青の教室 陽子 第21話/4月8日 ――光の道――

青の教室 陽子 第21話/4月8日 ――光の道――

記事
学び
第21話/4月8日
――光の道――

午後の青の教室は、
 春の光がやわらかく差し込んでいた。

陽子が席につくと、
 友彦が一枚の紙をそっと差し出した。

「陽子、今日は“お話くん”してみる?」

陽子はうなずき、
 紙を両手で受け取った。

そこには、短い詩が書かれていた。

**********
 風がひらく
 小さな道があった。

 だれのものでもなく、
 ただ、ひらかれている道。

 光は、
 その道の上で
 そっと踊っていた。

 歩く人の歩幅に合わせて、
 自由に形を変えながら。

 その光は言った。
 「好きなように歩いていいよ」
**********

読み終えると、
 胸の奥が
 ふわりとひらくような感じがした。

紙の下には、
 小さな問いが書かれていた。

**********
 あなたの歩く道には、
 どんな光が見える?
**********

陽子は、
 その問いをしばらく見つめていた。

(わたしの道……
 光……)

言葉にならない何かが、
 胸の奥でそっと揺れている。


***

そのとき、
 教室の奥から声が聞こえた。

「ひかりちゃん、これ見て!」

陽斗が、
 折り紙で作った小さな星を
 ひかりに見せていた。

ひかりはぱっと笑う。

「きれい……!」

二人は、
 光の中で遊ぶみたいに
 星をひらひらと動かしている。

陽子は、
 その姿を横目で見た。

胸の奥が、
 少しだけあたたかくなる。

(あの子たちの道には、
 光がいっぱいあるんだ)

(じゃあ、わたしの道には……?)

陽子は、
 しばらく自分の手を見ていたが
 やがて、そっとノートを開いた。

白いページが、
 静かに待っていた。

陽子は、
 ゆっくりとペンを置く。

そして、
 小さく書き始めた。

**********
 わたしの道は
 ところどころ
 しずんでいるところがある
 でも
 そのしずみのそばに
 ふっと明るくなる場所があって
 ユイは
 その明るさを
 見つけてくれそうな気がする
**********

書き終えた瞬間、
 陽子の肩がすっと下がった。

胸の奥にあった重さが、
 ほんの少しだけほどけたようだった。

陽子は、
 書いた言葉を見つめながら、
 ゆっくりと息を吸った。

その表情は、
 不安と、
 小さな希望が
 同じ場所にそっと並んでいるようだった。


***

友彦は、
 陽子のノートをのぞき込まない。

ただ、
 陽子の指先が
 ページをそっと押さえていることに気づいた。

その押さえ方は、
 “自分の言葉”を
 確かめるような押さえ方だった。

(陽子は、
 自分の道を
 自分の言葉で描き始めている)

友彦は、
 そのことを言葉にしない。

言葉にした瞬間、
 その芽はつぶれてしまう。

だから、
 ただ静かに、
 陽子の横顔を見守っていた。


***

帰り道、
 陽子はスケッチブックを抱えながら歩いた。

“ユイは、どんな光を見るんだろう。”

その問いが、
 胸の奥で静かに揺れている。

青の優しさが、
 揺れていいよと言うように
 陽子をそっと包んでいた。

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