今日は、英語論文でよく見かける述語の使い分けについて考えてみましょう。
同じような意味で使われる述語でも、学術的には別の表現を選んだ方が適切な場合があります。
英語論文では、研究結果そのものだけでなく、その結果をどの程度の確信をもって述べているのかを適切に表現することも重要です。
例えば、日本語では「○○を証明した」と書きたくなる場面でも、英語では必ずしも prove が適切とは限りません。
そのため、英文校正では prove が使われている原稿を、show や suggest など、研究結果の確実性に応じた表現へ修正するケースも少なくありません。
実際には、研究結果の確実性や証拠の強さに応じて、さまざまな述語が使い分けられています。
今回は、英語論文でよく用いられる代表的な述語を、確信度の違いという視点から整理してみます。
最も強い表現「prove」
prove は、「反論の余地なく証明する」という非常に強い意味を持つ動詞です。
数学や論理学では一般的な表現ですが、医学や看護学などの経験科学では、実験結果から絶対的な真理を示すことは難しいため、使用される場面はあまり多くありません。
論文では、「証明した」と言い切るよりも、一段階控えめな表現が選ばれることがほとんどです。
強い根拠を示すときの表現
demonstrate
実験や観察によって、研究結果を具体的なデータで裏付けたことを示す表現です。
prove より断定的ではありませんが、論文では強い確信を示す表現の一つであり、十分な証拠が得られていることを伝えたい場面でよく用いられます。
establish
概念や理論、手法などが十分な検証を経て「確立された」と言える場合に使用されます。
単に結果を示すだけでなく、学術的に定着したことまで含意する点が特徴です。
show
論文で最もよく使われる動詞の一つです。
研究結果を客観的に示す場面で幅広く使用され、特別に強い断定を伴わないため、多くの論文で自然に使われています。
結果を裏付けたり、新たな知見を示したりする表現
confirm
既存の仮説や先行研究の結果を、新しいデータによって裏付けたことを示します。
新しい発見というより、「これまでの知見を確認した」という意味合いで使われます。
reveal
これまで十分に明らかになっていなかった事実や特徴を示す際に用いられます。
新規性を表現したい場合によく見られる動詞です。
indicate
データから一定の傾向は読み取れるものの、直接的な証明には至らない場合に適しています。
結果を慎重に解釈する際によく使われる表現です。
控えめな表現としてよく使われる述語
suggest
「示唆する」という意味で、可能性や方向性を述べるときによく用いられます。
医学・看護学分野の論文では特によく見られる表現で、結論を断定しすぎないためにも重要な役割を果たします。
support
support は、「仮説を支持する」という意味です。
データが仮説と整合していることを示しますが、それだけで仮説を証明したことを意味するわけではありません。
査読でも、この違いは意識されるポイントの一つです。
imply
直接示された結果ではなく、データから論理的に導かれる内容を表す際に使用されます。
解釈を含む表現であるため、使い方には注意が必要です。
推測を表す表現
appear to / seem to
「~のようである」という意味で、観察結果を断定せずに述べたい場合に適しています。
観察結果に基づく解釈や記述を、慎重に表現する際によく使われます。
speculate
十分な証拠がない段階で、考察として可能性を述べる場合に使用されます。
推測であることを明確に示す表現です。
【補足】
conjecture は、証明されていない仮説や推論を表す語です。
数学や哲学では専門用語として用いられることもありますが、一般的な医学論文では使用頻度はそれほど高くありません。
**医学論文で使用される機会は多くありませんが、研究結果の確信度による表現の違いを理解する上では参考になります。
述語は「確信度」を伝えるためのもの
論文で用いられる述語は、単なる言い換えではありません。
どの程度の証拠に基づいて結論を述べているのかを、読者や査読者に伝える役割があります。
例えば、十分な実験結果が得られているのであれば demonstrate や establish、結果を客観的に述べるのであれば show、慎重な解釈にとどめるのであれば indicate や suggest を選ぶなど、研究内容に応じた使い分けが求められます。
おわりに
英語論文では、データの内容だけでなく、そのデータからどこまで言えるのかを適切な言葉で表現することが重要です。
もし投稿前に使用している述語を見直してみると、「prove」と書いていた箇所が「show」や「suggest」の方が適切だった、というケースは少なくありません。
述語の選び方を少し意識するだけでも、論文の印象は大きく変わります。研究結果に見合った表現を選ぶことが、読み手に正確なメッセージを伝える第一歩になるでしょう。
投稿前には、結論部分の述語だけを読み返してみてください。
その一つひとつが、研究結果の確信度に見合った表現になっているかを確認するだけでも、論文の印象は変わります。
いかがでしたか?
並べて見比べてみると、それぞれの違いが分かりやすく、使い分けのイメージもつかみやすくなります。
表現に迷ったときに思い出していただければ嬉しいです。