美味しい料理が運ばれてきたとき、箸をつける前にまずスマホを取り出す——。 もはや現代の食事風景として当たり前になったこの光景ですが、実は「ついつい写真を撮りたくなる」その気持ちさえも、店舗デザインによって仕組まれていることをご存知でしょうか?
今回は、飲食店のデザインにおける「SNS映え」の秘密についてお話しします。
「テーブルの上のスポットライト」の正体
最近のおしゃれなカフェやバルに行くと、店内全体は少し薄暗いのに、テーブルの上だけやけに明るいという照明配置によく出会いませんか?
「手元が見やすくていいな」くらいに思うかもしれませんが、あれはデザイナーによる高度な計算の結果です。
テーブルの真上から強い光(スポットライト)を当てることで、以下のような効果が生まれます。
・料理に陰影がつき、立体的に見える
・食材のテリやツヤ(シズル感)が強調される
・背景(床や他の客席)が暗くなり、写真の構図が整理される
つまり、特別なカメラアプリを使わなくても、スマホで普通に撮るだけで「奇跡の1枚」が撮れるようなスタジオセットが、各テーブルに組まれているのと同じことなのです。
「拡散」までがデザインの仕事
かつて飲食店のデザインといえば、「居心地の良さ」や「動線の効率」が最優先でした。しかし、SNS全盛の現代においては、「お客様がカメラを構えたくなる瞬間を作ること」も重要な要件になっています。
お客様が撮った美味しそうな写真がInstagramやX(旧Twitter)で拡散されることは、お店にとって何よりの広告になります。 デザイナーは照明の位置、色温度、そして光が当たった時に美しく見えるテーブルの天板の素材まで計算して、「さあ、撮ってください!」という舞台を用意しているのです。
次に外食をする際は、料理だけでなく、天井の照明や光の当たり方にも注目してみてください。
「この光、私のスマホのために用意されているのかも…」
そう気づくと、お店側の戦略が見えてきて、外食が少し面白くなるかもしれません。美味しい料理は、美味しい空間デザインから。それが現代の飲食店の「あるある」なのです。