ネーミング|“プチッ”“サクッ”が記憶に残る理由

ネーミング|“プチッ”“サクッ”が記憶に残る理由

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ビジネス・マーケティング
この記事は
・ブランド名やサービス名で迷っている人
・今の名前で進んでいいか分からない人向けです

擬音語で印象に残るネーミングのしくみ

1. 擬音語は、脳に直接届くネーミング資源
ネーミングは「記号」ですが、音を持った記号です。とりわけ擬音語──「プチッ」「サクッ」「ゴロゴロ」といった音を模した言葉──は、脳にダイレクトに届きます。
音は感覚と結びついているため、擬音語を聞いた瞬間、私たちの脳は自然に「情景」や「体験」を思い描きます。たとえば「ポリポリ」という音には噛む食感、「フワフワ」にはやわらかさや軽さが含まれており、わざわざ説明しなくても一瞬でその特徴が伝わります。
言葉でありながら、体験を伴った情報として記憶に残る──これが擬音語の最大の強みです。

2. 日本語ネーミングと擬音語の親和性
特に日本語は、世界的にも類を見ないほど擬音語・擬態語が豊富な言語です。擬音(実際の音を表す)だけでなく、「ツヤツヤ」「しっとり」などの擬態(状態を表す)まで含むと、その数は4000語以上とも言われています。
日常生活でも、感情や印象を表す際に擬音語が使われがちです。「なんかモヤモヤする」「シュッとしてる」「バタバタしてる」といったように、日本人のコミュニケーションに深く根付いています。
それゆえ、日本語におけるネーミングでは「擬音語」を素材として使うことで、商品やサービスの印象が即座に伝わりやすく、感覚に訴えるブランド作りが可能になります。

3. 擬音語ネーミングの実例
■ ポカリスエット(大塚製薬)
「ポカリ」は、「ポ」と「カ」の柔らかく明るい破裂音が特徴です。
「ポ」は軽さややさしさ、「カ」はクリアな印象を与え、全体として“爽快感”を連想させます。
意味ではなく、音の並びそのものが清涼感や親しみを生んでいる好例です。
「スエット(汗)」という本来食品ネガティブワードも、「ポカリ」と組み合わせることで運動後の回復感に変換。
意味より音が印象をつくる、音象徴の好例です。
■ サクレ(FUTABA)
氷菓子「サクレ」は、“サクッ”とした氷の食感を音で表現したネーミングです。
「サク」は軽快で乾いた印象を与え、夏の爽やかな冷たさを直感的に想起させ、視覚に頼らず「音」から食感と情景を喚起するユニークなブランド設計です。
氷菓という一過性のカテゴリーにおいて、言葉が記憶に定着する稀有な事例です。
■ ポッキー(Glico)
「ポッキー」は、スティック菓子をかじったときの「ポキッ」という音をそのまま名前にした商品。
破裂音の「ポ」と「キ」により、明るく元気で軽快な印象を与えます。
音のリズムが良く、一度聞いたら忘れにくいため、ネーミングとして非常に記憶定着率が高い。
さらに海外展開でも「Pocky」として通用しており、日本語擬音語がグローバルブランドになった稀有な例です。
意味に頼らず“音”そのもので価値を伝えた成功モデルといえるでしょう。
■ カリカリ梅(各社)
「カリカリ梅」は、食べた瞬間の歯ごたえを“音”で端的に伝えるネーミング。
擬音語「カリカリ」は、咀嚼音とともに「心地よい硬さ」や「爽快な酸味」を想像させます。
非常に日常的で飾らない言葉ですが、そのリアルさゆえに消費者の記憶に残りやすいのが特徴。
視覚や説明なしに、聴いただけで味と体験が浮かぶのは擬音ネームの真骨頂です。
世代を問わず親しまれている背景には、この音感のわかりやすさがあります。

4. 擬音語がないのに“音の快感”で成功している例
擬音語を使っていなくても、「音の快感」だけで成功しているブランドも存在します。擬音語と音象徴は切っても切れない関係にあるからです。
■ チュッパチャプス(Chupa Chups)
スペイン語由来のこのネーミングは、“吸う”という意味の「chupa」から来ています。日本語話者からすると“チュッ”という音が連想され、子ども向けの親しみやすさに繋がります。
■ ドコモ(NTT docomo)
「Do Communications over the Mobile network」の略でありながら、「ド」「コ」など安定感や親しみを感じる響きで定着しました。

5. 擬音語を取り入れるポイント
擬音語は便利な反面、下手に使うと子どもっぽくなったり、安易な印象を与えかねません。取り入れる際には以下のような視点が重要です。
ターゲット層に合わせる:子ども向けには明快で強い擬音、30代以上の女性にはやわらかく中性的な音など、響きを使い分ける。
音の分析をする:
 パ行…元気・弾ける印象(例:プッチンプリン)
 サ行…軽さ・キレの良さ(例:サクサクパンダ)
 ラ行…柔らかさ・楽しさ(例:ルンルン)
意味と無関係な印象だけの音も使える:実際の意味よりも「音の雰囲気」で想起させる使い方。

6. 擬音語は、脱AI的ネーミングの武器になる
AIによるネーミング生成が急速に発展していますが、その多くは「意味」や「語源」に基づくものが中心です。論理的には美しいが、記憶に残らない──というケースも増えています。
その点、擬音語は人間の感覚に根ざした“直感型”のネーミング資源。感性や感覚の余白を残すことで、ユーザーに物語を想像させる力が宿ります。
つまり、擬音語は「AIには真似できない、人間らしい名付け」のひとつの形なのです。

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