管理職になると、「部下の意見をよく聞きましょう」と言われます。
私もその考えには賛成です。
部下が自由に発言できる職場であること。自分の考えを提案できること。そして、上司の考えに対しても「それは違うのではないでしょうか」と率直に意見を言えること。
こうした環境が、心理的安全性の高い組織には欠かせません。
実際、上司がいつも正しいとは限りません。
一人で判断していると、思い込みや経験則に引っ張られ、誤った方向へ進んでしまうこともあります。そんなとき、部下からの率直な意見がブレーキになり、組織を救うこともあるでしょう。
だからこそ、部下の声に耳を傾ける姿勢は、とても大切だと思っています。
私が失敗したこと
一方で、以前の私は「聞くこと」を重視しすぎていました。
一人ひとりの意見を丁寧に聞き、できるだけ尊重しようとしていたのですが、結果として組織の方向性が定まらないことがありました。
誰の意見も否定しない。
その姿勢自体は悪くありません。
しかし、全体最適の視点で最終判断を下す人がいなければ、組織は前へ進めないのです。
実際、私が受けた360度評価でも、部下からこんな趣旨の意見をもらいました。
「もう少し、ご自身の譲れない軸を持ってほしい。」
その言葉は、今でも強く印象に残っています。
上司には「譲れない一線」が必要
それ以来、私は管理職として、自分なりの「譲れない軸」を意識するようになりました。
例えば、
- 安全を損なう判断はしない
- 危機管理を軽視しない
- 人材育成につながらない判断はしない
- コンプライアンスを犠牲にして成果を求めない
こうした点については、どれだけ議論があっても最後まで譲らないようにしています。
もちろん、それ以外のことについては、できる限り部下の意見を聞き、一緒に考えます。
しかし、最後に方向性を示すのは管理職の役割です。
心理的安全性と優柔不断は違う
心理的安全性という言葉が広まるにつれ、「みんなの意見を尊重すること」が目的になってしまうケースもあります。
しかし、本来の心理的安全性は、誰が正しいかではなく、「安心して議論できる状態」をつくることです。
十分に議論したうえで、最後はリーダーが責任を持って決断する。
この流れがあって初めて、組織は前へ進みます。
意見を聞くことと、判断を委ねることは違います。
管理職に求められるのは判断軸を磨くこと
管理職は、すべてを知っている必要はありません。
部下から学ぶこともあれば、自分の考えを修正することもあります。
だからこそ、部下の声には謙虚に耳を傾けるべきです。
その一方で、安全、コンプライアンス、危機管理、人材育成など、組織として絶対に守るべき価値については、ぶれない判断軸を持つことが重要です。
心理的安全性の高い組織とは、「何でも自由に決められる組織」ではありません。
自由に意見を交わしながらも、最後はリーダーが責任を持って方向性を示す。
そのバランスこそが、強い組織をつくるのだと、私はこれまでのマネジメント経験を通じて感じています。