このサンプル記事について
整理収納サポートを行う個人事業主へのインタビュー記事です。
(開業4年目 30代・女性)
事前アンケートで伺ったテーマは、「片づけが苦手な方にも、気軽に頼んでもらえる仕事だと伝えたい」ということでした。
60分のインタビューでは、ご本人自身の片づけの経験や、仕事と子育てをしていた頃の暮らし、「ちゃんとしなければ」と思っていた時期などをたどりました。
そこから見えてきた「散らからないことではなく、散らかってもまた戻せればいい」という現在の考え方を軸に構成しています。
※人物・事業はサンプル用の設定です。実際のサービスと同じ「事前アンケート→質問設計→60分インタビュー→構成・執筆」の流れで制作しています。
散らかっても、また戻せればいい ——「ちゃんとできる人」を目指した私が見つけた片づけ
■もともと片づけが得意だったわけではありません
整理収納サポート「matoi(まとい)」を運営し、お客様のご自宅に伺って、一緒に片づけをする仕事をしています。
こう言うと、「もともと片づけが得意で、いつもきれいな家で暮らしてきた人」と思われるかもしれません。 でも、全然そんなことはないんです。
子どもの頃は机の上に物がいっぱい。学生時代も、友達が来る前に慌てて片づけるような感じでした。
とくに大変だったのは、子どもが生まれて仕事に復帰した頃です。 朝は子どもを保育園へ送り、そのまま仕事へ。帰れば夕飯、お風呂、寝かしつけで精一杯。 洗濯物はソファに置いたまま、おもちゃはリビングに増えていくばかり。郵便物や保育園のプリントは「あとで見よう」とテーブルの端にどんどん積み重なっていきました。
お休みの日には「今日は絶対片づける!」と気合を入れて始めるのですが、一度きれいにしても、平日が始まればあっという間に元通り。
そのたびに、「やっぱり私は片づけが苦手なんだな」と落ち込んでいました。
いま振り返ると、つらかったのは「散らかった家」そのものより、「ちゃんとできていない自分」を責めてしまうことだったのだと思います。
■家を整えるより、「ちゃんとしている自分」になろうとしていた
当時はSNSで、子育てをしながらもきれいに暮らしている人の家をよく見ていました。 仕事もして、家の中も整っている。 そんな「できるお母さん」になりたかったのだと思います。
収納も、SNSで見たものを真似してみました。でも、しばらくすると続かなくなるんです。
今なら、その理由が分かります。
たとえば、子どもの着替えはリビングでするのに、服は別の部屋に置いてある。玄関から入ってくる郵便物も、わざわざリビングの棚へ戻すようにしている。
見た目は整っていても、私たち家族の暮らし方には合っていなかったんですね。
その後、整理収納を学んで一番大きかったのは、片づけは「性格」ではなく「仕組み」だと知ったことです。
片づけられないのは、自分の性格だけの問題ではないと気づいたことで、ふっと心が軽くなり、自分や家族が楽に暮らすためのものなんだ、と思えるようになったのです。
今でも、我が家は散らかることがあります。
散らかっても、また元の場所に戻せる。
それで暮らしが無理なく回っているなら大丈夫。
今の私にとっては、それも「片づいた家」なのです。
■「吉田さんみたいに、ちゃんとできたら」に感じた違和感
整理収納を学んだあと、最初は友人の家を手伝うところから始まりました。
「どこから手をつけていいか分からへん」という友人と一緒に物を出して、「これってよく使う?」「最近使ってる?」と話しながら整理していったんです。そして最後に、 「一人やったら、絶対ここまでできへんかったわ」 と言ってもらえたのです。
私は片づけ方を教えたというより、ただ横で一緒に考えていただけでした。
それでも、誰かと一緒なら進められることがある。
その経験が、少しずつ今の仕事につながっていきました。
ただ、仕事を始めたばかりの頃は、まだ「きれいに片づけること」が自分の仕事だと思っていたところがあります。
でも、ある出来事をきっかけに、その考えに引っかかりを感じるようになったのです。
子育て中のお客様とキッチンやリビングを片づけていたとき、何気なくこう言われました。
「吉田さんみたいに、ちゃんとできたらいいんですけどね」
もちろん、悪い意味で言われたのではありません。
それでも、その言葉に少し引っかかりました。
「あれ、私ってこのお客様から“ちゃんとできる人”に見えてるんや」 と思いました。
少し前まで、私自身が「ちゃんとできない」と落ち込んでいたのに、いつの間にか自分が反対側に立っているように感じました。
お客様に、私みたいになってもらうことが目的じゃない。
「ちゃんとできるようにならないと」と思わせてしまったら、昔の私と同じように、片づけがまた自分を責める原因になってしまう。
そう強く思うようになりました。
■全部を片づけなくても、朝の探し物がなくなればいい
だから今は、初めてのお客様のお宅でも、すぐに片づけ始めることはありません。
「今、一番困っている場所はどこですか?」
「ここがどうなったら楽になりそうですか?」
まず、その方の普段の暮らしをじっくりお聞きします。
以前、物の量がかなり多く、ご本人も「どこから手をつけたらいいかわからない」と立ち止まってしまっていた方がいました。
そこで、家全体を一気に何とかしようとするのはやめて、一番困っていることを聞いてみたんです。
返ってきたのは、 「毎朝、仕事に行く前に鍵と書類を探すのがしんどい」 という答えでした。
そこで、玄関まわりと、仕事に持っていく物だけを、まずは整理することに。
次に伺ったとき、「朝、探さなくてよくなりました」と教えてくださいました。
全部を一気に変えなくてもいいんです。
どれだけ家がきれいになったかではなく、その人の暮らしがどれだけ楽になったか。
今は、そこを一番大切に見るようにしています。
■その人を変えるより、その人に合う形を一緒に探したい
片づけられないことを、「自分がだらしないから」と責めている方は少なくありません。
初めて伺ったお宅で「散らかっていてすみません」と何度も謝られることもあります。
でも、毎日仕事や子育てに追われていれば、散らかるのは当たり前です。私はそれを見て「だらしない」とは思いません。
むしろ、そこからどうすれば楽になるかを一緒に考えるのが私の仕事です。
以前、お客様に「散らかっても、前ほど自分を責めなくなりました」と言っていただいた言葉がずっと心に残っています。
matoiは、片づけられない人を「できる人」にする仕事でも、「正解」を持っていく仕事でもありません。
今の暮らしに合っていない仕組みを、その方と一緒に見直していきます。「今日はここだけ」というゆるやかな進め方でもいいんです。
きれいな家をつくるより、暮らす人がしんどくないこと。
誰か一人だけが頑張らなくても、散らかったらまた戻せること。
「こんなことで頼んでいいのかな」と思うときにこそ、頼ってください。
きれいにする必要も、困りごとを整理しておく必要もありません。
今の暮らしをそのまま見せてもらい、今より少し楽に暮らせる形を一緒に探していきたいと思っています。
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