家族なのに、わかり合えない。親との距離感を見つめ直すとき

家族なのに、わかり合えない。親との距離感を見つめ直すとき

記事
コラム
親の何気ない言葉が、ずっと心に残っている。
大人になった今も、わかってもらえないと感じる。

「家族なのに、どうしてわかり合えないんだろう」

そんな思いを抱えたことはありませんか。
近い存在だからこそ、言えないことや、
期待してしまうこともあるのかもしれません。

私自身も、両親との関係に悩んできました。
長い間、自分の気持ちを話せなかった時期があります。
今日は、その経験をお話ししたいと思います。

【家族だからこそ、生まれる期待】


「親なら、わかってくれるはず」
「子どもなら、わかってくれるはず」

家族の間には、そんな期待が生まれることがあります。
けれど、親と子では生きてきた時代も、
経験してきたことも違うものです。

お互いを大切に思う気持ちがあったとしても、
考え方まで同じとは限りません。

心理学でも、親子の間には感謝と不満のような
相反する気持ちが同時にあると捉えています。

家族を大切に思っているからこそ、
「わかってもらえない」という思いが、
余計につらく感じられるのかもしれません。

【両親に心を閉ざしていた頃】


四十代の頃、私は両親と当時の妻と一緒に、
実家で四人暮らしをしていました。

一緒に暮らし始めた頃は、よかったのですが、
育ってきた環境も、当たり前だと思うことも違う。
妻と母の間には、少しずつすれ違いが生まれました。

私は、何とか二人に仲良くしてほしくて、
お互いの気持ちを代わりに伝えたり、
プレゼントを贈るきっかけを作ったりしました。

でも、関係はよくなりませんでした。
二人とも、私が仲を取り持とうとしていることに
気づいていたのだと思います。

私は良かれと思って動いていたのに、
次第に二人からの信頼も薄れていきました。
ただ、二人に仲良くしてほしかった。
それだけに、悲しかったですね。

その後、私は当時の妻と離婚しました。
当時は事業もうまくいっておらず、
家族の問題以外にも、いくつもの事情が重なっていました。

離婚後、両親はしばらく私を気遣い、
そっとしておいてくれました。
けれど、やがて私は両親に自分の気持ちを話さなくなり、
その状態が三年ほど続きました。

【両親への手紙を書き終えたとき】


あるとき、私は両親に手紙を書きました。
子どもの頃のことを一つひとつ思い出し、
積もっていた不満を言葉にしたのです。

「あのとき、こんなことがあった」
「だから、自分の人生はうまくいかなかったんだ」

そんな恨みの気持ちも、正直に書きました。

ところが、その手紙を書き終えたとき、
ふと、違う思いが浮かんできたんです。

「でも、僕自身も難しい人間だったよな」

そんな私を、両親は育ててくれたんですよね。
寝る間を惜しんで働き、大学にも行かせ、
留学までさせてくれたことを思い出しました。

「育てるのは、大変だっただろうな」

あの頃、口うるさく感じていた両親の言葉も、
私のことを心配し、期待していたからなのかもしれない。
そのとき初めて、そんなふうに考えました。

もちろん、当時の両親の本当の気持ちは、
今となっても、すべてわかるわけではありません。
それでも、私の中で何かが変わったのです。

私は、その手紙を渡さずに捨てました。

【違う立場から見てくれた人】


離婚から三年ほど経った頃、今の妻と出会いました。
当時はまだ交際していた彼女と、
お互いの生い立ちや家族のことをよく話しました。

彼女は私の話に寄り添いながら、
「ご両親は、こんな気持ちだったんじゃないかな」
と、別の見方も伝えてくれました。

自分一人では気づけなかったことにも、
少しずつ目を向けられるようになりました。

それから私は、以前よりも両親の話に耳を傾け、
会話も増え、関係は少しずつ修復していきました。

これまでの恩返しには及ばなくても、
少しでも両親に寄り添い、親孝行したい。
そんな気持ちを、今も持ち続けています。

【家族との関係を見つめ直す、小さな一歩】


もし今、家族との関係に悩んでいるなら、
少しだけ考えてみてほしいことがあります。

自分は、相手に何をわかってほしかったのか。
相手の言葉には、どんな背景があったのだろうか。
そして、自分はこれから、どう関わりたいのか。

すぐに答えが出なくても大丈夫です。
私のように、気持ちを書き出してみたり、
信頼できる人に話してみたりするのも一つの方法です。

ただし、相手の事情を考えることと、
自分が傷ついた気持ちをなかったことにするのは、
決して同じではないと思います。

無理にわかり合おうとしなくてもいい。
今は距離を置く方がよい関係もあるでしょう。
自分にとって無理のない関わり方を考えていいのです。

【最後に】


私は、両親への手紙を書いたことや、
今の妻と何度も話を重ねたことを通じて、
親を見る目が少しずつ変わっていきました。

でも、私と同じように考えたからといって、
誰もが家族と仲直りできるわけではありません。
それぞれの家族に、それぞれの事情があります。

大切なのは、相手の気持ちを決めつけず、
自分の気持ちも置き去りにしないこと。

誰かに話すことで、今までとは違う見方が
見えてくることもあるかもしれません。
焦らず、あなたのペースで考えていきましょう。

話すことで、心に少しずつ春を。

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