「先週お願いしたあの件、どうなっていますか」。取引先から電話が入る。心当たりがない。受信箱を検索しても出てこない。保留にして周りに聞いてまわると、先月の展示会で担当がその場で口頭で受けていた、と分かる。
折り返して謝る。次からは気をつけます、と言う。ただ、気をつけようがない。受けた本人が忘れていたのではなく、受けたという事実がどこにも記録されていなかったからだ。記録がなければ、思い出す以外に手がない。
当方は受注や問い合わせの管理を小さなツールに移す仕事をしていて、着手の前にはいつも「依頼がどこから入ってくるか」を数えてもらう。だいたい5つか6つ出てくる。抜けるのは注意力の問題ではなく、受け口の数だけ記録の置き場所が分かれていることのほうにある。しかもその置き場所は、一つひとつ性質が違う。
経路ごとに、残るものが違う
受け口が5つあれば、記録も5か所に散る。それだけなら「5か所を見に行けばいい」で済む話だ。厄介なのは、経路によって残るものの量も寿命も違うところにある。
電話は、受けた人が書いたメモしか残らない。書かなければ何も残らない。書いたとしても、その紙が机の上にある間だけの話だ。立ち話に至っては、最初から記憶しかない。
メールとチャットは残る。ただしメールは受けた個人の受信箱の中にあって、他の人からは見えない。チャットは全員が見えるかわりに、翌日には別の話題に押し上げられて画面から消えている。残っていることと、必要なときに見つかることは別だ。
受け口は減らさなくていい
抜けが続くと、最初に出てくるのが「窓口を1つにしよう」という案だ。今後の依頼はすべてこのフォームから、電話では受けない、と決める。これがたいてい続かない。
入口を決めるのはこちらではなく、相手だからである。20年FAXで発注してきた取引先にフォームを使ってもらうのは、こちらの都合でしかない。現場で会ったときに「ついでにこれもお願い」と言われるのを断るわけにもいかない。断れば、次からは言ってもらえなくなるだけだ。
減らすのは受け口ではなく、記録する場所のほうになる。入口は何本あってもいい。ただし台帳は1本にする。電話でもFAXでも立ち話でも、受けた人がその場で1行足す。やることをそこまで削っておかないと、忙しい日に飛ばされる。
「受けた」と「引き受けた」を分ける
台帳を1本にしても、抜けが残ることがある。残っているのはたいてい、受けた記録はあるのに誰がやるかが決まっていない依頼だ。
電話を取った人は伝票を書いた。担当と思われる人に口頭で伝えた。伝えられた側は「聞いた」とは思ったが、自分がやる話だとは受け取っていない。この状態が一番落ちる。台帳には行があるのに、誰も動いていないからだ。
聞いてはいたが、自分がやるとは思っていなかった
だから記録は2段にしておく。受付(誰がいつ受けたか)と、着手(誰が引き受けたか)。この2つを1つの欄にまとめない。「対応中」の一語で済ませてしまうと、受けただけなのか、誰かが手をつけているのかが後から読めなくなる。
運用は簡単で、担当が空欄のままの行を朝に一度だけ見る。件数は少ないので3分で終わる。落ちるのは正常に流れていった依頼ではなく、途中で止まって誰の手にも渡っていない依頼のほうです。そこだけ毎日見ておけばいい。
受付で埋める項目は6つでいい
台帳が続かなくなるもう一つの原因は、項目が多すぎることだ。よかれと思って15項目の表を作る。電話を受けながらでは埋められない。埋まらないので「後で入れる」と決め、そして後で入れない。手元のメモ帳に戻る。
受けた時点で分かるのは6つしかない。受付日、相手、内容、数量、希望納期、受け口。金額も、在庫を引き当てるかも、請求が要るかも、受けた後に調べたり決めたりすることだ。あとで分かる項目を、受付の欄に並べない。
内容の欄は、聞いたままの言葉で書いておいたほうがいい。受けた人が頭の中で整えてから書くと、整えた時点の解釈が混ざる。「至急で」と言われたのか「なるはやで」と言われたのかは、後で食い違ったときに効いてくる。
受け口の欄が、3か月後に効く
6つ目の「受け口」は、その場では何の役にも立たない。効いてくるのは数か月ためた後だ。経路ごとに数えると、どこから何件来ているかが数字で出る。
感覚と数字はよくずれる。FAXが多いと思っていたら、電話が半分を占めていた、という結果になることがある。逆にFAXが月に2件しかないと分かれば、その2社にだけ話をすればFAXの受け口は閉じられる。減らす判断は、この数字が出てからでいい。
抜けた件を数えるときも、経路ごとの件数と並べて見る。抜けた3件が全部電話だったとして、電話が月に3件しかないのか、月100件のうちの3件なのかでは意味がまるで違う。分母を書かずに率だけを見ると、対策する先を間違える。
先に窓口を1つへ絞ろうとすると、たいてい現場が別の場所にメモを作り始める。台帳から見えないところに新しい受け口ができるので、かえって悪くなる。数えてから閉じる、の順にしたほうが安全だ。
転記した紙を、捨ててよいか
FAXと手書きの伝票には、もう一つ決めることがある。台帳に打ち込んだ後の紙をどうするか。用が済んだものとして捨ててしまうと、後で数字が食い違ったときに戻る先がなくなる。
台帳の1行に、元の紙を紐づけておく。スマートフォンで撮った画像をその1件に付けられるのが一番いい。難しければ「保管場所」の欄を1つ持つだけでも足りる。バインダーの名前と通し番号が入っていれば、後から現物にたどり着ける。
効いてくるのは、数量を1桁打ち間違えていたときだ。台帳の数字しか残っていないと、それが正しいのかどうかを誰も確かめられない。元が残っていれば、間違いが見つかった時点でそこへ戻れる。
台帳の側を直すときも、上書きはしないほうがいい。数量を10から100に直したのなら、直した日と直した人が残る形にしておく。相手から「10と言ったはずだ」と言われたときに、いつ誰が何を見て直したのかを説明できる。
当方は元金融系のシステムエンジニアで、受けた記録を上書きしない作りや、元の書類までたどり着ける形は、そこで身についたものだ。ココナラでは、この受付台帳のような「1つの作業だけ」を小さなツールにする仕事を受けている(マクロでも、スプレッドシートでも、ブラウザで開く形でも、いまの使い方に合うものを選びます)。依頼がどこから何本入っているかが見えていればお見積りできるので、まずはココナラのメッセージからご相談ください。