縁側に朝顔がまだ細々と咲いていて、その足元でもう鈴虫が鳴きはじめているのよ。
蝉の声と虫の音が混じり合う、この時季ならではの夕暮れね。
黒猫の縁(えん)が、ぴこんと耳を立てて、どこかの音を聞いているわ。
先週お約束したとおり、水曜の夜のお便り、今日から本編よ。
今日はね、数字の「1」【一番槍(いちばんやり)】のお話をしましょうか。生年月日から出したご自分の数が「1」だった方は、どうぞお茶でも淹れて、ゆっくり読んでちょうだいね。
◆ 【一番槍】は、こんな人
「1」を持って生まれた方はね、誰よりも先に、一歩を踏み出せる方が多いのよ。
列の先頭に立つのが怖くない。
むしろ、先頭がいちばん落ち着く、というふうにできていらっしゃるの。
たとえばね、会議で「どう思う?」と場が静まったとき、真っ先に口を開くのが「1」の方。
「みんなどう思ってるかしら」と様子を見るより先に、「私はこう思うわ」と声が出てしまう。
それが場の空気を、ふっと動かすのよ。
お買い物でも、そうね。
新しいお店ができたと聞けば、まっさきにのぞきに行きたくなる。
友だちの中で「ねえ、あそこ行った?」と最初に報告するのが、たいてい「1」の方なのよ。
家庭でもね、旅行の計画やお引っ越しの下調べ、「じゃあ私がやるわ」と手を挙げるのが「1」の方だったりするの。
誰かに頼まれる前に、自分から動いてしまうんだもの。
それはね、目立ちたがりだからではないのよ。
「誰かがやらなきゃ、はじまらない」という感覚を、生まれつき持っていらっしゃるの。
その一歩があるから、まわりの人も安心して二歩目を出せるのよ。
あなたの背中は、知らず知らずのうちに、誰かの道しるべになっているんだもの。
◆ ときどき、こんなことでつまずくの
その「先へ、先へ」というお気持ちがね、少しだけ強く出すぎる日があるものなのよ。
まわりがまだ迷っているときに、先に決めて動きたくなる。
相手が話し終わる前に、答えを返してしまう。
「早く決めましょうよ」と言いたくなって、そわそわしてしまう。
……身に覚えがあるかしら。
それからね、「私が動かないと、この人たち動かないんじゃないかしら」と、いつの間にか全部を背負ってしまうこともあるのよ。
頼まれてもいないのに、先回りしてやってしまう。
そうして疲れて、「なんで私ばっかり」と、ふっと寂しくなる。
でもね、それは、あなたが冷たいからでも、せっかちだからでもないの。
ただ、「先へ行ける力」が強いというだけのことなのよ。
強い風は、静かな帆にはちょっと余ってしまう。
それだけのことだもの。責めなくていいのよ。
◆ 【一番槍】のあなたへ、お守りをひとつ
今日から、ひとつだけ試してごらんなさいな。
誰かに何かを聞かれたとき、答える前に、ひと呼吸だけ置くの。
「そうねぇ」って、湯呑みをそっと口に運ぶくらいの、ほんの一拍。
それから答えるのよ。
たったこれだけ。でもね、これが効くのよ。
その一拍のあいだに、相手の方がもう半歩、自分で進んでくれることがあるの。
あなたが引っ張らなくても、その方はその方のペースで歩けるようになるのよ。
「1」の方の先陣を切る力はね、いつでも抜き身にしておかなくていいの。
鞘にしまっておいて、ここぞというときに抜けばいいんだもの。
三日坊主でいいのよ。
忘れた日は忘れたままで、思い出した日にまたやってごらんなさいな。
◆ こんな季節、こんなとき
夏の終わりの、この妙にそわそわする時季はね、「1」の方には少し危ないの。
「今年もあと少し、何か始めなきゃ」と、勢いで新しい約束を増やしてしまいがちなのよ。
夕方の風が変わりはじめる今は、始めるより、いったん見渡す季節。
縁側にお茶を持ち出して、クリームあんみつでも横に置いて、「あら、今年はここまで来たのね」と、ひとりで小さく数えてごらん。
次の一歩は、そのあとでいいのよ。
◆ 次のお話
来週の水曜の夜はね、数字の「2」【二人連れ(ふたりづれ)】のお話よ。
ひとりで駆けるより、誰かと歩幅を合わせて歩くことに、生まれつき心の落ち着きを覚える方たちのお話。
「1」とはずいぶん違う風合いだから、比べて読むと、またおもしろいわよ。
◆ 12の数字の物語・目次
順番に読まなくてもいいのよ。
ご自分の数の回だけ、のぞいてくれてもいいわ。
1 【一番槍(いちばんやり)】(この記事)
2 【二人連れ(ふたりづれ)】来週
3 【三日月笑い(みかづきわらい)】近日
4 【四方固め(しほうがため)】近日
5 【五街道(ごかいどう)】近日
6 【六花むすび(りっかむすび)】近日
7 【七色の井戸(なないろのいど)】近日
8 【八方繁盛(はっぽうはんじょう)】近日
9 【九重の実り(ここのえのみのり)】近日
11 【宵の明星(よいのみょうじょう)】近日
22 【礎(いしずえ)】近日
33 【慈雨の手(じうのて)】近日
ご自分の数の出し方はこちらにまとめてあるから、まだの方はのぞいてみてちょうだいね。
◆ 縁側からのお知らせ
あなたが生まれ持った数と、今日引いた一枚。
このふたつが重なると、また違うものが見えてくるものなのよ。
・全体運鑑定▼
お申し込みのときに生年月日をお知らせいただけたら、持って生まれた星回りのことも、あわせてお手紙に添えられるわ。
お手紙の形でお届けしますから、その場で急かされることはないの。
おかげさまで、これまでいただいたご感想はどれも★5の評価をちょうだいしているのよ。
それからね、いずれ、数のことをじっくり見るご鑑定も、支度をしているところなの。
整ったら、またこの縁側でお知らせするわね。
◆ おことわり
このお便りはね、あくまで読み物として書いているものよ。
お体のことや、法律や金銭にまつわる大事なご判断は、それぞれのお医者様や専門の方にちゃんと相談してちょうだいね。
私からのお話は、その隣に置いておく湯呑みくらいの位置にいさせてくださいな。
あなたの一週間が、やわらかくほどけていきますように。
東雲みのり