会社には人がいた。でも、心を許せる人はいなかった

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若い頃、僕は父の会社で働いていました。

社員もいました。毎日、誰かしらと顔を合わせます。

だから、外から見れば別に孤独には見えなかったと思います。

でも、僕にはずっと、

「自分は社長の息子なんだ」

という感覚がありました。

社員から見ても、たぶん普通の同僚ではなかったでしょう。

何か言えば、

「社長の息子が言っている」

になる。

僕が冗談のつもりで言ったことだって、相手には冗談ではなかったかもしれない。

今になって考えると、僕自身もどこかで人との間に線を引いていたんだと思います。

当時の妻も会社の仕事を手伝ってくれていました。

夫婦関係はいろいろあって、ある時期から妻が会社に来なくなりました。

それまで会社にいた人が、突然いなくなったわけです。

でも、僕は何も説明しませんでした。

周りからも、ほとんど何も聞かれませんでした。

その後、離婚することになったときも、会社では離婚について話していません。

僕自身、人に聞いてほしくなかったのか。

それとも、誰かに聞いてほしかったのか。

今となっては、はっきりとはわかりません。

ただ、もし本当に心を許せる人が一人でもいたら、たぶん話していたと思います。

会社には人がいる。

毎日、誰かと話している。

仕事の相談もする。

一緒にご飯を食べることだってある。

それでも、肝心なことは誰にも話せない。

そういう孤独ってあるんですよね。

僕は友達も多いほうではありませんでした。

人付き合いがうまかったとも思いません。

むしろ、人に嫌われるようなところもあったんじゃないかなと思います。

だから、全部「社長の息子だったから」のせいにはできません。

自分から心を開かなかった部分もあった。

人の気持ちがわかっていなかったところもあった。

それでも今振り返ると、

人に囲まれていることと、話せる相手がいることは全然違う。

これは本当にそう思います。

夫婦のこと。

浮気のこと。

離婚のこと。

お金のこと。

人には言えないことほど、本当は誰かに聞いてほしかったりします。

でも、身近な人ほど話しにくいこともある。

会社の人には言えない。

家族にも言えない。

友達に言ったら、どう思われるかわからない。

僕もそうでした。

だから今、誰にも言えないことを抱えている人の気持ちは、少しわかるつもりです。

何か立派な答えを出せるという意味ではありません。

ただ、

「話せる相手がいないって、しんどいよね」

ということだけは、昔の自分を思い出すとよくわかります。

会社には、たくさん人がいました。

でもあの頃の僕には、心を許して話せる人はいませんでした。
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