テレビの情報番組で、東京の老舗百貨店で働くコンシェルジュが紹介されていた。
来店した客から「この商品は何階にありますか」と尋ねられれば、丁寧に案内する。
特に印象に残ったのは、その百貨店で取り扱いがない商品を求める高齢男性客に対して、他の百貨店に電話をして在庫があることを確認し、そちらを案内していたことである。
単に「当店にはありません」で終わらせない。目の前の客が何に困っているのかを考え、その人にとって必要なところまで手を尽くす。その姿勢に、コンシェルジュという仕事の価値を感じた。
高齢の客にとって、商品が簡単に見つからないことは、単なる買い物上の不便ではなく、生活上の困りごとである可能性もある。
そうした事情まで想像しながら接するからこそ、「では、こちらの店にあるか確認してみましょう」という一歩が出てくるのだと思う。
考えてみれば、百貨店という業態そのものが厳しい時代である。郊外型のショッピングモールやインターネット通販が普及し、百貨店が存在しない県もある。
「商品を探す」というだけなら、今ではスマートフォンで検索すれば簡単に見つけられる。どこに売っているのか、在庫があるのか、価格はいくらなのか。こうした情報を調べることは、AIやインターネットのほうが圧倒的に速い。
それでも、何でも揃いそうで店員に相談もできる老舗百貨店には安心感があり、そこで丁寧に客に対応するコンシェルジュの姿には、何ともいえない温かみがあった。
そして、コンシェルジュが店内を巡回して、並んでいる商品やそれを買い求める客の姿を実際に確認していく姿には、仕事への誇りも感じた。
そこで改めて思った。
人から困りごとの相談を受けるということは、単に情報を提供することではないのではないか。
相談する人が何に困っているのか。何を不安に感じているのか。言葉には出していないけれど、本当は何を求めているのか。
そうしたものを相手との会話の中から感じ取り、必要に応じて問いかけ、時には本人が考えていなかった選択肢まで提示する。
これは、単純な情報検索とは違う。
自分が目指しているキャリアコンサルタントや講師の仕事についても、同じことが言えるのではないかと思う。
AIはますます進化していくだろう。事務作業、ライティング、情報収集など、これまで人が担ってきた仕事の多くがAIに置き換わっていくことは間違いない。
しかし、人と向き合うことまで、すべてがAIに置き換わるとは思えない。
もちろんAIも、人の感情を推測したり、相談に応じたりすることができるようになっている。
それでも、目の前にいる一人の人間の表情や声の変化、言葉の間、言いよどみなどを感じ取りながら、「今、この人にはどんな言葉が必要なのか」を考える。
そして、相談が終わった後も、その人がどうしているのかを気にかける。
そうした「人に対する温かみ」は、これからも人間が大切にしていく領域なのではないかと思う。
自分がキャリアコンサルタントや講師として活路を見出すとすれば、そこなのかもしれない。
知識を一方的に教えるだけではない。
正解をすぐに与えるのでもない。
その人の話を聴き、その人が抱えているものを一緒に整理し、必要なときには問いかける。そして、その人自身が次の一歩を考えられるように支える。
百貨店のコンシェルジュが、目の前の客の「困った」に向き合い、自分の店だけで解決できなければ、他の店にまで電話をして解決の道を探す。
その姿を見て、キャリアコンサルタントにも同じような姿勢が必要なのではないかと思った。
「自分の知識を提供する人」ではなく、「目の前の人の困りごとに向き合う人」。
そんなキャリアコンサルタント、そして講師を目指していきたい。
AIが進化する時代だからこそ、人にしかできないことを大切にする。
自分にとってのこれからのキャリアは、そこにあるのかもしれない。