誰かに話したかった。でも、話せる人がいなかった

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コラム

20代の頃、僕は一度結婚しています。

その結婚は、数年で終わりました。

夫婦関係がうまくいかなくなって、いろいろなことがありました。今振り返れば、僕にも悪いところはたくさんあったと思います。

というより、人の気持ちが全然わかっていなかった。

そんな自分だったから、夫婦関係について誰かに相談することも、ほとんどありませんでした。

当時、妻は僕の会社の仕事を手伝っていました。

ある出来事をきっかけに妻が会社に来なくなった時期があります。それまで毎日のように会社にいた人が、突然来なくなった。

でも、僕は会社の人たちに何も説明しませんでした。

不思議なことに、誰からも何も聞かれませんでした。

「奥さん、どうしたの?」

そんなふうに聞かれた記憶もありません。

その後、離婚することになった時も、会社では離婚の話をほとんどしませんでした。

会社には毎日人がいました。

一人で仕事をしていたわけじゃありません。

それなのに、僕には心を許して話せる人がいなかった。

僕は社長の息子でした。

社員からすれば、やっぱり普通の同僚とは違ったと思います。

僕自身にも「社長の息子」という意識があったし、人付き合いがうまいほうでもありませんでした。友達も少なかった。

今思えば、僕のほうから人との間に壁をつくっていたのかもしれません。

だからといって、誰にも話したくなかったわけじゃないんです。

先日、昔のことを思い出しながら考えていて、ふと気づきました。

相談したくなかったんじゃない。
心を許せる相手がいなかった。

たぶん、誰か一人でも本当に心を許せる人がいて、

「どうした?」

と聞かれたら、話していたと思います。

離婚のこと。

夫婦のこと。

自分がしてしまったこと。

相手にされたと思っていたこと。

恥ずかしくて言えなかったことも、あったと思います。

でも当時の僕には、そういう相手がいませんでした。

だから、全部自分の中に置いたままにしていた。

あれからずいぶん時間が経ちました。

今の僕なら、昔の自分に「誰かに話したほうがいいよ」と言うと思います。

ただ、昔の僕だったら、

「じゃあ、誰に話せばいいんだよ」

と言い返すでしょうね。

家族には言えない。

友人にも言えない。

会社の人にはもっと言えない。

そんな話って、実際にあります。

不倫や浮気、夫婦関係、離婚の話なんて、特にそうです。

正しいことを言われたいわけじゃない。

説教してほしいわけでもない。

ただ、

「そうなんだ」

と、一度そのまま聞いてほしい。

そんな時があるんじゃないかと思います。

僕自身、今でも人生の答えが全部出ているわけではありません。

むしろ、まだ迷っていることばかりです。

だから、人の話を聞いて簡単に、

「それなら離婚したほうがいいですよ」

「不倫なんてやめたほうがいいですよ」

とは、僕には言えません。

人の気持ちは、そんなに簡単には割り切れないから。

もし今、誰にも言えないことを一人で抱えている人がいたら。

うまく説明できなくてもいいと思います。

話がまとまっていなくてもいい。

僕も昔、そんな相手が一人いたらよかったなと思っています。
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