金曜の夕方に電話が鳴る。台帳を開くと、その時間はまだ空いている。名前を書き込んで、受話器を置く。当日になって、同じ時間帯にもう一人来店される。台帳を見返すと、確かに二件並んでいる。開始時刻は違うのに、重なっていた。
こういう日は「あのとき見落とした」で終わらせてしまいがちだ。次からは気をつけよう、で片づける。だが同じことが月に何度も起きているなら、それはもう見落としではない。誰が受けても同じところで間違える形になっているだけで、原因は台帳の作りのほうにある。
予約が重なる、後ろの予約が押し出される、キャンセルの穴が埋まらない。現場で困っているのはたいていこの三つで、出どころはだいたい同じ場所にある。台帳が何を持っていて、何を持っていないか。作り替えるかどうかを決める前に、そこだけ順番に見ていきます。
重なるのは、終わりの時刻を持っていないから
予約台帳の多くは、日付・開始時刻・お名前・メニューの四つで出来ている。この形だと、重複を見つける手段が「同じ時刻の行が二つ並んでいないか」しかない。14時と14時30分は別の行なので、目には重なって見えない。ところがカットとカラーで90分かかるなら、14時の予約は15時30分まで席にいる。
要るのは、メニューごとの所要時間だ。これを持って初めて終了時刻が計算で出る。重なりは開始時刻の一致ではなく、時間の帯が交わるかどうかで決まる。帯どうしの交わりを目で追うのは、件数が増えるほど難しくなる。人が頑張って埋める場所ではない。
所要時間を持たせるときに、一つだけ気をつけたいことがある。所要時間は途中で変わる。60分だったメニューを75分に見直した月から、過去の予約の終了時刻まで一緒に動いてしまうと、先月の記録が今日になって別のものになる。所要時間には「いつ時点のものか」を持たせて、過去の予約は受けたときの値のまま残す。
重なりは受付の不注意ではなく、終わりの時刻を持っていない台帳の側で起きている。
担当は空いているのに、席がない
もう一つの重なり方がある。指名の担当者は空いている。ところが施術に使うシャンプー台がふさがっている。あるいはチェアが三台しかないのに、四人ぶん入っている。台帳が「人」だけで組まれていると、この重なりは当日まで見えない。
数えるものを増やすしかない。担当者、席やチェア、機器、部屋。予約一件がどれを何分押さえるのかを決めておくと、埋まっているかどうかが機械的に出る。歯科ならユニット、整体ならベッド、美容室ならシャンプー台。資源ごとに空きを見る形にしないと、担当者の空きだけを見て取ってしまう。
最初から全部を数える必要はありません。一番数が少ないものを一つ足すところから始めれば足ります。どこが詰まっているかは、毎日その場に立っている方ならたいてい即答できる。数える対象を増やすのは、それが効いていると分かってからでよい。
上から順に足していける形なので、一度に全部そろえる必要はない。開始時刻に所要時間を足すだけでも、押し出しの大半は先に見えるようになる。席や機器を数え始めるのはその次で、状態を持たせるのはさらにその後でよい。順番を守れば、途中で止めても手元には使えるものが残る。
前後の余白を、どこに持たせるか
予定が数分ずつ後ろへずれていく、あの現象の正体は片付けと準備だ。60分の施術でも、席を整えて次の方を通すまでに10分かかる。台帳の所要時間が60分のままだと、その10分は毎回どこかに押し込まれる。三件続けば30分。夕方には戻せなくなる。
決め方は二つある。所要時間のほうに含めてしまうか(60分の施術を70分として持つ)、余白を別の値として持つか。どちらでもよいが、店の中で一つに決める。混ざると、同じメニューなのに人によって終了時刻が違うという、いちばん困る状態になる。
分けて持つ利点は、実際の施術時間がそのまま残ること。売上と時間を突き合わせたいなら別にしておく。含めてしまう利点は、単純で間違えようがないこと。運用が回っていないなら、含める側から始めるのがおすすめです。
キャンセルした行は、消さない
電話でキャンセルが入る。台帳の行を消す。枠が空く。ここまでは正しい。ただ、消してしまうと後から何も分からなくなる。何件入って何件流れたのか、どの時間帯に集中しているのか、同じ方が繰り返しているのか。全部、消した行の中にあった。
行はそのまま残して、状態だけを変える。予約・来店・キャンセル・無断キャンセルの四つで足りる。空き枠を出すときは「キャンセル以外」を数える。空き枠という欄を持たないのがこつで、欄として持たせると、実際の予約とどこかでずれる。予約の記録から計算して出す形にしておけば、ずれようがない。
状態を残しておくと副産物もある。キャンセルが多い曜日と時間帯が、数か月ぶんたまったところで見えてくる。予約の受け方を変えるのか、前日に一本連絡を入れるのか、その枠だけ受け方を分けるのか。手を打つかどうかを、印象ではなく件数で決められるようになる。
受け口は増えていい。台帳は増やさない
電話、店頭、メッセージアプリ、自社サイトのフォーム、それに予約サイト。入り口が増えること自体は困らない。困るのは、それぞれが別の場所に記録されている状態のほうだ。サイトの予約は管理画面、電話は紙、メッセージはトーク画面をさかのぼる。この形なら、重なるのは時間の問題になる。
重なってしまうのは、二つの入り口が同じ枠を見ていないからだ。片方に入った予約が、もう片方からは「空き」のまま見えている。転記が追いつく速さより、予約が入る速さのほうが速い日がある。忙しい日ほどそうなる。
受け口は何本あってもよいが、書き込む先は一つに決める。電話で受けたらその場で同じ台帳に入れる。予約サイトから来たものも、届いたら同じ台帳へ移す。移す作業が溜まるようなら、そこが最初に自動化する場所です。
「言った・聞いていない」を数秒で終わらせる
「16時と伝えたはずだ」「17時で承っております」。この確認に時間を取られた経験は、受付をしていれば一度はあるはずだ。台帳が上書きされる形だと、直した後の値しか残らない。確かめる手段がないので、記憶と記憶を突き合わせるしかなくなる。
変更のたびに、いつ・誰が・何を何に変えたのかを一行だけ残す。「9月12日 14時20分 受付田中 16時→17時 お客様よりお電話」。この一行があれば、確認は数秒で終わる。誰かを責めるための記録ではなく、その場で話を先に進めるための記録だ。
この五つを先に決めてしまえば、後になってからの作り替えはほとんど要らなくなる。決めないまま動かすと、予約が数百件たまったところで全部を直すことになる。直している間も予約は入り続けるので、そこが一番きつい。
当方は元金融系のシステムエンジニアで、Excelや紙で回している管理業務を、月額のかからない買い切りのWebアプリにしている。予約台帳であれば、所要時間と資源の持ち方、キャンセルの残し方や変更の履歴を、先に決めるところからご一緒します。今の台帳を見せていただければ、どこを直せば重なりが消えるかをお伝えできますので、形が決まっていない段階で構いません。ココナラのメッセージからご相談ください。