「言っても伝わらない」「すぐにかんしゃくを起こす」「話を最後まで聞いてくれない」
――発達障害のある子どもとの日々のやり取りの中で、そんな悩みを抱えている親御さんは少なくありません。
発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などさまざまなタイプがありますが、共通する特徴のひとつが「コミュニケーションの難しさ」です。
話す・聞く・伝える・理解する――この当たり前のように見えるやり取りが、思うようにかみ合わず、親も子どもも疲れてしまうことがあります。
でも、伝わらないと感じるのは、「やり方が悪い」からではありません。
その子に合った伝え方・接し方を少し工夫することで、気持ちが届き、関係がぐっと近づくことがあるのです。
このコラムでは、家庭で実践できる「発達障害児との効果的なコミュニケーション方法」と、年齢別の対応ポイントをご紹介します。
◆ 「ことば」より「伝え方」が大事
発達障害のある子どもたちは、曖昧な言葉や抽象的な表現が苦手なことが多くあります。
たとえば「ちゃんとしなさい」「早くして」といった指示は、具体的に何をすればいいのかわかりづらく、かえって混乱を招くことがあります。
《具体的な言いかえ例》
×「早くして!」 → 〇「あと3分で出かけるよ。靴をはこうか」
×「片づけて!」 → 〇「このブロックをカゴに入れてね」
また、目で見て理解できる工夫(=視覚支援)は非常に効果的です。
イラスト、写真、絵カード、スケジュール表、タイマーなどを使って、何をするのか、あとどれくらい時間があるのかを視覚的に示すことで、子どもが自分のペースで動けるようになります。
◆ 聞く・待つ・繰り返す「3ステップ」
1. “聞く”: 子どものペースを尊重する
→ 話がまとまらなくても最後まで聞くことで、「話していいんだ」という安心感が育ちます。
2. “待つ”: 反応を急がせない
→ 少し時間がかかるのは「情報を整理している」証。急がせるより、「考える時間」を与えるほうが理解が進みます。
3. “繰り返す”: 言い換えや確認をする
→ 同じ言葉で通じなければ、表現を変えてもう一度。
例:「あとでね」→「ごはんが終わったらにしようね」など。
◆ 感情の言語化を手伝う
発達障害のある子どもたちは、自分の感情をうまく言葉で表すことが難しい場合があります。
そのため、不安や不快がたまって行動で爆発する(パニック、癇癪など)ことも少なくありません。
そこで大人ができるのは、気持ちを代弁してあげること=感情の“通訳”です。
🔶《感情の代弁例》
「イヤだったんだね。うまくいかなくて悔しかったね」
「急に言われてびっくりしちゃったんだね」
感情に名前をつけることで、「これはイライラ」「これは悲しい」などの感情の整理と自己理解が進み、次第に自分で気持ちを言えるようになっていきます。
◆ 年齢別:効果的なコミュニケーションのヒント
発達障害のある子どもは、年齢や発達段階によって特性のあらわれ方や困りごとが変わります。
以下に、年齢ごとのコミュニケーションのポイントをまとめました。
◉ 幼児期(3~6歳ごろ)
特徴
・抽象的な表現が理解しづらい
・感情のコントロールが未熟で、癇癪が多い
・日常の「見通し」が立たないと不安定になりやすい
対応のポイント
・言葉は「短く・具体的に」
・視覚的に示す(絵カード・写真・実物)
・成功した行動はすぐに褒める
・「ダメ」ではなく、「こうしよう」と行動を指示
声かけ例
×「静かにしなさい」 → 〇「小さい声でお話しようね」
×「ちゃんと片づけて!」 → 〇「ブロックをカゴに入れてね」
◉ 学齢期(6~12歳ごろ)
特徴
* 学校生活でのストレスが増える
* 集団行動やルールが理解しづらい
* 叱られる経験が多く、自信を失いやすい
対応のポイント
* 行動の見通しと選択肢を与える
* 感情の言語化を促す(例:「困ったね」「悔しいね」)
* 抽象的な注意ではなく、改善策を伝える
* 「ダメ」だけで終わらず、「どうしたらいいか」をセットで伝える
声かけ例
* ×「どうしてそんなことするの?」 → 〇「困ったときはどうすればいいかな?」
* ×「また忘れてる!」 → 〇「次に忘れないために、どうしようか一緒に考えよう」
◉ 思春期(12歳~高校生ごろ)
特徴
* 自我が育ち、親の干渉を嫌がる
* 感情が不安定になりやすい
* 言葉は話せても「気持ちを伝える」ことが難しい
対応のポイント
* 指示や命令ではなく「対話」を意識する
* 責めるより「理解しようとする姿勢」を示す
* 直接的な共感が難しいときは、**“そばにいる安心感”を与える**
* 親の期待を押しつけず、「本人の気持ち」を尊重
声かけ例
* ×「反抗ばっかりしないで!」 → 〇「何か嫌なことあった?話してくれてもいいよ」
* ×「どうせできないでしょ」 → 〇「やってみようと思えたの、すごいと思うよ」
◆ 最後に──「伝え方」は愛し方
発達障害のある子どもとの関わりは、簡単ではありません。
でも、「伝え方」はその子を大切に思う“愛し方”でもあります。
伝わらない日も、うまくいかない日もある。
けれど、あなたが「わかってあげたい」「寄り添いたい」と願って向き合うその気持ちは、
必ず子どもに伝わっていきます。
焦らず、比べず、少しずつ。
言葉で、態度で、「あなたを大切に思っているよ」というメッセージを、届け続けてください。