ExcelをWeb化した。
複数人で使えるようになった。
なのに、前より確認作業が増えた。
こういう相談、実際にあります。
Excelが悪かったわけではありません。
Web化が悪かったわけでもありません。
Excelの中にあった「現場の都合」を、画面とデータベースへ移せていないんです。
Excelは自由です。
セルを広げられる。
色を変えられる。
列を追加できる。
印刷前に少し縮められる。
困ったら隣にメモを書ける。
この自由さが属人化の原因になります。
ただ、同時に現場を回している理由でもあります。
だから、ExcelをそのままWebへ置き換えると、便利になるとは限りません。
私は、Excel VBA、GAS、Python、Webアプリを使った業務改善を続けています。
その中で何度も感じたのが、Web化の失敗は機能不足より「小さな使いづらさ」の積み重ねで起きることです。
印刷すると文字が小さい。
画面の一部だけ先に表示される。
保存したつもりなのに外部連携は終わっていない。
現場で呼んでいる名前と、プルダウンの名称が違う。
ボタンが1段に収まらない。
1個ずつ見ると軽いです。
でも毎日使う人にとっては、全部ストレスです。
そして最後に、Excelへ戻ります。
今回は、ExcelをWeb化してから後悔しやすい6つの落とし穴を、実案件でよく出る修正内容から整理します。
■ Excelの見た目だけを移した巨大入力画面
最初の落とし穴は、Excelの列をそのまま画面へ並べることです。
A列からZ列まである。
だから、Web画面にも26項目置く。
作れます。
でも、使いやすいとは限りません。
Excelでは、画面を横へ動かしながら全体を見ます。
コピーや連続入力もできます。
前の行を見ながら次を入力できます。
Web画面で同じことをすると、スクロール、クリック、画面遷移が増えます。
特にスマホでは地獄です。
横幅26列をスマホへ入れる技術はあっても、指は増えません。
Web化するときは、Excelの列ではなく作業の順番を見ます。
・最初に選ぶ情報
・毎回入力する情報
・条件によって出す情報
・自動計算できる情報
・最後に確認する情報
これで画面を分けます。
Excelの見た目を再現するより、
利用者の頭の中の順番を再現したほうが使われます。
■ 画面を作って印刷を忘れる設計
Web化の打ち合わせでは、入力画面や一覧画面が中心になります。
印刷は最後に回されがちです。
でも、現場では紙が残ります。
工程表。
安全日誌。
請求書。
報告書。
チェック表。
顧客へ渡す帳票。
ここを忘れると、Webで入力したあとExcelへ転記し、印刷だけExcelで行うことになります。
仕事、増えています。
実際、画面では見やすくても、印字すると文字が小さいという修正は起きます。
項目を増やした結果、縦方向へ詰まり、読めなくなることもあります。
印刷は完成後に調整するものではありません。
最初に決めます。
・用紙サイズ
・縦か横か
・1枚に収める範囲
・改ページの条件
・文字サイズの下限
・署名欄や押印欄
・画像や図面の大きさ
・空欄時の表示
画面は拡大できます。
紙は黙っています。
「印刷プレビューで見えたから大丈夫」は危ないです。
実際のプリンターで1枚出してください。
はい。紙代数円のテストをケチって、修正に数時間使うことがあります。
自分でも終わってるなと思います。
■ 速く見せるほど不安になる読み込み
Web化では、性能を良くするために処理を分けることがあります。
先に画面を出す。
一覧をあとから読み込む。
保存後の外部連携を裏で動かす。
一般的なWebサービスでは便利です。
ただ、業務システムでは「全部終わったのか」が重要です。
実際に、一覧を途中まで表示する方式へ変えたところ、利用者から「全部読めてから表示してほしい」と言われるケースがあります。
利用者は速さだけを見ていません。
・件数は確定しているか
・今操作してよいか
・保存は終わったか
・外部サービスまで反映されたか
・画面を閉じてよいか
これを見ています。
読み込みを分けるなら、状態を見せます。
・データ読込中
・保存完了
・外部連携中
・連携完了
・一部失敗
・再実行可能
曖昧なクルクルだけでは足りません。
業務ツールでは、0.8秒で不安になる画面より、2秒で安心できる画面のほうが速いんですよね。
■ 正式名称が正解とは限らないマスタ
データベースを作ると、名称を統一したくなります。
正式な現場名。
正式な会社名。
正式な商品名。
正式な部署名。
管理する側としては正しいです。
ただ、現場では略称を使っていることがあります。
工程管理表では「第二倉庫」。
正式名称は「株式会社○○物流センター第二保管棟改修工事」。
プルダウンに正式名称だけ並ぶと、利用者は探せません。
実際、別画面では現場名を使っているのに、ある画面だけ正式名称を使っていて、統一してほしいという修正は起きます。
マスタには、正式名称だけでなく用途ごとの表示名を持たせます。
・正式名称
・画面表示名
・帳票表示名
・検索用の別名
・過去名称
・並び順
・利用停止状態
こうしておくと、データは1つでも見せ方を変えられます。
「正式名称だから正しい」は、システムの都合です。
利用者が選べなければ、業務では不正解です。
■ 保存完了の裏で終わっていない外部連携
Web化すると、外部サービスとの連携が増えます。
Trelloへカードを作る。
Discordへ通知する。
Dropboxへ保存する。
メールを送る。
別システムへデータを渡す。
ここで難しいのが、どこまで終わったら「保存完了」と表示するかです。
データベースへの保存だけ終わり、Trello連携は裏で実行する。
画面は速くなります。
ただ、利用者はTrelloまで登録されたと思います。
あとで失敗しても気づきません。
逆に、全部を同期処理にすると、外部サービスが遅いだけで画面が長く止まります。
正解は、何でも同期、何でも非同期ではありません。
業務上の重要度で分けます。
・失敗すると業務が止まる処理
・あとから再実行できる処理
・利用者が完了を確認したい処理
・失敗しても通知だけでよい処理
そして、結果を画面へ出します。
「保存済み、Trello連携中」
「保存済み、通知失敗」
「再送できます」
ここまで見せると、利用者は判断できます。
完了という言葉を1個で済ませると、あとでクッッッソ揉めます。
■ Web化したのにExcelへ戻れない逃げ道
最後の落とし穴は、移行と復旧です。
Web化を決めると、Excelをやめることばかり考えます。
でも、最初から完全移行できるとは限りません。
データが足りない。
現場ごとに入力方法が違う。
過去ファイルの形式が揃わない。
ネットワークが止まる。
新しい画面に慣れていない。
この状態でExcelを完全に切ると、トラブル時に仕事が止まります。
最初は逃げ道を作ります。
・既存Excelの取込
・CSV出力
・PDF出力
・一定期間の並行運用
・過去データの参照
・バックアップからの復元
・手入力で修正できる管理画面
逃げ道というと後ろ向きに見えます。
逆です。
戻れるから、新しい仕組みを試せます。
業務改善は、利用者へ崖を飛ばせることではありません。
低い段差を作ることです。
■ Web化する前に聞くべき6つの質問
ここまでの話をまとめると、Web化前に確認したいのは次の6つです。
・Excelを開いて最初に何をするか
・最後に何を印刷または提出するか
・処理中に何を確認したいか
・現場では何という名前で呼んでいるか
・外部連携はどこまで完了確認が必要か
・トラブル時にどこへ戻れるか
機能一覧より、こちらのほうが重要です。
「検索画面が必要」
「PDF出力が必要」
「権限管理が必要」
もちろん必要です。
ただ、その前に、
誰が、どの順番で、何を見て、どこで安心するかを決めます。
あなたは今ここまで読んでますよね?
たぶん、今使っているExcelにも、説明できない色、謎の空白列、印刷用の細かい調整が残っていると思います。
それ、全部消さないでください。
汚いから不要なのではなく、
現場のルールが残っている可能性があります。
Web化の最初の仕事は、きれいな画面を作ることではありません。
そのExcelが、なぜ今の形になったのかを聞くことです。
Excelで十分な部分は残す。
複数人利用や履歴管理が必要な部分だけWeb化する。
帳票は今の様式を生かす。
連携は失敗時に戻せる形にする。
この順番なら、Web化して仕事が増える事故を減らせます。
「Excelが重くなってきた」
「複数人で同時に使いたい」
「Web化したが現場から不満が出ている」
「どこまでWeb化すべきか分からない」
この段階でも大丈夫です。
現在のExcel、実際の操作、印刷物を見ながら、Excel改善で済む範囲とWeb化したほうがよい範囲を整理します。
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