住宅展示場で見るべきなのは、実は「間取り」ではありません

住宅展示場で見るべきなのは、実は「間取り」ではありません

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家づくりを始めると、まず住宅展示場へ足を運ぶ方も多いと思います。

ずらりと並んだモデルハウスを見て回るのは、わくわくする時間ですよね。そして、多くの方の目は、こんなところに引き寄せられます。

天井まで抜ける大きな吹き抜け。ゆったりとした広いリビング。おしゃれなアイランドキッチン。ホテルのような洗面台。

どれも素敵です。見ているだけで、これからの暮らしへの夢がふくらみます。

実は、私も展示場を見るのは好きです。最新の設備や、空間を生かす工夫がたくさん詰まっていて、設計者の立場でも刺激を受けます。

ただ——25年この仕事をしてきた立場から、ひとつお伝えしたいことがあります。

展示場で本当に見てほしいのは、間取りそのものではないのです。

展示場は「夢を見る場所」であり「学ぶ場所」

最初に、展示場の役割を整理しておきましょう。

住宅展示場は、各社が自慢の技術やデザインを詰め込んだ、いわばショーケースです。最新の設備に触れられたり、空間の心地よさを体感できたり。家づくりのイメージをふくらませる、とても大切な入り口です。

夢を見る場所として、展示場はすばらしい。これは間違いありません。

ただ、それと同時に、展示場は「暮らしを学ぶ場所」でもあります。そして、この「学ぶ」という見方ができるかどうかで、得られるものが大きく変わってくるのです。

展示場の家は、あなたの家とは「条件」が違う

ここで、知っておいてほしい大切なことがあります。

展示場のモデルハウスは、実際に建てる家とは、いろいろな条件が違います。

たとえば、リビング。とても広く、開放的に見えます。でも、その建物はよく見ると、一般的な40坪ほどの家ではなく、60坪、70坪近い大きさだったりします。

吹き抜けも大きい。窓も大きい。天井も高い。来場者に「広い」「気持ちいい」と感じてもらうために、ゆとりをたっぷり持たせて造られているのです。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。各社の力を見せる場ですから、当然のことです。

ただ、その広さや迫力を、そのまま自分の家に持ち込めるとは限りません。予算が違う。土地の広さが違う。家族構成も違う。条件が違えば、同じものを再現するのは難しいのです。

形を真似すると、なぜ失敗しやすいのか

だからこそ、注意したいのが「形だけを真似してしまう」ことです。

「展示場のあの吹き抜けが素敵だったから、うちにも」「あの大きな窓がよかったから、同じように」——気持ちはとてもよく分かります。

でも、その形が成り立っていたのは、広い面積や大きな建物という前提があったから。同じ形を、限られた面積の家に押し込むと、ほかの部屋が削られたり、バランスが崩れたりします。

たとえば、広い家でちょうどよかった大きな窓を、コンパクトな家にそのまま付けると、家具を置く壁が足りなくなったり、外からの視線が気になったりする。形だけを真似すると、こうしたズレが起きやすいのです。

真似すべきは「形」ではなく「考え方」

では、何を持ち帰ればいいのか。

それは、間取りの「形」ではなく、その間取りが生まれた「考え方」です。

展示場を歩くとき、ぜひこう問いかけてみてください。

• なぜ、この場所に窓があるのだろう?
• なぜ、キッチンからリビング全体が見えるのだろう?
• なぜ、玄関収納がこの位置にあるのだろう?

ひとつひとつの工夫には、必ず理由があります。窓の位置は光や風、視線の抜けを考えた結果。キッチンの向きは、家族の様子を見守るため。収納の位置は、動線をスムーズにするため。

その「理由」が分かれば、面積や条件が違う自分の家にも応用できます。形は真似できなくても、考え方は持ち帰れるのです。これこそが、展示場で得られるいちばんの収穫だと思います。

おしゃれな照明より、「収納の中」を見てください

具体的に、何を見ればいいのか。私がお客様にいつもお伝えしているポイントをご紹介します。

まず、収納です。おしゃれな照明やインテリアを写真に撮るより、ぜひ収納の扉を開けて、中をのぞいてみてください。棚の奥行きはどのくらいか、何がどんなふうにしまえる設計か。生活感の出やすい場所をどう隠しているか。暮らしのリアルなヒントは、収納の中にこそ詰まっています。

次に、家事動線。リビングを眺めるだけでなく、実際に歩いてみてください。キッチンから洗面、洗濯スペースへ。買い物帰りを想像して、玄関からキッチンへ。自分の体で動いてみると、「この動き、ラクだな」「ここは少し遠いな」と、図面では分からない感覚がつかめます。

そして、窓の計画。どの方角に、どんな大きさの窓があるか。光がどこから入り、外からの視線がどう抜けているか。窓は、明るさもプライバシーも左右する大切な要素です。「なぜここに、この窓なのか」を意識して見ると、学びが深まります。

営業さんに「なぜ?」と聞いてみる

そして、いちばんおすすめしたいのが、営業担当者への質問です。

展示場の営業さんは、その家のことを知り尽くしたプロです。とても心強い存在ですから、遠慮なく頼ってみてください。

聞くべきは、こんな質問です。

「なぜ、この間取りになっているんですか?」
「この窓は、どういう意図でこの位置なんですか?」
「この収納は、何をしまうことを想定していますか?」

形ではなく、理由を尋ねる。すると、設計の裏にある考え方が見えてきます。良い営業さんほど、こうした質問を歓迎してくれます。お客様が本気で暮らしを考えている証拠だからです。

あるお客様の家で起きたこと

以前、展示場で見た大きな吹き抜けに憧れて、「同じものを採用したい」とおっしゃるご家族がいました。

私は「素敵ですよね。ただ、あの吹き抜けは70坪近い家だから成り立っていたんです。我が家の広さだと、何を優先したいですか?」とお聞きしました。

ご家族とよく話すうちに、本当に惹かれていたのは「吹き抜けの形」ではなく、「家じゅうが明るく、家族の気配を感じられること」だと分かってきました。

そこで、大きな吹き抜けは見送り、その「明るさ」と「つながり」という考え方だけを取り入れました。階段まわりに小さな吹き抜けと高い窓を設け、限られた面積でも光と気配が回る家に。住み始めてから、「真似しなくて正解でした。理由を考えてよかった」と喜んでいただけました。

形を追わず、考え方を持ち帰る。その差が、満足度を大きく分けたのだと思います。

見るべきなのは、間取りが「生まれた理由」

住宅展示場は、夢を見る場所です。同時に、暮らしを学ぶ場所でもあります。

見るべきなのは、間取りそのものではありません。その間取りが生まれた理由です。

なぜこの窓なのか。なぜこの動線なのか。なぜこの収納なのか。その「なぜ」に目を向けると、展示場はアイデアの宝庫に変わります。

だから今度、展示場へ行くときは、おしゃれな写真を撮るだけでなく、ぜひ営業さんにこう聞いてみてください。

なぜ、この間取りになったんですか?

その問いひとつで、展示場の見え方は、きっと大きく変わるはずです。

家づくりに正解はありません。

ご家族によって大切にしたいことも違いますし、土地や予算によっても答えは変わります。

だからこそ、SNSやネットの情報だけで判断するのではなく、ご自身の家づくりに当てはめて考えることが大切だと思っています。

今回の記事が、後悔しない家づくりの参考になれば幸いです。

もし、

・自分たちの場合はどう考えればいいのか分からない

・今の間取りで本当に大丈夫なのか不安

・契約前に第三者の意見を聞いてみたい

・住宅会社には聞きにくいことがある

という方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。

設計歴25年、累計1000組以上の家づくりに携わってきた現役プランナーとして、中立的な立場からお手伝いさせていただきます。

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