、今すぐ真剣になって構築しなければなりません。
専門家のみなさんの顧問先も放置しているとなくなります!
「うちはいつまでリスケが通るだろうか」「次の更新で断られたら終わりだ」と不安を抱えている経営者の方。手遅れになって銀行から冷徹な決断を下される前に、まずは数千の決裁に関わってきたプロの目で、御社の「本当の生存確率」を診断させてください。時間が味方をしてくれるうちに、最善の逃げ道、あるいは再生の道を一緒に作りましょう。