仕入先から値上げの連絡が来た。単価表を開いて、その材料の単価を新しい金額に打ち替える。原価表はその単価を参照しているので、メニューごとの原価も一斉に計算し直される。ここまでは意図したとおりだ。値上げを反映したかったのだから、そうなってほしくて直している。
困るのは、そのあと先月の資料を開いたときである。先月の原価も、去年の原価も、今日入れた単価で計算されている。値上げ前に出したはずの数字が、どこにも残っていない。前と比べたいのに、比べる相手のほうが今日の値になっている。
当方はExcelや紙で回している管理業務をWebアプリに移す仕事をしていて、飲食や食品を扱う現場の表も見せてもらう。原価まわりの相談は、計算式の間違いより単価の持ち方に集約されることが多い。単価表を1枚だけ持って、値上げのたびに上書きしている限り、この現象は起き続ける。逆に言えば、持ち方を変えるだけで止まる。
なぜ先月の原価まで動くのか
Excelの原価表は、たいてい単価表を参照している。材料名から単価を引いてきて、使用量を掛ける。この作りだと、単価表のセルを直した瞬間に、その材料を使っている過去のすべての計算が、新しい単価で計算し直される。式は何も壊れていない。
去年のメニュー表の原価が、いま開くと違う数字になっている
表は指示どおりに動いている。式が読みに行くのは「その材料の単価」であって、「その時点の単価」ではないからだ。単価表に日付が入っていない以上、表のほうは、いつの値かを知りようがない。過去を残しているつもりのファイルが、開き直すたびに今日の値へ染まっていく。
単価は「いつからの値か」で持つ
直し方は単純で、単価表の1行を書き換えるのをやめる。材料ごとに1行ではなく、材料と適用開始日の組み合わせで1行にする。9月1日から180円になったなら、165円の行を直さず「9月1日・180円」という行を足す。前の行はそのまま残す。
いまいくらかを知りたいときは、その材料の行のうち適用開始日がいちばん新しいものを読む。8月の原価を出したいときは、8月1日以前でいちばん新しい行を読む。いまの値は最新の1行を見れば足りて、過去のほうは動かない。行数は増えるが、増えた行がそのまま値上げの履歴になる。
Excelのままでも組めなくはない。ただ、日付で期間を絞って1行を選ぶ式は長くなるし、行が増えるほど重くなる。担当が変わったときに読めない式は、いずれ誰も触らなくなります。この持ち方は、アプリ側に移してしまうほうが素直です。
納品書は、書いてある金額をそのまま写す
仕入の入力では、品目・数量・金額の3つを入れる。このうち金額を「数量×単価」で計算させたくなるが、これはやめたほうがいい。実際の納品書には、まとめ買いの値引きや端数の調整、送料の按分が乗っている。掛け算で出してしまうと、その差が記録から消える。
消えると、表の上には単価どおりの金額がきれいに並ぶ。そして請求書や通帳と突き合わせたときに合わない。紙に書いてある金額のほうが事実で、単価はそこから割り戻して出てくる結果だ。順番を逆にすると、事実のほうが上書きされる。単価表の値は次に見積もるときの目安として持ち、実績は納品書の金額で持つ。
端数の扱いも、入力の時点で決めておきたい。切り捨てと四捨五入が画面ごとに違っていると、1円ずつの差が月末に積み上がる。原因としては地味だが、探し始めると時間を取られる部類です。決めるのは早いほうがよく、後から揃えると、それまでの数字も動きます。
レシピを変えた日から、原価が変わる
材料の分量を変えることもある。グラム数を少し落とした、付け合わせを差し替えた、といった調整だ。ここでレシピ表の数量を上書きすると、単価とまったく同じことが起きる。先月の原価が、今月の配合で計算し直される。値上げの話ではないので、気づくのはさらに遅れる。
レシピも版で持つ。7月10日から配合を変えたなら、その日以降の原価だけが新しい配合で出る。変えた日から先が変わるのは正しく、遡って変わるのは誤りという線を、単価と同じ形で引いておく。こうしておくと、原価が動いたときに、単価が上がったのか自分たちが配合を変えたのかを分けて見られる。
同じ材料を、仕入先の数だけ増やさない
同じ小麦粉をA社とB社から買っていると、単価表に「小麦粉A」「小麦粉(B社)」のような行が並びがちだ。仕入先ごとに値段が違うのだから、分けたくなる気持ちは分かる。ただ、こうすると使用量の集計が割れる。今月どれだけ小麦粉を使ったのかが、一度では出なくなる。
材料は1つにして、その下に仕入先ごとの単価を並べる。レシピが参照するのは材料のほうで、仕入先は「どこから買ったか」として仕入の明細に付く。名前が割れれば集計も割れる、というだけの話で、取引先名の表記ゆれとまったく同じ型だ。後から統合するほうが手間になります。
原価率は、月でまとめる前に一品ずつ
月の原価率が32%から35%に上がった、という数字だけでは、次に何をするかが決まらない。仕入の総額を売上の総額で割っただけなので、上がった理由が中に埋もれている。廃棄が増えたのか、特定の材料が上がったのか、売れ筋が変わって構成比が動いたのか。どれも同じ1つの数字になる。
必要なのは、商品1つごとに材料費の合計と売価が出る形だ。その日の単価とその日のレシピで計算した原価を、結果として保存しておく。あとから単価表を見に行かないので、この数字は動かない。並べれば、動いた商品と動いていない商品が分かれる。
ここまで作れると、値上げの連絡が来たときの動きも変わる。この材料が上がると、どのメニューの原価が何円上がるのかを、先に出せる。売価を上げるのか、量を調整するのか、その材料を使う他のメニューまで含めて動かすのか。判断の材料が数字で並びます。
当方は元金融系のシステムエンジニアで、締めた後の数字が後から動かない作りは、そこで身につけたものだ。ココナラでは、こうしたExcel・紙の管理業務を買い切りのWebアプリにする仕事を受けている(サーバーは依頼者さま名義でご契約いただくので、当方へお支払いいただく月額はない)。いまの単価表と原価表がどんな形になっているかが分かれば見積もれるので、まずはココナラのメッセージからご相談ください。