※実際の相談例をもとに、個人が特定されないよう背景や時系列の一部を変更・再構成しています。
前回の記事では、手足とお腹の強い冷えに悩んでいた方の食生活を紹介しました。
その方は健康と筋力維持を考え、タンパク質・脂質・炭水化物の量を細かく管理していました。
しかし、詳しく聞いてみると、夏の夕食はほぼ毎日、
・冷蔵庫から出した豆腐をほぼ1丁
・冷たい生卵を2個
・少量のご飯
・ポタージュ
・追加の食物繊維
という内容で固定されていました。
さらに昼食後の強い眠気を避けるため、昼の主食も意図的に抜いていました。
一見すると、高タンパク・低脂質・低糖質の健康的な食事です。
しかし、すでに電熱腹巻きが必要なほどお腹が冷え、膨満、ガス、下痢などもある人にとっては、冷たい豆腐を毎晩大量に食べる習慣が合っていない可能性があります。
そこで私は、豆腐が悪いと決めつけるのではなく、まず1~2週間ほど食事から外し、お腹の変化を記録してみる方法を提案しました。
数日後、予想以上の変化があった
豆腐を食べ切ってから数日後、経過を尋ねてみました。
すると本人から、意外なほど変化が出ているという返事がありました。
最も大きく変わったのは、お腹でした。
・電熱腹巻きなしでも過ごせるようになった
・下痢をしにくくなった
・ガスがほとんど出なくなった
・腹部膨満が以前ほど強くない
・お腹自体も以前より温かく感じる
豆腐をやめてから、長期間必要だった電熱腹巻きを使わずに過ごせるようになったのです。
「少し調子がよい気がする」という程度ではありません。
冷え、膨満、ガス、下痢という腹部に関係する複数の症状が、同じ時期にまとまって軽くなっています。
しかも、この時期は処方されていた漢方薬がちょうど切れ、一時的に飲んでいない状態でした。
温める漢方を新しく追加した結果ではなく、食生活を変えた時期に腹部症状が改善したことになります。
豆腐が原因だったと断定できるのか
この経過だけで「すべて豆腐が原因だった」と断定することはできません。
同じ頃に、昼のご飯を少量戻し、筋力トレーニングも再開していたからです。
昼のエネルギー摂取が増えたことや、運動によって血流と発熱が増えたことも、改善に影響した可能性があります。
厳密な試験では、条件を一つずつ変更しなければ、どれがどの程度作用したかを区別できません。
それでも、今回の経過には注目すべき点があります。
漢方薬を中断していたにもかかわらず、豆腐をやめた時期から腹部に関係する症状がまとめて改善し、電熱腹巻きまで不要になったことです。
少なくとも、毎晩食べていた冷たい豆腐1丁が、腹部症状の主要な悪化要因の一つだった可能性は高いと考えられます。
手足の冷えは残っていた
さらに興味深いのは、お腹が温かくなった一方で、手足の末端冷えは残っていたことです。
電熱腹巻きは不要になりましたが、電熱靴下は引き続き必要でした。
この違いは、手足の冷えと腹部の冷えでは、成り立ちが同じではなかった可能性を示しています。
この方の手足の冷えは、数年前に強い精神的ストレスを受けた頃から始まっています。
現代医学的には、自律神経の緊張による末梢血管の収縮が関係していた可能性があります。
中医学的には、ストレスによって気の巡りが滞り、気血が四肢の末端まで届きにくくなった状態として捉えることができます。
一方、腹部の冷えが強くなったのは、その後のことでした。
もともと存在したストレス性の手足の冷えに、
・昼の主食を抜く食生活
・総エネルギーの不足
・冷たい豆腐を毎晩ほぼ1丁食べる習慣
・冷たい生卵
・追加の食物繊維
などが重なり、胃腸の働きと腹部症状へ影響したという二段階の流れが考えられます。
身体を温める前に、冷やす習慣を探す
冷えが強いときは、温かい物を食べる、腹巻きを使う、入浴する、温める方向の漢方を相談するといった「何かを足す方法」を考えがちです。
もちろん、それらが必要な場合もあります。
しかし、毎日の生活に身体へ負担をかけている習慣が残っていれば、温めるものを足し続けても追いつかないことがあります。
今回の例で大切だったのは、豆腐を身体に悪い食品と判断したことではありません。
健康によい食品であっても、今の体調、量、温度、頻度によっては合わない可能性があると考え、一度外して身体の反応を確かめたことです。
薬や健康食品を新しく足す前に、
「毎日繰り返していることの中に、症状を悪化させるものはないか」
と振り返ることが、改善の糸口になる場合があります。
次回は、冷たい飲食物が胃の温度や胃の動きへどのように影響するのか、実際の研究をもとに整理します。
※この記事は、個別の食品が病気の原因であると断定するものではありません。症状が強い場合や長引く場合、体重減少、強い腹痛、嘔吐、血便などがある場合は、医療機関へ相談してください。