家づくりを始めると、SNSを見る機会がぐっと増えると思います。
Instagram、Pinterest、YouTube、Threads——開けば、素敵な家がいくらでも出てきます。おしゃれな間取り、便利そうな設備、真似したくなる工夫。見ているだけで、夢がふくらみますよね。
私自身も、参考になる投稿はたくさんあると思っています。25年この仕事をしていても、「なるほど、こういう見せ方があるのか」と刺激を受けることは少なくありません。SNSは、家づくりの心強い味方です。
ただ——ひとつだけ、気をつけてほしいことがあります。
それは、人気の間取りが、自分に合うとは限らないということです。
今日は、SNSで人気の間取りを例にしながら、「真似する」のではなく「活用する」コツをお話しします。
なぜ、SNSの間取りは人気になるのか
そもそも、なぜ特定の間取りがSNSでバズるのでしょうか。
理由を考えてみると、見えてくるものがあります。SNSで人気になる間取りには、共通点があるのです。
• 写真映えする(ぱっと見て美しい)
• 仕組みが分かりやすい(ひと目で便利さが伝わる)
• 見た瞬間に「便利そう」と感じる
こうした間取りは、保存もシェアもされやすい。だから、どんどん広まっていきます。
これは、悪いことではありません。分かりやすく便利そうな工夫が共有されるのは、とても良いことです。
ただ、ここに落とし穴があります。写真や短い動画では、「住みやすさ」までは分からないのです。映える瞬間は切り取れても、毎日の暮らしやすさは、そこには写りません。
では、具体的に人気の間取りを、メリットと注意点の両面から見ていきましょう。
回遊動線——便利。でも「必要かどうか」が肝心
ぐるぐると回れて、行き止まりがない回遊動線。最近とても人気です。
メリットは、確かにあります。家事をしながら最短距離で動けたり、家族の渋滞を避けられたり。朝の忙しい時間に、人とすれ違わずに動けるのは魅力です。
注意したいのは、回遊動線を作るために、通路(廊下)が増えがちなこと。通路が増えれば、その分だけ収納や部屋に使える面積が減ります。さらに、ぐるりと回れるようにすると壁が少なくなり、家具を置く場所に困ることもあります。
回遊動線は、良い悪いではありません。自分の暮らしに必要かどうかです。「便利そうだから」ではなく、「我が家の朝の動きに、これは効くか?」と考えてみてください。
ファミリークローゼット——人気。でも「将来」も想像して
洗濯動線との相性がよく、片付けもしやすいファミリークローゼット。これも大人気です。
メリットは、家族の衣類を一か所にまとめられること。洗濯物を各部屋に運ぶ手間が省け、家事がぐっとラクになります。
注意したいのは、「家族全員が、同じ場所で着替え続けるのか?」という点です。小さなお子さんがいるうちは便利でも、成長すれば「自分の部屋で着替えたい」となることもあります。家族の形は、時間とともに変わっていくもの。今だけでなく、5年後、10年後の使い方も想像しておきたいところです。
ランドリールーム——定番。でも「前後の動線」とセットで
今や定番のランドリールーム。憧れる方も多い空間です。
メリットは、洗う・干す・たたむを一か所で完結できること。天候や時間を気にせず洗濯できるのも、共働き世帯には大きな利点です。
注意したいのは、ランドリールームがあるだけでは、家事はラクにならないということ。大切なのは、その前後です。服をしまう収納との距離、ファミリークローゼットとの位置関係、家族の生活動線。ここまで考えて配置して、初めて効果を発揮します。立派な部屋を作ることより、「洗濯の流れ全体」で見る視点が欠かせません。
吹き抜け——開放的。でも「床面積」を使っている
開放感があり、光も取り込める吹き抜け。憧れの的です。
メリットは、空間の広がりと明るさ。とくに、周りを囲まれた土地では、上から光を取り込めるのは大きな強みになります。
注意したいのは、吹き抜けは「空間を生み出している」のではなく、2階の床面積を使っているということ。そこには本来、収納や部屋を作れたかもしれません。つまり、何かを得る代わりに、何かを手放しているのです。だからこそ、「吹き抜けと引き換えに、何を優先するか」を考えることが大切になります。
真似して後悔したケース、参考にして満足したケース
ここで、対照的な二つの事例をご紹介します。
真似して、後悔しかけたケース。
あるご家族は、SNSで見た大きな吹き抜けに憧れて、「同じものを」とご希望でした。でも、その投稿の家は60坪以上の大きな家。ご家族の計画は、それよりずっとコンパクトでした。そのまま真似すると、2階の収納がほとんど取れなくなることが分かったのです。形だけを追っていたら、収納に苦労する家になっていたかもしれません。
参考にして、満足したケース。
このご家族とよく話すと、本当に惹かれていたのは「吹き抜けの形」ではなく、「家じゅうが明るいこと」でした。そこで、大きな吹き抜けは見送り、その考え方だけを取り入れました。階段まわりに小さな吹き抜けと高い窓を設け、限られた面積でも光が回る家に。住み始めてから、「真似しなくて正解でした」と喜んでいただけました。
違いは、ひとつです。形を真似したか、考え方を参考にしたか。それだけで、結果は大きく変わったのです。
真似するより、「考え方」を学ぶ
くり返しますが、私はSNSを見ること自体を、まったく否定していません。むしろ、とても良いことだと思っています。たくさんのアイデアがあり、気づきがあり、家づくりを楽しくしてくれます。
ただ、そのまま真似することが正解とは限らない。なぜなら——
• 土地が違う
• 予算が違う
• 家族構成が違う
• 働き方が違う
条件が違えば、最適な答えも違うからです。ある家の正解が、あなたの家の正解とは限りません。
だから、SNSで見るべきなのは、間取りそのものではありません。その間取りが、なぜそうなっているのか。その考え方です。
「なぜ、ここに吹き抜けを作ったんだろう?」「なぜ、この動線にしたんだろう?」——そう問いかけながら見ると、投稿は単なる「真似する対象」から、「学べる教材」に変わります。そして、その考え方は、条件の違うあなたの家にも応用できるのです。
間取りを真似するのではなく、考え方を参考に
SNSは、アイデアの宝庫です。上手に付き合えば、家づくりはもっと豊かに、もっと楽しくなります。
大切なのは、見るか見ないかではなく、どう活用するか。
素敵な間取りを見つけたら、保存するだけで終わらせず、ぜひ一歩踏み込んでみてください。「我が家の暮らしに、これは合うだろうか?」「この工夫の狙いは、何だろう?」と。
間取りを真似するのではなく、考え方を参考にする。
その視点を持つだけで、SNSはあなたを迷わせる場所ではなく、後悔の少ない家づくりへ導いてくれる、頼もしい味方になるはずです。
家づくりに正解はありません。
ご家族によって大切にしたいことも違いますし、土地や予算によっても答えは変わります。
だからこそ、SNSやネットの情報だけで判断するのではなく、ご自身の家づくりに当てはめて考えることが大切だと思っています。
今回の記事が、後悔しない家づくりの参考になれば幸いです。
もし、
・自分たちの場合はどう考えればいいのか分からない
・今の間取りで本当に大丈夫なのか不安
・契約前に第三者の意見を聞いてみたい
・住宅会社には聞きにくいことがある
という方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
設計歴25年、累計1000組以上の家づくりに携わってきた現役プランナーとして、中立的な立場からお手伝いさせていただきます。
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